海外メディアVRFocusは、Neurableが脳波コントローラーのSDKをリリースしたことを報じた。
2018年のVRアーケード投入を見すえた脳波コントローラー
同メディアによると、脳波コントローラーを開発しているNeurableは同コントローラーを開発する制限ベータ版をリリースした。
VIVEに脳波を検知するセンサーを追加装着して使用する同コントローラーは、本メディア2017年8月1日付の記事で紹介したように、メディアアートと最新テクノロジーの祭典であるSIGGRAPH 2017においてはじめて披露されて大きな反響があった。同イベントに出品された脳波コントローラーを活用したミニゲーム「Awakening」をプレイする様子は、以下の動画に収録されている。
今回リリースされた同コントローラーのSDK(Software Development Kit:ソフトウェア開発キット)は、同社公式サイトから利用申請したユーザーが入手できるようになっている。
同コントローラーの今後の展望に関して、同社CEOのRamses Alcaide氏は以下のように話している。
わが社は、脳波コントローラーを2018年にはVRアーケードに投入するつもりです。
現時点ですぐに披露できるSIGGRAPH 2017に出品したゲーム「Awakening」は、VRアーケード用ゲームの短縮バージョンです。
実のところ、わが社はゲームメーカーでもハードウェア・メーカーでもありません。しかし、「Awakening」はわが社の脳波コントロール・テクノロジーを活用したVRアーケード用ゲームの第一号となるでしょう。
BCI研究開発史
同社公式サイトには、脳波コントローラーを可能としているテクノロジーであるBCI(Brain Computer Interface)の研究開発史を掲載している。
脳波を使ってコンピューターを制御するBCIの研究は、1970年代にまでさかのぼる。この当時は、筋力が急速に衰える筋萎縮性側索硬化症の患者の生活を支援する技術として研究が進められていた。また、事故によって四肢神経が損なわれたヒトの助けになることも想定されていた。つまり、医療目的から研究されていたのだ。
時代がくだり、BCIは医療目的以外の活用法が研究されるようになった。そうした研究の初期の例として、脳の活動レベルを可視化することが試みられた。脳波を検知するセンサーを使って、脳が活発に活動しているのか、あるいはリラックスしているのかグラフ化したのだ。
そして、現在になるとさらにゲームやマーケティング、教育といった分野での応用も考えられるようになり、同社のBCI対応ゲーム「Awakening」が誕生したのだ。
脳波コントローラーのSDKについて
同社が開発した脳波コントローラーセットは、脳波を検知するセンサーと対応アプリを開発するSDKから構成されている。SIGGRAPH 2017で披露されたデモアプリはVIVEを活用したものだったが、もともとは特定のVRヘッドセットに依存したSDKではない。つまり、将来的にはOculusRift版も開発する予定なのだ。
とはいうものも、現時点ではVIVEに対応したSDKのみが用意されている。同SDKにはドキュメント、チュートリアル、そしてサンプルコードが含まれている。
同SDKで対応アプリを開発する際には、C#、C++、そしてUnityが利用可能だ。また、SDKをインストールする各PCの推奨環境は以下の表の通りである。
WINDOWS | MAC | LINUX | |
---|---|---|---|
OS | 7/8/10 64 bit | X Yosemite (10.10.3) | Ubuntu 16 LTS |
RAM | 8 GB | 8 GB | 8 GB |
CPU | Quad Core CPU (4x 2GHz) | 2.3Ghz quad-core Intel Core i5 | 2.3Ghz quad-core Intel Core i5 |
GPU | Nvidia GT 650M | Nvidia GT 650M | Nvidia GT 650M |
以上のような脳波コントローラーは、既存のVRヘッドセットと同等かそれ以上に重厚な「ガジェット感」にあふれており、ゲーム以外の日常生活で活用している姿はすぐには思い浮かばないだろう。だがしかし、同コントローラーに関してRamses Alcaide氏は、SIGGRAPH 2017の会場において以下のようなアイデアを話していた。
私が考えるに、未来のMixed Reality(VRとARの複合体験)におけるインタラクションは、音声、ジェスチャー、視線を複合したものであり、それらを結びつけるのがBCIなのです。
…さらに言えば、未来のMixed Reality社会においては、iPhoneやPCのようなユビキタスなデバイスがプラットフォームとはならないはずです。そうではなくて、BCIこそ未来のプラットフォームなのです。
現在よりさらにIoT(Internet of Things:モノのインターネット)が生活に浸透していると思われる未来においては、家電の制御はすべて脳波で行っているのであろうか。とりあえず、同社からリリースされるBCI対応ゲームの完成を待とう。
Neurable公式サイト
http://www.neurable.com/
Neurableが脳波コントローラーのSDKをリリースしたことを報じたVRFocusの記事
https://www.vrfocus.com/2017/08/thought-controlled-vr-is-on-the-way-with-neurables-brain-computer-interfaces/
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