ここ数年、日本でもオンラインショッピングサイトを中心にセールを実施する企業が出てきているブラックフライデー。アメリカではこの金曜日やその前後に大々的なセールが実施され、VRヘッドセット、VR Ready PC、VRコンテンツなども多数その対象となっていた。
PCベースのVRヘッドセットを動作させるために使われる高性能なGPUも例外ではなく、メーカーが公表している希望小売価格から5千円、あるいは1万円を超えるような値引きが行われることもあったようだ。この価格は、クリスマスから年末年始にVR対応GPUの購入を考えているVRユーザやゲーマーの基準になるかもしれない。
GPUの今
VR Ready PCを構成するパーツの中でも、特に大きなウェイトを占めるのがグラフィックカードだ。快適なVR体験にはCPU速度やメモリ容量以上に高い映像の処理能力が必要となることに加え、パーツの価格という点でも存在感を示す。
Windows Mixed Realityヘッドセットならば最小要件は低く、専用GPUを搭載しないマシンでもCPUの統合グラフィック機能で使えるとされている(リフレッシュレートは90Hzではなく60Hzに落ちてしまう)。しかし、HTC Vive/Oculus Riftの最小要件やMRヘッドセットの推奨要件を満たすには独立したグラフィックカードが必要だ。
そうしたグラフィックカードに使われるのは、NVIDIAまたはAMDのGPUである。
GPU市場の変化
1990年代後半から2000年代にかけて、一般家庭にパソコンが普及した。インターネットで情報の検索や買い物をする、写真入りの年賀状を自分でデザインして印刷するといった目的でパソコンを購入した家庭も多かったはずだ。
しかし最近では、パソコンを使わない消費者がまた増えている。スマートフォンの高性能化が進み、ブラウジングやちょっとした写真の加工くらいならばパソコンを使わずにできるようになったからだ。
複雑で高度な作業には依然としてパソコンが必要だが、多くの消費者はそれほど高いスペックを求めていない。スマートフォンは機能が制限されており、その分簡単に扱えるところもメリットとなっているようだ。
カジュアルユーザがパソコンからスマートフォンやタブレット端末へと移行してPC用GPUの需要が下がる一方で、高性能なGPUの市場を支えてきたのがPCゲーマーだ。3Dゲームを高品質な映像設定でプレイするには、相応のGPUパワーが必要になる。VRゲームならばなおさらだ。
また、最近ではビットコインのような暗号通貨のマイニングを行うために高性能GPUが使われることも多い。
ゲーム用PCの成長
Jon Peddie Researchのレポートによると、ハイエンドデスクトップPCの市場が成長しているという。これらのマシンが使われるのは、VRを含むゲームや暗号通貨のマイニングだ。
2017年第3四半期のデータでは、販売される全てのPCの4割程度が統合グラフィックシステムではなく独立したGPUを搭載したマシンだ。このことは、NVIDIAやAMDが出荷台数を伸ばす理由となった。
NVIDIAのPC向けグラフィック出荷台数は前四半期比で29.5%増加、AMDも7.6%増加している。
ただし、この出荷台数の増加にはゲーム用途に限らないパソコン全般の出荷が増えているという季節的な要因もありそうだ。Intelは独立GPUを開発していない企業だが、統合グラフィックの出荷台数が5%ほど増加しているという。
ブラックフライデーのGPU価格
ゲームに暗号通貨のマイニングに需要が高い高性能GPUの価格は上がっており、特にAMDのGPUは供給不足によって価格が高騰してしまっている。そのため、ブラックフライデーに割安価格で提供されたのはNVIDIA製GPUの方だ。
NVIDIAのGPU価格
VR用途に適したNVIDIAのGPUとしては、GeForce GTX 1080、GTX 1070、GTX 1060といったシリーズが挙げられる。価格と性能のバランスを考えるなら、それぞれのTi(GTX 1070 Tiなど)を選ぶのも手だ。
なお、各GPUを搭載したグラフィックカードの現在の最低価格は、概ね次のようになっている。
- ・GTX 1080 Ti
約88,000円 - ・GTX 1080
約65,000円 - ・GTX 1070 Ti
約58,000円 - ・GTX 1070
約45,000円 - ・GTX 1060(メモリ6GBのもの)
約29,000円
GTX 1080
NVIDIA製GPUの中でも特に高性能なのはGTX 1080 Tiだが、最低価格が約88,000円とかなり値段の張るパーツだ。同じ値段で一式購入できるVR対応のパソコンもあるほど高い。また、2017年3月と比較的発売が遅いこともあって値引き額も控えめだ。
そこで、GTX 1080 TiではなくGTX 1080という選択肢が浮上する。
Neweggでは、GTX 1080が希望小売価格から50ドル引きの500ドルで提供されている。日本円で5.6万円であり、国内での最安値と比べても1万円近く安い。さらに、9月に発売されたPCゲーム『Destiny 2』(約5,000円)も期間限定で付属する。
パーツ単体の価格として見れば高価ではあるが、GTX 1070や1070 Tiと比べてもコストパフォーマンスは悪くないと言えそうだ。
GTX 1060
GTX 1080や1070が高すぎると感じるならば、メモリ6GBのGTX 1060は有力な候補となるだろう。
こちらはAmazon.comが240ドル(2.7万円)で提供していたという。現在は267ドルとなっており、Amazon.co.jpの2.9万円とほぼ同額だ。
上位のGPUに比べれば処理能力は劣るが、最上位のGTX 1080 Tiと比較すると3分の1の価格で購入できるVR対応GPUとなっている。
PCパーツの価格は、需要と供給によって大きく変動する。クリスマスや年末年始のセールでグラフィックカードを購入するつもりなら、「このくらいまで下がる可能性がある」という参考価格としてブラックフライデーの価格を頭に入れておく価値はありそうだ。
セール価格がこれよりも高いようなら、供給が安定するまで様子を見るべきときなのかもしれない。
参照元サイト:Upload VR
参照元サイト:Road To VR
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