体験のリアルさを重視するVRに、よりリアルさをもたらす技術として最近注目を集めているのが、ハプティクス(触角)技術だ。
VR空間の中で触れたものの触感や、振動を再現するための技術であり、様々なデバイスや技術が研究、開発されている。
コーネル大学Organic Robotics Labが開発した”Omnipulse”は、ハプティクス、ひいてはVR体験の質をさらに進化させるものだ。
5月8から11日にかけてカリフォルニア州サンノゼで開催されたGTC2017にて発表、デモが披露された。
ナチュラルな触感を再現するゴムシート状デバイス
Omnipulseの特徴は、大きく3つに分けることができる。
ゴムシート状
Omnipulseはゴム製であり、シート状のデバイスだ。
シートには空気を送り込む空間が計12個内蔵されており、そこに空気圧を送り込む。
VRの映像に併せて、空気圧の量やそれを送り込む箇所を調節することによって、触感や振動を適切に再現する。
様々なデバイスに対応
Omnipulseはゴムシート状であるため、これをヘッドセットのコントローラーやグローブ、もしくは全身装着型のVRスーツに巻きつける形で使用する。
デモはHTC Viveのコントローラーに取り付けられ、NVIDIAの開発したアプリ”VR Funhouse“をプレイすることによって体験することが出来た。
ゴム製であるため身体にもフィットしやすく、他の触角デバイスのように重量や装着感を感じることがなく、VR内での触感をより自然なものに感じることができる。
また、コントローラーからグローブ、スーツ型デバイスなど、様々な形状のデバイスに装着することができるという柔軟性も、ゴムという素材ならではの強みだ。
リアルな触感を再現
現行の触覚フィードバックデバイスが再現する触感の多くは人工的に感じられ、自然さとリアルさの再現においてはまだ開発段階にある。
しかし、Omnipulseの最大の強みとも言えるのは、それが再現する触感の”Organic”さ、つまり、より自然でリアルな触感に近づく、という点にある。
VR Funhouseのプレイ中に体感する触感、たとえば銃を発射した時の反動、オブジェクトをハンマーで、もしくは手で叩いた時の衝撃、また水鉄砲を発射した時の微妙な感覚までもが、まるで現実世界でそれらを行なっている時に感じるかのように、リアルに再現することが可能だ。
コーネル大学Organic Robotics Labとは
Organic Robotics Labは、ロボット工学の研究をするコーネル大学内のラボだ。
生物を模したロボットの開発、ソフトセンサーおよびディスプレイの開発、先進的な機械生産の手法の研究をメインに開発・研究を行なっている。
ラボはRob Shepherd教授によって率いられ、皮膚や心臓など生体器官を人工的に再現する取り組みをしている。
ディスカバリーチャンネルで特集された、タコやイカなどの電界発光する皮膚を人工的に再現する取り組み。
柔軟素材で構成されたロボットが、歩いたり地面を這ったりと、自然の生物のような動きをする。
触角フィードバックで進化するVR体験
触角フィードバック技術については様々な企業や研究機関が開発しており、これまでにも様々なデバイスが発表されている。
EXOS
日本のスタートアップ企業イクシー(exiii)が手がけるEXOS(エクソス)は、SFチックなスタイリッシュなデザインが特徴のグローブ型の触角フィードバックデバイス。
内臓の角度センサーとモーターによってユーザーの手指に反力を加えることによって、実際にモノに触れているかのような感覚を再現する。
用途はVRに限らず、ロボットやドローンの操作、リハビリなどの幅広い活用を考慮した設計がされている。
現在、EXOSはまだ開発段階で、デベロッパーやパートナー企業向けの提供を検討しているとのこと。
シナスタジア・スーツ
PSVRソフト”Rez Infinite”の没入感あふれるVR体験を拡張するために開発された触角フィードバックデバイス。
全身装着型で、26個の振動素子を内臓しており、ゲームの進行に併せて位置や強弱に微妙な調整を施した振動が発生し、没入感を高める。
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視覚と聴覚によって大部分が成り立つ現行のVR体験に触覚が加われば、それはより没入感が高まり、現実世界での体験との差が縮まっていくだろう。
触角フィードバックはまだ開発が始まったばかりの段階であり、大きな可能性を感じさせる技術だ。
参照元:RoadtoVR
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