株式会社キャドセンターは、同社の3D都市データ制作技術を活かし、熊本県玉名市の実際の街並みを使った、水害時の避難シミュレーションを体験できる防災VRコンテンツを制作したことを発表しました。
「自分ごと化」に寄与する防災VRコンテンツ
これまでに多くの防災VRコンテンツが制作されていますが、実在の都市データを活用したものは多くありません。
今回のコンテンツは、3D都市データの制作技術を有するキャドセンター社が、実在する街並みを用いて制作しています。
リアルに再現された街並みと、臨場感溢れる水害のシーンは、体験者に災害を『自分の身に起こること』として考える=自分ごと化する体験をもたらします。
また、自治体による3D都市データ制作技術を活かした取り組みは全国でも初だということです。
リアルな街並を再現した『防災VRコンテンツ』
今回制作されたコンテンツは、VRで再現された玉名市松木南児童公園付近の自宅からスタートし、外は大雨、テレビからは大雨警戒レベル4の避難指示がでている状況の中、玉名市の災害時一時避難場所及び垂直避難建物に指定されている『玉名市文化センター』を目指して避難する体験ができる構成となっています。
さらに、避難の状況を追体験するだけでなく、避難ルートに3つの分岐ポイントが用意されており、体験者がどう行動するかを考え災害をリアルに想像しながら避難体験が可能となっています。
命を守るための行動を考えるシナリオ
水害のシナリオ作成については、熊本大学先端科学研究部・本間里見教授、内山忠准教授が監修を行っており、避難ルートに自ら考える3つの分岐ポイントが設定されています。
ポイント1
A:破堤した水流と反対方向に進む「西側に進む」
B:水流に近いが最短を進む「北側に進む」
正解: B. 北側にすすむ
地盤の高低差などが影響するため、水は一定方向に進まないというメッセージがこめられており、さらに浸水エリアを事前にハザードマップで確認しておくという注釈も表示されます。
ポイント2
A:避難所から遠い道を進む「立体交差を避ける」
B:避難所に近い道を進む「立体交差をくぐる」
正解:A. 立体交差を避ける
アンダーパスは、急激に雨が強くなると周辺一帯から水が集まることで一気に浸水して、身動きが取れなくなることを注意喚起しています。
ポイント3
A:遠くても平地を進む「高台に進む」
B:近くても大通りを進む「直進する」
正解:A. 高台に進む
雨が長時間降り続いている状況や雨量が急激に増えた場合は、内水氾濫が起こる可能性があることを知らせ、早めの行動を心がけるように注釈を表示しています。
住民体験会では90%が「防災意識向上」の役立つと回答
コンテンツ内で災害現場となっている玉名市の松木公民館で、住民を対象とした防災VR体験会が2023年2月7日に実施されました。
体験後のアンケートでは、
『実際に水害を体験している怖さを感じた』『VRゴーグルならではの没入感があった』『内水氾濫する街の様子がリアルで臨場感があった』が85%
『今回のVR体験が「防災意識向上」の役に立った』が90%
という結果になっています。
【その他自由回答の内容】
・事前に避難を考える機会となった。
・避難訓練が必要と感じた。
・事前避難の重要性を理解した。避難所収容人数が心配です。
・常日頃の避難場所を考える。
・リアルでした。防災マップを見ておこうと意識しました。
開発の経緯
玉名市は、国土交通省が主導している日本全国の3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU」プロジェクトに参画し、交通・環境・防災といった都市活動データ等と連携しながら、各分野で活用が想定されるデジタル基盤「3D都市モデル」を整備してオープン化しています。
同市は2022年度に創設された都市空間情報デジタル基盤構築支援事業を活用し、3D都市データを使用した防災VRコンテンツの制作をキャドセンター社へ依頼しました。
そこで、キャドセンター社は3D都市データの制作技術を活かし、玉名市の実際の街並みを使った水害時の避難シミュレーションを体験できる本コンテンツを制作しています。
今後の展開について
本防災VRコンテンツにおいて、スタート地点・分岐ポイント・災害ポイントの拡充が予定されています。
またVRゴーグル無しでも体験ができるブラウザ版の活用やスマートフォンでも体験できるような仕組みを取り入れることで、全国の防災イベントなどでの導入増加を目指しています。
本コンテンツの制作過程や、玉名市からの依頼の経緯などを紹介するウェビナーが3月23日に予定されています。
詳細:ウェビナー 開催情報
まとめ
キャドセンター社が、同社の3D都市データ制作技術を活用して熊本県玉名市の実際の街並みを使った、水害時の避難シミュレーション体験可能な防災VRコンテンツを制作しました。
自治体からの依頼で、リアルな3D都市データを用いての防災コンテンツの作成は全国でも初めての取り組みであり、住民による体験会では、90%の参加者が「防災意識向上」につながったと回答しています。
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