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VR視覚化ツールが遺伝病の治療法解明に使われる


遺伝子研究に使われるVRツール

遺伝子研究に使われるVRツール


数字で記録された情報を三次元空間で表現することのできるVR技術は、大量の情報を分析する金融業界などでの利用が検討されている。ただ数字を羅列するのではなく形を与えることで、投資家が判断を行う助けとなるからだ。平面のグラフや3DCGによっても情報の視覚化は可能だが、立体的なVR空間での表現ではより多くの情報を人間にとって直感的な形に描画できる。


この特徴は研究者にも利用されている。オックスフォード大学では、遺伝子研究に利用するためにVRデバイス(画像を見る限りではHTC Vive)用のアプリケーションを開発したという。このアプリケーションは、遺伝子が染色体内部でどのように扱われているかのモデルを構築するために利用されるものだ。


三次元空間における遺伝子の構造



遺伝子構造の研究


人間を含む生物の身体を構成する物質の情報を伝える遺伝子。遺伝子はタンパク質の構造を指定する役割を持つことから生物の設計図と言われることもあるが、人間が紙に描く設計図のように平面で捉えるべきものではない。


遺伝子それ自体も三次元の広がりを持つ物質からなっており、細胞内部で三次元的にコントロールされている。遺伝子の研究は進められているが、それが細胞内部でどのような状態になっているのかを説明するモデルを作るのに適した方法はこれまで存在しなかった(CGやイラストで表現されていた)


VRアプリケーションは遺伝子のモデルを構築し、遺伝子同士が相互作用する様子を研究するためのツールとして利用されている。このシミュレーションのベースとなっているのは、ゲノム配列決定に関する研究データやDNAの相互作用に関するデータ、そして顕微鏡での観察から得られたデータだという。


これらのデータを組み合わせることで、三次元空間における遺伝子相互の位置関係を示すことが可能となっている。


視覚化の重要性


MRCウェザオール分子医学研究所(MRC WIMM)のStephen Taylorは、データを視覚化することの重要性を次のように語っている。


「人間の脳はパターン認識能力が非常に優れているため、このようにデータを視覚化できることは重要です。人間は、視覚的に考える傾向があるのです」


彼らがこの分野における視覚化の有効性を知ったのは、2014年のことだという。他大学の研究者が、タンパク質の3Dモデルを構築するソフトウェアを用いていたのだ。彼らは、一見して構造を理解するのが難しい複雑なタンパク質を理解しやすい3Dモデルで表現してしまったという。


VR技術の登場



遺伝病の解明


人間の病気には外部から細菌やウイルスが侵入することで引き起こされるものだけでなく、遺伝子の変異が原因で引き起こされる・発生率が高くなるものがある。こうした遺伝病の解明には、遺伝子の三次元的な構造を理解することが必要だという。


成人の身体は平均して37兆もの細胞から構成されており、各細胞の核内には全長2メートルにもなるDNAがみっちりと詰め込まれている。このDNAに特定の変異が起きることが遺伝病の原因となるが、同じ変異があっても症状が出ない(あるいは出にくい)患者もいるようなのだ。ここに遺伝子の「折りたたまれ方」が関わっているらしい。


ゲノムの配列(ABCD…と並んでいるのか、ACBD…となっているのか?)を特定する技術は進歩しているが、2メートルもの長さのあるDNAがどのように折りたたまれて核内に入っているかの研究はまだ進んでいない。


この三次元構造によって遺伝子の発現(遺伝子が機能すること)が変化することが研究から示されているため、遺伝子や他の構成要素の相互作用を研究することが遺伝病の基礎を理解するために重要になるという。


難病の治療に向けて


オックスフォード大学のJim Hughesは、ヒトゲノムの膨大さが遺伝病の治療をより難しいものにしていると指摘する。


「人間のゲノムには、塩基対が30億以上も存在します。そして、そのうちのたった一つが変異しただけでも病気を引き起こす可能性があるのです」


折りたたみの構造が分からなければ、遺伝子のどの部分が他の部分に影響を与えているか、関連を見つけるのが難しくなる。しかし、遺伝子の相互作用に関するデータと遺伝子配列に関するデータを組み合わせて3Dモデルを作れば、遺伝子と遺伝子を制御する他の要素の関係を視覚化可能だ。


研究チームは、がん、糖尿病、多発性硬化症といった遺伝子が関連する疾患を研究するためにこれらの技術を応用しているという。


WIMMの主任研究員Doug Higgsは、彼らの最終目標が遺伝子またはその発現を制御する要素を調整することで遺伝病の発症を抑えることだと付け加えた。


 


研究者は遺伝子配列を特定するための洗練されたツールを持っているだけでなく、新たに遺伝子の三次元構造を効率的に研究できるVRというツールを手に入れた。最新技術を用いて進められる彼らの研究は、現在治療ができない・困難だとされている遺伝子の関わる疾患の治療法を見つけ出すことに繋がるかもしれない。


医療現場で使われる手術補助ツールやリハビリツールとしてだけでなく、医学の研究を進める道具としてもVRは大きな役割を果たす可能性がある。


 


参照元サイト名:University of Oxford

URL:http://www.ox.ac.uk/news/2017-09-21-virtual-reality-tool-developed-untangle-genes


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