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ジェームズ・キャメロン監督発言「今のVRは真のVRではない。真のVRとはそのなかで動けるものだ」


海外メディアRoad to VRは、ジェームズ・キャメロン監督のVRに関する発言を紹介した。



「真のVR」を夢見る巨匠


同メディアは、映画「ターミネーター2 3D」の公開に際して行われた同映画を監督したジェームズ・キャメロン監督のVRに関する発言を紹介した。同監督がVRに関して言及しているのは、以下に引用する動画の9分50秒から11分20秒あたりである。



以上の動画における同監督の発言を理解するには、同メディアが2015年8月13日付の記事で掲載した同監督のVRに関する発言に言及する必要がある。今からちょうど2年前、「VR元年」を迎える前に同監督はVRについて以下のように発言していた。


VRとはいったい何でしょう?VRには、立ったり見回したりする以上のインタラクティヴィティ(nteractivity:相互作用性)があるのでしょうか?


もし、ユーザーがVRのなかで動き回りたいのであれば、ゲームをやればいいのです。そして、ゲームはゲーム以外のものでは決してありません。


OculusRiftはいいものです、もっともそれは「いいディスプレイ」あるいはそれに類するものに過ぎませんが。


2年前の同監督には「VR映画」の可能性は眼中になかった、と解釈できる発言である。


そうした発言から「VR元年」を経験した2年後、同監督はVRに関して以下のように発言した。


ぜひお伝えしたいのは、もし「アバター」シリーズを作ってなく、私の創作意欲を「アバター」シリーズの制作以外に費やせるのであれば、VRに関する実験をしているだろうということです。


ところで、多くのヒトがVRと呼んでいるものは、実はVRではありません。それは無指向性カメラ(omnidirectional camera)に過ぎません。そして、無指向性カメラで撮影された動画では、ユーザーは空間を制御できません…バーチャルな環境のなかであたりを見回すことだできるだけです。そんなのは真のVR(true VR)ではありません。


真のVRとは、ユーザーがそのなかで動き回れるもののことなのです。真のVRにおいては、ユーザーはバーチャルな環境でどこでも行くことができるような制御を獲得しているのです。


同監督が言っている「無指向性カメラ」とは360°カメラのことを意味していると理解してよいだろう。確かに360°カメラでは、ユーザーはカメラが設置された場所とは別の地点からバーチャルな環境を見ることはできない。つまり、360°カメラのある場所から移動することができないのだ。


VRアクションゲームのようなゲームエンジンで構築されたバーチャル空間においても、現在の技術レベルではユーザーはリアルな世界と同様に移動できるわけではない。


同監督は、「真のVR」の実現に関して、さらに以下のように発言している。


「アバター」で描かれたような完全なリアルタイムなインタラクティブが実現したVRを実現するのは、現在より数世代先のテクノロジーでしょう。


そうした真のVRには、たった1フレームだけで100時間を超えるレンダリングが必要でしょう。この真のVRの実現から、私たちは数十年隔たっています。あるいは10年くらいかも知れません。


しかしながら、私は真のVRを見たいのです。そして、ぜひ真のVRを使って映画を制作したいのです。


以上の発言からわかるのは、同監督が考える「真のVR」とは、ユーザーが全身でバーチャル空間を体験するような完全没入型VRであること、そして、この完全没入型VRを使ってゲームではなく映画が制作できると考えられることである。


まとめると、2年前にはVR映画の可能性そのものを否定していた同監督は、現在は今より数世代先のVRテクノロジーを使ったVR映画の可能性について思いを巡らしているのだ。そして今回の発言は、映画史上興行収入1位と2位の映画を制作した監督が、VR映画の可能性を公式に認めたことを意味しているのではなかろうか。


完全没入型VRの可能性


キャメロン監督が「真のVR」と考える完全没入型VRは、当然ながら現在は実現していない。しかし、すでに実現に向けての取り組みは始まっている。


完全没入型VRの研究で代表的な事例は、AxonVRである。


完全没入型VRを実現するために求められるのは、完全なフルボディ・トラッキングと全身にわたるバーチャルなハプティック(触覚)体験だ。


AxonVR社は、以上のふたつの技術に関する特許を取得している。その特許に記述された完全没入型VRシステム「HaptX」には、様々な要素が含まれている。


HaptXシステムの中心となるのが軽量外骨格のHaptX Skeletonだ。ユーザの全身を覆うこのフレームは、ユーザの身体を押すことで物理的な刺激を加え、逆にユーザの動きをトラッキングしてVRへの入力として使用する。HaptX Skeleton以上に細かな動きを担当するのがHaptX Skinと呼ばれる素材である。この2つが組み合わさってユーザをVRに没入させる。


AxonVRの図

HaptXプラットフォームは全身でVRを感じられる


AxonVRの特許から

AxonVRは活き活きとした触覚フィードバックのための特許を取得した


HaptXは、あくまで完全没入型VRのプラットフォームであって、コンテンツではない。こうした完全没入型VRを使ったコンテンツで真っ先に思いつくのは、VRアクションゲームである。だがしかし、現在のVRテクノロジーがそうであるように、完全没入型VRもゲーム以外のコンテンツにも応用され、そのなかには「物語」を体験させる現在の映画の子孫も含まれていることだろう。


ジェームズ・キャメロン監督のVRに関する発言を紹介したRoad to VRの記事

https://www.roadtovr.com/james-cameron-if-i-wasnt-making-avatar-sequels-experimenting-with-vr/


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