VRヘッドセットとハンドトラッキングコントローラーを使えば、ユーザの頭と手の動きをトラッキングできる。一方で、ユーザの下半身をトラッキングするのは難しい。
ヘッドセットとコントローラーだけでは、ユーザが立っているのか、椅子に座っているのか、それとも床に座っているのかすら判断できない。どのように立っているのか、足を組んで座っているのかなんてとても分からない。
そのため、現在のVRタイトルではアバターの下半身を表示しないものもある。実情として、頭と手だけが表示されていればVRでのコミュニケーションには支障がない。しかし、もしも全身を使えれば表現の幅はさらに広がるだろう。
そうは言っても、全身のトラッキングを行うには複雑で高価なスーツが必要になるのが難点である。だが、Vive Trackerが一般ユーザにも普及すれば家庭用VRシステムでも全身のトラッキングが可能になりそうだ。
Vive Trackerによる全身のトラッキング
Vive Tracker
先日日本でも販売が開始されたHTCのVive Tracker。一般に販売が開始される前から、その自由度の高さに注目が集まっていたアイテムだ。これ自体はトラッキング可能なセンサーでしかないが、取り付けたものをVRのコントローラーとして使うことができる。
世界中のデベロッパーがVive Trackerを使ってときに実用的な、ときに怪しいトラッキング対応アイテムを作っている。Daydream Viewをルームスケールに対応させたり、猫にVive Trackerを装備したり(VR空間でも猫が見えるので、VR体験中に猫を蹴ってしまう事故が避けられるそうだ)と自由な発想が活かされている。
そんなVive Trackerを使って全身のトラッキングを可能にするHTCの計画については先日も伝えたとおりだが、ついにそのソースコードとサンプルが公開された。現在GitHubからダウンロードが可能となっている。
Vive IK Demo
このデモでは、全身のトラッキングに三つのVive Trackerを使用する。腰に一つ、両足に各一つのVive Trackerを装着することで、Vive本体とコントローラーによる上半身のトラッキングと合わせて全身をVR空間に再現する。
膝にはTrackerを付けていないため、この方法で完全にトラッキングできるのは腰と足の位置だけだ。デモでは、腰と足の位置、そして上半身の状態から膝の位置や向きを推測している。全身に多数のセンサーが付いたスーツのような精度は無いが、一般的な動きであれば十分トラッキングできるはずだ。
Vive Tracker本体は小さくて軽く、有線接続も不要だ。そのため、身体に固定するのは難しくないし、ユーザの動きを制限することもない。だが、人間の身体にTrackerを取り付けるとどうしてもフィットしない。隙間があって本体が傾くと入力がおかしくなってしまうため、身体にTrackerを付けるときには硬いもの(上の画像では厚紙)を使うことが推奨されている。
厚紙を使うのは見た目にも不格好だし、面倒だ。Vive Trackerを身体に付けるタイプのVRタイトルが販売されるようになれば、Tracker用のアクセサリーが登場するだろう。よりしっかりとTrackerを固定することで、入力の精度も高まるはずだ。
Vive Trackerの将来
Vive Trackerは、まだまだ登場したばかりだ。ボディトラッキングの他にも、まだ発見されていない利用法が見つかるだろう。
しかし、ボディトラッキングに使うアイテムとしてのVive Trackerには問題もある。確かに本格的なモーションキャプチャーシステムに比べれば手軽で安価なのだが、このVive IK Demoでは三つのVive Trackerを使用している。
一つあたり12,500円なので、合計37,500円だ。ゼロから全身のトラッキングを行うには、Vive本体と対応PCも用意しなければならない。現時点では、Vive Trackerによる全身のトラッキングを一般のユーザに普及させるのは難しそうだ。
今後、Vive Tracker本体の価格が引き下げられれば可能性はある。技術的には素晴らしいし、デベロッパーの発想力が試される逸品でもあるVive Tracker。デベロッパーや一部の最新技術愛好家だけでなく、普通にVRを使うユーザにとっても手に取りやすい商品になってほしいものだ。
参照元サイト名:GitHub
URL:https://github.com/JamesBear/vive_ik_demo
参照元サイト名:Road to VR
URL:http://www.roadtovr.com/htc-releases-full-body-tracking-code-use-vive-trackers/
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