2017年に入ってさらに注目を集め、急速に認知度がアップしているVR。
現在まさしくVR市場が形成されていく最中なので、新しいVRコンテンツをリリースすれば、他のコンテンツ市場と比べてヒットさせやすい状況にある。
ただ、ビジネスを前提にVRコンテンツを開発するのであれば、最終的にはマネタイズできるかどうかがポイント。
開発中のVRコンテンツをPlayStation VRやSteamで配信するという場合、「有料コンテンツとして配信する」という手段が有力だ。
しかし、スマホアプリ市場でVRコンテンツを配信する場合、基本利用は無料という考えが広がっていることから、有料コンテンツでの配信がベストとは言い難い。
そこでこの記事では、スマホアプリ市場でVRコンテンツを配信する場合に、どのようなマネタイズ手段があるのかまとめてみた。

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原理原則としてマネタイズの手法は手数料・広告・物販しかない
細かい差異に着目するとスマホアプリにも多種多様なマネタイズ手段が存在しているが、本質的には3つのマネタイズ手段しかない。
ひとつは手数料によるマネタイズ。利用回数ごとの手数料や期間ごとの利用手数料をはじめとして、手数料にデジタルとしての外見を与えたデジタルアイテム販売もここに含めることにする。
ふたつめは広告掲載によるマネタイズ。アプリに広告を掲載しておき、エンドユーザーが広告を閲覧したり、タップしたり、さらに広告を経由してアプリをインストールしたりといったタイミングで収益が発生する…というモデルだ。
みっつめは物販によるマネタイズ。Amazonをはじめとするネットショップのように、何かモノを販売して収益を得るというものだ。
本質的にこの3つのマネタイズ手段しかない以上、VRコンテンツでマネタイズをするという場合も必ずこの3つのいずれかに属することになる。
なので以降は、この3つのジャンルごとにマネタイズ方法を見ていくことにしよう。
VRのUIと非VRのUIを分けて実装するのがベストプラクティスか?手数料によるマネタイズ
お金を払ってからアプリをインストールするという「売り切り型」よりも、アプリのインストールは無料で、その後「アプリ内課金」によってなんらかの手数料を得る…というモデルがスマホアプリでは一般的。
このため、スマホ向けVRコンテンツにおいても「アプリ内課金」によって何らかの手数料を得るというマネタイズ手段を取っているアプリは多い。
ただしこの時ネックとなるのが、ユーザーインターフェース(UI)だ。
PlayStation VRやHTC VIVE、OculusRiftといったハイエンドVRでれば、コントローラーを使ってVR内で決済処理を行うことが可能。
しかし、スマホ向けVRコンテンツの場合、みるボックスタッチのように特殊なVRゴーグルを使わない限り、ユーザーは画面に触れることができない。
ほとんどの操作を視線で行わなければならないため、メニューから商品を選んで購入して…というような実用的な処理をストレスなく行うのは難しい。
この点を各アプリはどう解決しているのだろうか?
DMM VR動画

出典元:Dmm.com
「DMM VR動画」は、アプリの中でDMMが提供するVR動画が再生できるというVRアプリ。
VR動画が有料で提供されており、このVR動画=デジタルコンテンツの購入がマネタイズの手段だ。
ただしVR動画の購入を行うのは、アプリ内ではなくDMMのWEBサイト上。
アプリは購入済みのVR動画をリストから選び、再生するという機能のみが提供されている。
VRゴーグルを使うのはVR動画の閲覧時のみ。リストからVR動画選ぶまでの工程はVRビューワーなし…という切り分けを行うことで、快適な購入体験と快適なVR体験の両方を実現している
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オルタナティブガールズ
「オルタナティブガールズ」は美少女育成モノのスマホRPG。
美少女を集めてパーティーを編成し敵と戦っていくという内容で、マネタイズの手段は、ゲーム内で使える有料アイテム「クオーツ」の販売。この点は「パズル&ドラゴンズ」以降の一般的なスマホRPGと同様の形式と言える。
本作も「DMM VR動画」に同様に、VRゴーグルが必要な場面と不要な場面が切り離されており、VRゴーグルが必要となるのはストーリーモードのみ。
有料アイテムの購入を含むその他のパートはVRゴーグルなしで行うという作りによって、快適な購入体験と快適なVR体験を実現している。
タップできないことを解決するのは視聴課金型の動画広告?広告によるマネタイズ
スマホ向けのVRコンテンツで広告掲載をマネタイズ手段として選ぶ場合、アプリ内課金以上に「画面をタップできない」ということがネックとなる。
スマホ向け広告をはじめとするインターネット広告で前提となっているのは、広告がタップ(クリック)できること。
広告を閲覧して広告で扱っている商材に興味を持った閲覧者が、商材のサイトを訪れ、最終的には購入してくれる…この流れをワンストップでできるという点こそが、インターネット広告がこれまで強みとしてきた要素だからだ。
この点を乗り越える最もストレートな方法は、「ユーザーが広告を閲覧したこと」をもって収益が発生するタイプの広告を掲載すること。
では具体的にどうやってそれを実現しているか、その方法を見てみよう。
【VR版】改・恐怖!廃病院からの脱出:無影灯

画像は筆者によるスクリーンショット
「【VR版】改・恐怖!廃病院からの脱出:無影灯」は、先行して配信されていた脱出ゲーム「恐怖!廃病院からの脱出:無影灯」をVR対応させたゲームアプリ。
ベースとなった「恐怖!廃病院からの脱出:無影灯」は広告をマネタイズ手段としており、ゲームプレイ中画面下(フッター部)にバナー広告が表示される。
また、ゲーム中ヒントを得るため必要となるアイテム「勾玉」を動画広告閲覧によって入手できるという仕組みが用意されていた。
VR版の本作も広告をマネタイズ手段としているが、ゲーム中の広告表示はざっくりカット。
ではどこで広告が表示されるのかというと、タイトル画面。「勾玉」を入手するための動画広告閲覧も、タイトル画面からのみ行える。
また、本作は課金によって「勾玉」を購入することができるが、ゲーム進行中に「勾玉」を購入しようとした場合、VRゴーグルを外すよう促される。
つまり、マネタイズ手段は違えど、「DMM VR動画」や「オルタナティブガールズ」と同様、VR体験と広告閲覧とを完全に切り分けた格好だ。
動画広告は動画アドネットワークに登録すれば掲載可能

出典元:AppVador
「【VR版】改・恐怖!廃病院からの脱出:無影灯」が掲載しているような動画広告は、動画広告配信を行っているアドネットワークに登録することで掲載可能となる。
主なアドネットワークとしては「AppVador」や「AdColony」などがあり、いずれもユーザーが動画広告を閲覧終了することで、広告収益を得ることができる。
ユーザーが「閲覧するだけ」で収益が発生するため、タップできないという不利を抱えるスマホ向けVRコンテンツとの相性は悪くない。
但し、VRコンテンツでは右目用と左目用の映像をそれぞれに再生する必要がある。
一方、VRコンテンツへの対応を前提としていない既存の動画広告は、右目用の動画と左目用の動画を再生するという仕様にはなっていない。
恐らくこのために「【VR版】改・恐怖!廃病院からの脱出:無影灯」はゲーム中ではなく、タイトル画面に動画広告を組み込んだのだろう。
VR用アドネットワークも出現しつつある

出典元:SpeAD(スペアド)
スマホ向けVRコンテンツのマネタイズ手段として有力な手段の一つと言えるものの、まだ完全な形ではVRに対応していない動画広告。
だが、「SpeAD(スペアド)」や「VRize Ad」など、VRでの掲載を前提としたアドネットワークも出現しつつある。
ただし現時点ではいずれもβ版出の提供となっており、ビジネスに本格的に導入できるのはまだこれからとなりそうだ。
EC自体がこれから立ち上がるため未知数な物販によるマネタイズ

出典元:eBay
最後にスマホ向けのVRコンテンツで広告掲載をマネタイズ手段として選ぶ場合だが、まだこれからECがVRを取り入れていくという状況なため、具体的な事例を見つけることができなかった。
ただ物販の場合、AmazonやeBay等のように、既に物販というビジネスモデルを確立させた業者が、プロモーションのためにVRを活用するというケースが主流となるだろう。つまり、物販が「主」でVRは「従」。
ゲームや動画などのコンテンツを主体としながら、そのマネタイズ手段として物販機能を用いるという、コンテンツが「主」で物販が「従」というモデルは一般的なスマホアプリを見てもほとんど見られないため、VRコンテンツにおいても、なかなか難しいのではないかというのが筆者の見解だ。
VR体験とそれ以外の体験を分けることが現時点での安全策
ここまでの内容を見てくると、現時点でスマホ向けVRコンテンツでマネタイズを行うためには、VRで提供するべき体験と、課金や広告閲覧を含むそれ以外の体験とを完全に分けた方がよい、というのが結論になる。
そうなると、「大量の予算をかけてVRコンテンツを開発する!」というビジネスでない限り、「【VR版】改・恐怖!廃病院からの脱出:無影灯」のように動画広告とアイテム課金とを組み合わせたモデルが最も参考になりそうだ。
今後本格的に提供が開始されるVR用アドネットワークもベースは動画広告なので、現時点で動画広告を採用しておけば、いずれVR用アドネットワークへと乗り換える際にも、手間が少ないのではないだろうか。

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