海外メディアUploadVRは、2017年3月20日の記事において、Facebookが掲載した求人について報じた。
同メディアによると、Facebookは同社傘下のOculusの求人ページに、VR・ARの研究に従事する人材を求める求人を掲載した。
Facebookが求めている人材は「精神物理学」のエキスパート
同社が掲載した求人によると、まず求めている人材像は「最新テクノロジーであるVRとARに関して、視覚科学、ディスプレイ、知覚心理学での未解決の問題に取り組めるような科学的探究心がある人物」とされている。
さらに、業務内容としては以下のような事項が挙げられている。
- ・知覚と人間心理について研究し、その成果を科学的にほかの科学者とプロダクト部門に伝えること
- ・社内および社外の心理学研究者とコラボレーションし、その成果における詳細と限界を明確にできること。さらには、VRとARのシステムとディスプレイに関して革命的な進歩を探求すること
- ・新しいVR体験を創造するための条件と機会を探求し、その体験を伝達するために必要なことを研究すること
- ・新しい科学的問題を解決するための実験的なシステムを定義・開発するために社内の科学者と技術者とコラボレーションすること。新しい問題には、生態学に関わることもあれば、そうでないこともある。
以上の業務内容には、「知覚」「心理」「生態学」といった工学的ではないキーワードが並んでいる。
さらに「不可欠な経歴」として「視覚科学、生物工学(bioengineering)、そしてこのふたつの分野に関係した分野における博士号取得者あるいはポスドク」とあり、「望ましい経歴」には「3年以上の精神物理学におけるユーザー研究」とある。
望ましい経歴で挙げられている精神物理学とは、物理的な刺激と人間心理の相互関係を研究する分野で、この分野の代表的な成果として物理的刺激と感覚は比例関係にあるとする「フェヒナーの法則」がある。
触覚コントローラーの研究を加速か?
UploadVRの記事では、以上のような求人からFacebookは触覚コントローラーの研究を加速させようとしているのではないか、と推測している。
同社がハンド・コントローラーの研究を進めていることは、すでに本メディアの過去の記事で報じている(トップ画像も参照)。
過去の記事で報じた段階では、同社が研究しているハンド・コントローラーは手の動きをVR空間に反映させるハンドジェスチャー・トラッキング・コントローラーのようであった。
しかし、今回の求人は「光学」「センサー技術」といったトラッキングに不可欠な知識ではなく、「知覚」「心理」「精神物理学」といった単語が並んでいることから、触覚をバーチャルに再現することに本格的に取り組むのでないか、と思われるのである。
触覚をバーチャルに再現するためには、視覚や聴覚とは異なり、ヒトの身体に直接的に何らかの物理的刺激を与えることが不可欠である。その物理的刺激が、バーチャルな「固さ」や「温度」となって、本来の刺激とは異なるVR空間内で体験する「触覚」となるシステムを構築するには、精神物理学の知識が求められるはずである。
以上の見解は推測の域を出ない。しかし、仮にFacebook(Oculus)が触覚コントローラーを実用化したら、現時点ではとくにアクセアリーにおいて差をつけられているVIVEに対して、逆に圧倒的な差をつけることができるだろう。
間違いなく言えることは、FacebookはVR・ARに関して長期的に取り組んでいることである。むしろ、VR・ARについての同社のチャレンジは始まったばかりなのかも知れない。
Facebookが掲載したVR・ARに関わる求人について報じたUploadVRの記事
https://uploadvr.com/facebook-psychophysics/
上記記事のソースとなったOculusの求人ページ
https://www3.oculus.com/en-us/careers/a0I1200000JXudwEAD/
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