Oculusが開催するSummer of Riftキャンペーンは、ストアで販売するVRコンテンツのセールから始まった。Oculus Storeでのセールは終わってしまったが、次にターゲットとなったのはOculus Riftをまだ持っていない消費者だ。
2万円という値引き額は、Oculus Riftの購入を考えていた消費者にとって大きすぎる後押しである。
消費者にとっては嬉しいセールだが、このセールには大きなデメリットがあるかもしれないという指摘もなされている。これまでにもVR関連のデータを発表している調査会社SuperDataも、メリットを上回るデメリットがあると考えている。
Oculus Riftの大幅値引き
OculusとHTCの販売戦略
PCベースのVRヘッドセットとしてメジャーなOculus RiftとHTC Viveだが、それぞれのヘッドセットを販売するOculusとHTCの戦略はかなり異なっている。
Oculusは今年の3月にOculus RiftとTouchや追加のセンサーを値下げしており、Summer of Riftのセールではセット価格からさらに2万円の割引を行って5万円としている。
対してHTCはHTC Viveの価格を据え置きしており、キャンペーン期間であってもあまり大きな値引きを行っていない。無料のVRコンテンツやVRコンテンツの購入に利用できるストアクレジットの付与がキャンペーンの目玉だ。
同社はOculusが値下げを行った直後だけでなく先月も自社の販売戦略について説明しており、今後もHTC Viveの価格を維持する方針のようだ。
Summer of Riftの特別オファー
値引きを行いたがらないHTC(Viveの発売1周年を記念する1日限定価格でも100ドルしか値下げしなかった)と対照的に、Oculusは今年の夏も大きなセールを実施している。
この値引きはVRコンテンツのセールや人気VRゲームの期間限定無料プレイを含むSummer of Riftキャンペーンの一環として行われたもので、6週間限定でOculus RiftとTouchのセットが5万円だ。
3月以来、Rift&TouchはViveと比べると200ドル安くなっている。このセール期間中であればViveの半額であり、PSVRと並ぶほど安い。
セールの悪影響
VRデバイスの購入を検討する消費者にとってはありがたいOculus Riftのセールだが、この戦略はメリットよりもデメリットの方が大きいのではないかという指摘がなされている。
低価格が不安を与える
SuperDataの研究・戦略担当であり、VR/AR戦略の代表も務めるStephanie Llamasは、「デバイス価格を絶え間なく引き下げ続けていることで、消費者がヘッドセットに対して良くないイメージを持ってしまう」と考えている。
「Viveに比べて非常に安い価格であれば、消費者は『なぜこんなに安いのか?』『どうやってこんなに安くしているのか?』と訝しく思ってしまうでしょう」
と彼女は付け加えた。
値段が安いことは製品を選択する理由の一つになる。だが、特定の機能が欠けている、型落ち品であるといった明確な値下げの理由もないのに極端に安い製品に対しては不信感を抱くこともあるだろう。
自信のなさの現れ?
SuperDataが行った調査によれば、2017年の第1四半期にHTCが95,000台のViveを売り上げている。同じ期間にOculusが販売したRiftの台数は65,000台で、HTCに大きく差を付けられた状態だ。
OculusがHTCに追いつくための起爆剤を必要としていることは事実だが、値下げはその最適な方法ではないかもしれない。
ViveやPSVRの価格は変更されていないので、OculusがRiftの値段を下げることは「自社の製品に自信がないことの現れ」とみなされてしまう可能性がある。
多様な消費者
Llamasも、OculusによるRiftのセールが短期的に売上をブーストする効果はあるかもしれないと認めている。だが、VRに興味を持つ全ての消費者がRiftを安く買いたいと考えているわけではない。
消費者によって、VRに求めているものやVRデバイスの購入に投じられる予算は異なる。
「プラグアンドプレイを求める消費者はPSVRを選ぶでしょうし、VRデバイスの購入を投資として考える人や技術に詳しい人は品質面で最高と考えられるもの、つまりViveの購入を考えるか、既にViveを購入しているかもしれません。
VRはまだ多様な消費者のニーズに応えられるほど成熟していません。
VRが未熟な状態であることを知っている人は自分がVRで何を重視しているのかを知っている人ですが、ほとんどの人はVRが実際にどういったものなのかも分かっていません。そうした人たちは、どの製品を選ぶべきかを判断できずにいます」
前向きな見方
セールは予定通り?
Oculus Riftのセールについては、ZeniMaxとの裁判やHTC Vive他のVRデバイスに比べて売れていないことからテコ入れを狙っているのではないかという意見もある。
しかし、Oculusはこの時期にセールを行う理由をVRでユーザが楽しめるコンテンツが揃ってきたためとしている。
Oculusを取り巻く状況が有利なものでないことは事実だが、母体としてFacebookがあることを考えると必要に迫られてOculus Riftの値下げを行ったわけではないのかもしれない。
新型VRデバイスの発売
Oculus自身が来年発売する予定のワイヤレスVRヘッドセットを気にしてRiftの購入を躊躇している消費者も居るだろう。だが、これまでに入っている情報からするとこの製品はRiftと競合するものではないようだ。
モバイルVRとハイエンドVRの間にあるスイートスポットを狙ったデバイスとされているが、200ドルという価格やPC不要の独立型であることを考えるとモバイルVR寄りの製品になるのではないだろうか。
Riftと直接競合しそうなのはSanta Cruzと呼ばれるワイヤレスVRヘッドセットの方だが、こちらについては発売時期に関する情報が無いままだ。
売上の増加
Oculus セット5万円の何が凄いって、VRカノジョの販売本数が倍近く伸びてた
— yunayuna64 @例の (@yunayuna64) 2017年7月11日
SuperDataのLlamasも認めていたように、セールによってOculus Riftの販売台数が伸びていることを思わせる情報もある。
発売直後にサーバがダウンするほどの人気となったVRゲーム『VRカノジョ』の販売本数が大きく伸びたというのだ。
VRカノジョは比較的高価なOculus RiftまたはHTC Viveでしかプレイできないため、今回のセールでOculus Riftと合わせて購入したユーザが多いとみられる。
VRカジノ利用者が増える?
カジノの情報を扱ったサイトでも、Oculus Riftのセールは好意的に受け止められているようだ。
実際にカジノを訪れずに利用できるオンラインカジノは人気のあるサービスで、いくつかのカジノはVRでもサービスを提供している。しかし、VRデバイスの価格がその利用者を増やす上での障壁となっている。
Oculus Riftが安価になることで、VRカジノを利用するユーザが増えることが期待される。VRカジノのユーザが増えれば、シンプルなポーカーだけでなくVRで遊べるビデオスロットの機種も増えるかもしれない。
悪い面も指摘されているOculusの値下げ戦略だが、業界全体に良い影響を与えていることも事実だ。
VRヘッドセットを所有するユーザが少ない現状では、ユーザを増やすことでVRコンテンツを制作する企業にもメリットがある。VRコンテンツの制作が盛んになればさらにユーザが増えるだろう。
Oculusのセールは、VR業界の成長を後押しするために働いてくれるだろうか。
参照元サイト名:MCV
URL:http://www.mcvuk.com/news/read/oculus-rift-price-cut-shows-a-lack-of-confidence-superdata/0184590
参照元サイト名:Comicbook.com
URL:http://comicbook.com/gaming/2017/07/12/virtual-reality-girlfriend-sales-double-oculus-rift-discount/
参照元サイト名:Casinopedia
URL:http://www.casinopedia.org/news/oculus-rift-price-cut-making-vr-casino-accessible
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