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國光氏、新氏、高橋氏、中村氏、VR業界のトップレイヤーに訊く「2017年のVR市場はこうなる」


まもなく2017年、VR元年となる2016年にHTC Vive、Oculus Rift、PSVRがリリースされ、モバイルではGearVRに続きGoogleよりDayDreamの発表がなされ、VRアトラクション施設も数多く提供されてきた。


確実にVR業界が進化するなか、業界のキーマンたちは今をどう捉え、2017年はどのようになると考えているのだろうか?Tokyo VR Startups(TVS)の國光宏尚氏と新清士氏、桜花一門こと高橋建滋氏にインタビューを敢行。「2017年のVR市場はこうなる」を予想してもらいました。


國光氏(右)新氏(中)高橋氏(左)

國光氏(右)新氏(中)高橋氏(左)


國光氏「エンターテインメントと産業用の2軸が成長していく。ゲームはハイエンドでロケーションベースが伸びる」


國光氏:去年までVRをプロフェッショナルでやろうというところはなく、ほとんどが趣味の延長だった。


今年になって一気に風向きが変わり、日本は当然のこと、中国・韓国・アメリカと、世界中にVRの大きな流れが出てきた。


その中で誤算といえば、すべてのハードの生産が追い付かなかったこと。ただそこは単純な生産の問題なので来年になれば大幅に解消されていくのかなと。


そのあたりの台数が出揃ってくる来年の年末あたりが本格的な普及の大きなポイントになると思う。


國光氏


一方で、台数が思った以上に出ていないことは悪くない面もある。それは本当に興味のある積極的な業界の人を中心に普及したところ。


あまり一気に普及しすぎると、まだ良質なコンテンツが揃ってないなかで、一般の人が質の悪いコンテンツを体験して「こんなもんか」と思ってしまいかねないので。


来年以降VRは2つの方向に成長すると思う。


一つは、ゲーム・映像を含むエンターテインメント。もう一つは、産業用。 ゲームはハイエンド向けとロケーションベースのものがぐっと増えてくる。


映像は、360度動画に向いているところ、向いていないところが今年になってかなり見えてきたため、向いているところ中心に伸びていくのではないかと思う。


二つ目の産業については、医療系・建築系などのVRに向いている業界が見えてきた。現在取り組み、力を入れているTVSにおいても医療系や映像系で世間から注目が集まるところがでてきている。


そういう意味では、VRがいきなり世の中すべてを変えるのではなく、VRに向いている業界が特に変わっていくのではないかと思う。


新氏「間違いなくソフト年となる。キラーコンテンツの登場が鍵」


新氏


新氏:2017年は間違いなく「ソフトの年」になると思われる。ハイエンドVRハードの量産化と低価格化も始まり、ソフトが普及できる段階へと移行できると思われるためです。


それでも、誰もが買えるという段階には入らないと思うので、鍵となるのはキラーアプリが登場するかどうかだと感じています。


VRならではの魅力を作り出せる、過去になかった体験を誰にでも納得できるものが出れば、市場はそれに引きずられて大きくなると思います。


もちろん、その最前線にYOMUNECOも、TVSもいられるように頑張ります。


高橋氏「大量に生まれるVRプロダクトの中で良質なモノを見極める目を持った人の存在が重要」


高橋氏


高橋氏:日本でも色々なBtoC、BtoB、BtoBtoCのVRサービスが雨後の竹の子のように出てくることは予想されます。


残念ながらその大部分が粗悪なものやブームに乗って「とりあえずやってみました」というものが多くなる気がしています。


ただ、良いものかどうかはやってみないと解らない所も多く、単純に数や種類が増えて裾野が広がる事は良いことだとも思っております。


同時に品質の大事さに目を向けている人達も多く存在しています。


メディアや広告代理店、コンテンツ制作者にそういう人達がいることも心強いところです。


そういう人達が良いコンテツ、良いサービスを引き上げてくれることで玉石混交状態の2017年から光る玉を引き上げ、2018年の発展につながればとも思っております。


TVSの取り組みについて


国内初のVRスタートアップ支援プログラムを作った団体。最先端のテクノロジーを育てる場を提供し続けており、最近ではFuture Tech Hub(FTH)とも提携し、国内外の最新VR情報のシェア、VR関連のコミュニティへのアクセス、ロケーションベースのVR開発環境の場を提供する一躍を担っている。



中村氏「PSVRの安定的な供給がVRエンターテインメントの鍵。任天堂SwitchがVR対応で更に市場を刺激か?」


立命館大学映像学部教授にして「ファミコンとその時代」や「なぜ人はゲームにハマるのか 」などゲーム関連の著者を多数持ち、ゲーム産業アナリストでVR産業の形成状況の研究も進めている中村彰憲氏にも見解を訊いてみました。


中村彰憲氏

中村彰憲氏


PSVRが国内30万台を突破がいつなのかが注目


中村氏:2016年、国内は文字通り「VR元年」となり前半はバンダイナムコグループの「VR ZONE」が世間を賑わせ、後半、とりわけソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)によるPlayStation VR(以下、PSVR)が発売直前の10月中旬は、再びVRという言葉がお茶の間を賑わした。


ただ、残念なことに、その話題性とは裏腹に、圧倒的な在庫不足に遭遇。


現段階において、少なくともヨーロッパにおいては必要数の需要を充たすまでに至っているものの[1]、12月初旬までPSVR単体バージョンの在庫が残っていた北米Amazon COM においては2016年12月20日現在、転売屋が200ドル以上価格を上乗せして販売する程の在庫不足になると同時に、日本国内のおいてもクリスマス商戦にあわせて投下された販売台数が瞬殺で完売するなど、発売以降、継続的な在庫不足で悩まされている。


このような中、非常に完成度が高いエレクトロニックアーツによる「Star Wars バトルフロント: X-Wing VR Mission」が無料公開されるなど、本来は話題性たっぷりの展開が行われているのにも関わらず、それが通常の人気タイトルのような形でそのクオリティの高さが国内では伝わっていない。


おそらく今の段階でPSVRに関する「口コミ」を増やしたからといって、販売につながらないということからの判断だろう。


劇場版「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」が非常に話題になっている中でのこの在庫不足は非常に残念としか言いようがない。


この分析が掲載される頃にはPSVR完全対応を謳う『バイオハザード7 レジデント イービル』(以下、『バイオ7』)の販売まで1か月弱となるが、『バイオ7』発売時期までに在庫問題が解消していれば、PSVR完全対応の大作リリースがPSVRの販売に拍車をかける可能性は高い。


従って、これら一連の状況を見ない限り、実際、PSVRの潜在的需要がどこまでなのかは測りにくい。


ただひとつ言えるのは、少なくとも北米と日本において、SIEの予測を上回る需要があったということだ。


また、これらの結果によって『FINAL FANTASY XV (ファイナルファンタジー15)』のVR対応の状況や詳細、またそれ以外に既に発表されている各社のコンテンツの状 況も変化することだろう。総じて、筆者がやはり注目するのはPSVRが国内30万台をいつ頃突破するかだ。


半期前に突破できるのであればか今後の展望にかなり楽観視が出来る。ただ、20万台を切るという状況で後半期に突入する場合、サードパーティなどの戦略も方針見直しとなることだろう。


世界的な生産供給の状況がネックになっていることも分かるが、いずれにしても2017年がPSVRにとっての正念場と言える。


なお、PSVRはミドルエンド層のHMDであり、ハイエンドは、HTC Vive並びにOcculus Touchという位置づけであるが、企業による公式の発表によるとHTC Viveは10月16日の段階で全世界14万台とされている[2]


これは、Steam Spyが提示する「Google Tilt brush」の11月3日段階でのオーナ数が14万~15万とされているので同作インストール数=普及台数と考えてほぼ間違いないだろう。


その「Google Tilt brush」だが、12月19日の段階での総インストール数が15万5500強から1万台前後の推移となっている。ここから読み取れるのは、少なくともHTC Viveは現段階においてはクリスマス商戦により需要が急増するというタイプのデバイスではないと認識されているようだ。これは基本的に同スペックであるOcculs Touchにも言える。


これらのデバイスはスペースの確保もさることながらユーザーの持つPCとの相性問題なども往々にして起き得るため、一般的なコンシューマには若干敷居の高いデバイスであるということが浸透しているのであろう。


故にグローバルでの現段階の販売数は50万台に達しているかどうかと考えるのが妥当だ。


こうなってくると、大手ゲームメーカーがVR系コンテンツを検討する際、タッチデバイスの機能を最大限利用する際も、各社の仕様で最適化出来るデザインを検討し、マルチプラットフォーム戦略を採る可能性が高い。


作品によってはそれぞれのタッチデバイスや、ルームスケールに対応するパッチを後々リリースする可能性もあるがそれも、それぞれのデバイスがどの程度普及しているかによるだろう。


業務用向けデバイスとしても道が開いたハイエンド向けVRヘッドセット


中村氏:ハイエンド向けVRヘッドセットの使用用途の方向性が明確に示された例として業務用向けがある。


2016年にバンダイナムコエンターテインメントにより展開された「VR ZONE Project i Can」や、東京ジョイポリスで展開された「ZERO LATENCY VR」での成功はこれらのデバイスがアミューズメントサービスとして活用されたとき、幅広いユーザー層に対して訴求することを示した。


実際、12月9日にはnamcoイオンモール長久手店に「VR NAGAKUTE By Project i can」が、12月16日からは大阪府吹田市のGUNDAM SQUAREにおいてVRアクティビティ、ガンダムVR『ダイバ強襲』が稼働を開始した。


これらの VRアクティビティはオープンしてから週末などは数時間待ちという状況になるほど大盛況となっている。


今後、これら地方都市での業務結果が明らかになるにつれて業務用用途としてのハイエンド用VRヘッドセットの位置づけが更に明らかとなるだろう。現在、マイクロソフトが「Microsoft HoloLens」を日本の開発者および法人向けに提供することを既に決定しているが、前述のような施設型アミューズメントが発展する先に、自己完結型ホログラフィックコンピュータの用途に活路が見いだせられるかもしれない。


一方、その他のマイクロソフトによるVR関連の戦略についてはXboxの新型、Project Scorpio、低価格帯PC向けVR用ヘッドセットともに現段階では不明瞭だが、2017年中には明らかになってくるだろう。


いずれにしてもこれら総体的な状況がエンターテインメント用途のVRの位置づけの底上げをしていくのが2017年となるだろう。


モバイルVRの主流はGoogle Cardboardタイプ。だがまだ大衆にはとどいていない


中村氏:モバイルデバイス向けVRヘッドセットだが、2016年1月、GoogleがCardboard Viewerの販売台数が500万台だったことを告げ、その後、中国の暴風魔鏡も2016年3月末の段階で同社のヘッドセットが中国を中心に100万台がリリース、更に韓国SamsungのGear VRにおいては、全世界で100万台以上が消費者の手にわたっているとの事実が2016年5月の段階で公表されている。


一方、Googleより展開されたハイエンドモバイル向けVRプラットフォーム、Daydreamについても、同基準に対応したハードは、現段階でGoogle自ら開発したPixel Pixel XLに、モトローラのMoto Z、Moto Z DroidならびにMoto Z Force Droidに留まっており、普及台数もSuperdataの推測では25万台強と限定的だ[3]


結局、モバイルデバイス向けVRで圧倒的に普及しているのが、低スペック、低価格のGoogle Cardboardタイプということになる。Googleは2015年9月の段階で既にVer2のCardboard Viewerの設計図をオープンソース化していることから、数々の業者によって、様々なバリエーションのViewerが生まれている。これらは安価で生産出来るため、様々なプロモーションアイテムとして配布されたりもするようになった。国内ではギフトカードタイプの紙製VRセットもリリースされた。


このような状況下、前述のSuperdataの推測は、2016年におけるモバイルVR向けCardboard Viewerタイプの普及台数を全世界で8400万強が流通されているとした。同社の推測は全般的に上振れする傾向にあるのでGoogle Cardboardタイプの流通量を8000万程度とし、その他のデバイスが従来と同様の普及速度で販売されたと推測してもモバイルデバイス向けVRヘッドセットの全世界での普及台数は8500万前後となる。


この数値は一見多いように見えながら2015年末の段階で全世界26億の登録台数といわれる[4]スマートフォン普及状況に対して3.2%程度。


スマートフォンの母数が母数だけに普及台数も他のVRヘッドセットよりは高いが、現段階での導入者層はやはり「新しいモノ好き」であり、広く一般に浸透している段階とは言い難いという現状だ。


ただ、スマートフォン向けCPUやGPUはいまだに日進月歩で成長している段階であることから、Daydream対応のスマートフォンも今後、続々リリースされることだろう。


更に重要なのはコンテンツだ。Google Spot Light Storiesなどで展開される360映像には既に『Fast &Furious』シリーズや『Star Trek Beyond』の監督として知られるジャスティン・リンによる作品などもリリースされているが、このようなハリウッドの著名監督などによる360映像への展開が2017年、更に期待される。


こういったトレンドに加え、パトリック・オズボーン監督による『Pearl』のように、モバイル向けVRでの視聴に最適化された360度映像作品のリリース続くと、360度映像作家の中でスタークリエイターが台頭するかもしれない。


また、若い男女などのカジュアル層をターゲットとしたCardboard Viewerも台頭することだろう。


簡単なビデオレターや、結婚式での感謝の言葉をVR映像とし、簡易版Cardboard Viewerとともに贈呈するといった「引き出物」も生まれるかもしれない。


既に展開されているVRを使った不動産、観光から、アイドルやグラビアアイドルの特典、そしてもちろんアダルトなどあらゆるジャンルでの展開の発展が進む。


こういった多くの企業による試行錯誤の先にヒットコンテンツが生まれるのだ。


SwitchがVR対応すれば、VR市場全体が更に活性化する?


中村氏:北米メディアがNintendo Switch(以下、にSwitch)に関する特許の中に、本体部分をヘッドセットに装着するダイアグラムが描かれていることを明らかにした[5]


これは、2017年のVR動向に影響をあたえうるひとつのトリックスターと言える。当然これはひとつの活用方法を示しているに過ぎず、実際に事業として展開するか否かは未知数だ。


本来特許申請はデバイスのあらゆる可能性を加味して申請すると考えるのが自然だからだ。


だが、『スーパーマリオブラザーズ』シリーズ的ゲームがVR上で如何に面白いかは、既にOculus Rift専用プラットフォーム型アクションゲーム、『Lucky’s Tale』が示したとおりだ。


Switch用として既に展開が決定している『スプラトゥーン』や、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』がVR対応になったときのファンやゲーマーの興奮は想像に難くない。


また、Switch本体をVR専用ヘッドセットへ装着することを想定していたのであれば、同ハードのプロモーション映像に一切子供たちが登場しなかった理由もしっくりとする。


ただ、任天堂が事業を意識してSwitchのVR対応を決断するかどうかもVRエンターテインメント市場全体の動向如何によるだろう。


いずれにしても、従来からの人気コンテンツのVR対応と、VRとともに生まれる新たなスターIPがそれぞれのユーザーをけん引することでVR市場全体を盛り上げていくことになるのは間違いない。


現段階では競合による淘汰を意識するよりも、参入企業が多ければ多い程市場形成に貢献する時期ということが出来る。


そのような意味であらゆる可能性に期待したい1年と言えよう。



中村氏のコメントの参照元

[1] 12月21日の段階でフランス、UK、ドイツなど各地域のAmazonに在庫が存在することが確認できている。

[2] http://www.gamesindustry.biz/articles/2016-10-20-htc-vive-has-sold-more-than-140-000-units-report

[3] http://www.hypergridbusiness.com/2016/11/report-98-of-vr-headsets-sold-this-year-are-for-mobile-phones/

[4] GSMA「Mobile Economy 2016」にもとづく

[5] http://venturebeat.com/2016/12/18/nintendo-switch-patent-shows-off-a-vr-style-headset/


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