ACTUAL Inc.は、美術館などの360°メディアを自分の手で保存、編集、配信するバーチャルツアーに簡単に再構築することができるクラウドアプリケーション「WHERENESS(ウェアネス)」の公式サイトを、2023年2月15日に公開したことを発表しました。
日本公式サイトオープン!「WHERENESS」とは?
「WHERENESS」は、アクチュアル社が開発中のクラウドサービスで、ユーザーが自身で撮影したVR動画などの360°メディアや写真のデータをクラウドにアップロードし保存することができるだけでなく、ブラウザ上でテキストを追加するなどの編集をし、URLをシェアする形で配信することまでできます。
2023年春のβ版リリースを目指し開発が進められており、2月15日より公式サイトが公開されています。
開発の背景
スタティス社の2021年3月時点での統計によると、世界には『10万館以上の美術館や博物館』があり、『2000件の芸術祭』が行われ、『296,000軒のギャラリー』が存在しています。
美術館や博物館で年間8展、芸術祭で10展、ギャラリーで年間4展の展覧会が開催されていると仮定すると、1年間で開催される展覧会は約195万展にものぼります。
しかし、そのほとんどは『1~3ヶ月ほどの会期で取り壊され、その体験を未来に残す手段がない』というのが現状です。
この問題を解決するため、若手創造者の支援と、知的文化の創造を目的とする公益財団法人である西枝財団では、「ART360°(アート・スリー・シックスティー)」という360°展覧会アーカイブ事業を展開しており、アクチュアル社も2017年より360°展覧会アーカイブ事業の企画および制作に携わっています。
360°展覧会アーカイブ事業を通じ、誰もが時間や距離を超えてアートの足跡を振り返ることができる環境づくりを進める中で、『制作コストが高い』という問題点が浮かび上がりました。
アクチュアル社では、ワークフローを改善することで、360°映像を安価に保存・編集・配信することができれば、誰もが過去をより豊かに体験することができるのではないかと考え、「WHERENESS」の開発に取り組んでいます。
今後の展開
アクチュアル社は今春の「WHERENESS」β版リリースを目指し開発を進めており、VRヘッドセット対応、チーム管理機能やタイムラインポップアップ、また、アクセス解析・レポート機能の実装なども随時進めたいとしています。
「WHERENESS」の契約方法や利用価格に関しては、β版リリース時に案内することが予定されています。
「WHERENESS」の特徴
「WHERENESS」では、360°メディアの保存・編集・配信といった操作がすべてブラウザ上で完結し、データはクラウドに保存されることから、「いつでも」「どこからでも」PCのストレージ容量を気にせずアクセスすることができるサービスに仕上がっており、チームでのオンライン同時編集にも近日対応予定となっています。
さらに、特定のメンバーのみでの共有や、有料での配信も「WHERENESS」だけで完結させることができるため、文化芸術にかかわるさまざまなユーザーへ新しい記録手法を、そして鑑賞する人にはより豊かな記録体験を提供することができるサービスを目指しています。
今までにないクラウドアプリケーションとして開発された「WHERENESS」の特筆すべき特徴は、以下の3点となります。
360°動画に対応している
一般的に普及しているバーチャルツアーアプリケーションで記録や配信ができるのは『静止画』ですが、「WHERENESS 」では『360°動画』に対応しています。
そのため、インスタレーションやパフォーマンスなど『時間軸を含んだ体験』を構築することができるという特徴があります。
制作フローが簡略化されている
『360°動画』はデータ容量が非常に大きいため、従来、編集作業には『長い時間』と『高いPC性能』が必要とされてきました。
しかし、「WHERENESS」では、編集作業をクラウド上で完結させ、書き出し回数を減らすことで編集工程を1/4程度まで削減することに成功しています。
制作フローの簡略化は制作コストの削減につながることも期待できます。
エディター画面
エディター画面では『シーンの編集』や『視点と視点を繋ぐことで移動ルートを作成する』など、さまざまな編集機能を使うことができます。
ダッシュボード
ダッシュボード画面では、複数のプロジェクトを管理することができます。
また、360°メディアの撮影方法や編集のしかたをチュートリアル動画で学ぶこともできます。
チケット配信による収益化が見込める
不動産および建築用に設計されている現状のバーチャルツアー制作アプリケーションには『マネタイズ方法』がないため、長期運用をすると保存コストが大きな負担になるという問題点があります。
一方、「WHERENESS 」では、バーチャルミュージアムツアーのチケット配信が行える仕様となっています。
この機能により、将来的には『360°空間内に作品を配置し販売する』ことも可能であり、収益化につなげることが見込めます。
プレーヤー画面
プレーヤー画面はシンプルで直感的に使えるデザインとなっているので、その場にいるかのように空間内を自由に歩き回ったり、別の場所へ移動することができます。
まとめ
今まで記録することが難しいとされていた美術館や博物館での展覧会を、手軽かつ安価に記録するためのクラウドアプリケーション「WHERENESS」の開発がアクチュアル社により進められており、今春のβ版リリースを目指して公式サイトが今月15日より公開されています。
諸事情により見逃してしまった展覧会や、外国での開催だったために足を運ぶことができない展覧会でも、気軽にみることができるようになる日が近いというニュースは、春の訪れと同じくらい待ち遠しく感じるニュースですね。
Copyright ©2023 VR Inside All Rights Reserved.