2017年1月27日VRInside 主催イベントである『VRI Meetup Tokyo ♯1』が開催されました。
そんなVRI Meetup Tokyo ♯1で行われたパネルディスカッションの模様をレポートいたします。
登壇者紹介
今回の登壇メンバーは以下6名とモデレーターにVRInside編集長の村山 章を加えて、2016年のVRそして2017年のVRについてディスカッションを行いました。
1.コンテンツ分野
株式会社桜花一門 代表取締役/NPO法人オキュフェス 代表理事 高橋 建滋
会社の事業説明:VR開発専門会社として、現在PSVR、Oculusにてオリジナルゲームタイトルを製作中
2.投資家分野
株式会社ティルス 代表取締役社長 大冨智弘
1983年兵庫県生まれ、早稲田大卒。2012年に株式会社インブルー(モバイルゲーム開発運営)をネクソンにM&A。以降、株式会社ティルスの代表をしながらエンジェル投資を多数。主な投資先にcandee(モバイル動画)、Breadwallet(米Bitcoinwallet)、InnerChe(印オンデマンドフードデリバリー)など。
3.デバイス・メーカー分野
サムスン電子ジャパン株式会社 Marketing Group Manager 後藤 友宣
VR(バーチャルリアリティ)分野には、 米OculusVR社と共同開発した「Gear VR Innovator Edition」を2015年5月に日本でリリースし、市場開拓に先駆けて取り組み、2015年12月には一般コンシューマ向けの「Galaxy Gear VR」発売され、コードレス・ポータブルのため気軽に高精細な360°コンテンツが楽しめるのが特徴となる。
4.体験施設分野
VR SPACE株式会社 Co-Founder &Executive Producer 二宮明仁
1982年大阪府生まれ、関西学院大学卒。
グリー株式会社で様々なヒットゲームをプロデュース。
グリー退社後、2016年の11月に渋谷発のVR体験ショールーム、VR SPACE SHIBUYAをオープン。
数々のメディアに掲載され話題となる。VR体験施設の運営に加え、VRコンテンツ・VRイベントのディレクションなどの事業も行う。
5.マーケティング分野
株式会社ダズル 代表取締役CEO 山田泰央
10代の頃からフリーランスプログラマーとして活動、2011年にダズルを設立。
2016年にVRを事業化し、5月には1.5億円の資金調達を行う。現在、VRプロダクト分析・解析サービス”AccessiVR(アクセシブル)”を開発中。
6.デバック・品質管理分野
株式会社SHIFT ソフトウェアテスト事業本部 エンターテインメントビジネスユニット長 島川 知
ソフトウェアテスト専門企業として、幅広い分野のお客様に対する品質保証サービスを主力事業とする。2016年からは、VRゲームの酔いの検証や評価、プロモーション用コンテンツ、アミューズメント施設のVRプロダクトまで様々なコンテンツの検証業務にいち早く着手。
モデレータ:VRInside編集長 村山 章(プロフィール)
パネルディスカッション
今回のパネルディスカッションは、本当に2016年はVR元年だったのか??
そして、2017年のVR市場はどう変化し、プレイヤーたちは何を仕掛けていくべきなのか?
というテーマで行われました。
それぞれの感覚で2016年はどうだったか
まずはVR元年と言われた2016年について、それぞれの所感を聞いていきます。
後藤氏:サムスンではGalaxy Gear VRやGalaxy S7 edgeを使った体感VRコンテンツを楽しむ事ができる、「Galaxy Studio」などで、ユーザーにエンターテイメントとしてVRコンテンツを体験させる事に注力し、多くのユーザーにVR体験を提供した年でした。
高橋氏:VRが儲かると予想され色々なところから増えてきたVR関係者の振るい落としがされ、この一年で、正しく技術力や体力がある人たちだけが残ったという印象を受けました。
大冨氏:投資という視点では、VRデバイスの普及がまだまだ足りないが、VR市場への投資の勢いは感じました。
二宮氏:VR SPACE SHIBUYAの利用状況は、20代〜30代のIT系が多いものの、TVやメディアに露出が多かった影響で、徐々にターゲーットが広がっている感覚はあります。
山田氏:自社のコンテンツが2016年にSteamのランキングで7位まで入ったが、売上としてはまだまだといったところ。やはり全世界で売れるコンテンツを出すことが今後の課題。
島川氏:2016年のVRの検証相談は増えたのか?というところでは、外部に検証を委託することはまだ少ない印象ではあるものの、確実に市場規模の拡大は感じています。
全体的に2016年がVR元年であるという認識はあるようですが、皆さんまだほんの1歩目を踏み出しただけという感覚でお話をしている様子でした。
VRの2017年を考える






これから増えていくであろうVR体験施設について他との差別化は?
二宮氏:現状で週末は予約でいっぱいになるが、平日の集客はまだまだといった所。アンケートベースで実際にVRを体験した方からの満足度はとても高い評価が出ているので、店舗数を今後増やしていく予定です。
高橋氏:VRを初体験した時に大事なのは、一瞬の驚きではなく本当の意味で心を動かす、感動させるコンテンツが大事です。感動体験は強く残り、その感動をまた体験したいという気持ちがリピーターを生むと思います。
価値あるVR体験とは何か?
高橋氏:これからの課題は、VRでしか見れない物語や表現技法や方法をいかに作るかというところにあります。
例えば叶姉妹のお二人にお会いした時に、HISのハワイのVR体験を紹介しましたが、叶姉妹にとってハワイ旅行は国内旅行程度の感覚だったので、感動体験というほどまでには至らなかったです。
お金を持っている人にとってVRで体験したいコンテンツは変わるので、ユーザーごとにコンテンツの価値基準は変わってきますが、命の危険を孕むコンテンツなどお金で変えられない体験に関しては、総じて評判が良いそうです。
2017年VR投資は加速する?
大冨氏:PSVRの再販時にとある家電量販店では140人の行列ができていたが、実際販売できる在庫は20台だった。
やはりデバイスの普及率が低いのが投資分野では問題で、誰もが体験したいと思った時に、すぐに体験できる状況になるまで待ちの状態です。
後藤氏:サムスンではGearVRをGalaxy S7 edge購入者にプレゼンとする企画を行ったが、そのおかげでOculusアカウントの登録者が増えるなど、具体的な効果はありました。
村山:VR業界の発展の為にも、もっとどんどんやって頂きたい。
ユーザー目線での品質管理とは?
島川氏:VRを初めて体験した時に、VR酔いなどを経験してしまうとその後VRに対して興味がなくなってしまうので、そういった意味の品質管理がかなり重要です。
VRは慣れてくるとだんだん酔わなくなってきますし、酔いには個人差があるので、そういった部分を含めて今後はサンプルを沢山とってノウハウを蓄積していくことになると思います。
二宮氏:VR SPACE SHIBUYAでも酔うコンテンツは入れていません。ストーリーを考えたお任せプランも用意しているので、VR初体験の方にも安心してプレイしてもらえます。
高橋氏:中川千鶴さんという方の論文に、てんかんの発生は心拍数や脳への血流の流れを元に読み取ることができるといったものがあり、VR酔いのメカニズムも同じようなことで読み取れるのではないかと考えています。
心拍や脳への血流データの採取が整えば、今後そういった部分でVR酔いを改善する方法ができるかもしれませんね。
事業計画はいつ頃黒字化する?
村山:山田さんズバリ事業計画はいつ黒字化しますか?
山田氏:単月黒字化は2018年中旬、累積黒字は2019年の予定です。
最近では全体的にBtoBの波を感じまるので、黒字に向けては受託とコンサルが非常に大事になります。
二宮氏:VR SPACE SHIBUYAにもビジネスで来る方もいらっしゃいますが、実際にその場で体験した後は感情の結びつきが強いので、とても伝わりやすいです。
2017年の総括
ハードウェアとしてはひと段落した感があるVRですが、2017年とはいえはまだまだ助走期間。
パソコンを当たり前に人々が使うようになるまでに掛かった時間は約14年、VRがユーザーに浸透していくにはそれと同じくらいの時間がかかると話す高橋さんの言葉が印象的でした。
2016年はその14年の初めの1年目、2017年は2年目であるということは、まだまだVRはこれから色々な事が起きるでしょう。
今後はユーザー目線に立った、より良いコンテンツ作りを中心に関係者がみんなで市場を作って、業界を盛り上げていく事が大切です。
頑張ろう、耐えた先に必ず何かがあるはずだ、VRの未来は明るい。
当日の出展ブースレポートはこちら
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