VRやARといった技術の普及は進みつつあるが、まだ多くの消費者や企業が一般的な技術としてそれらを受け入れる段階には至っていない。実際にVR体験をしたことがあるユーザはまだ少なく、企業がARアプリを使ったプロモーションを行えばそれ自体がニュースになるような状態だ。
GoogleはVRやARが普及すれば、小売業の世界に大きな変化をもたらすと考えている。
採用される技術
専用ARデバイスの利用
専用デバイスを使ってVR技術やAR技術の利用に取り組んでいる業界は幅広い。
建築現場や製造工場では、作業の手順や機器の温度といった情報を視界にAR表示できるスマートヘルメットが研究されている。まだ試作品の段階で単価が高いのが欠点だが、普及すれば作業効率を大きく上げることに繋がるかもしれない。
温度の表示は、潜在的なエラーの早期発見にも役立つはずだ。危険を早めに取り除けるようになれば、作業現場の安全性向上にも期待できる。
スマートフォンアプリの利用
スマートフォン用のARアプリを使うのも、一つの方法だ。
専用のデバイスを使う方法に比べ、スマートフォンを活用することでコストを下げられる。コストが下がれば業務用途での採用も勧めやすく、消費者向けコンテンツでも利用されやすくなるだろう。
Googleは先週、スマートフォン向けVRプラットフォームのDaydreamにARプラットフォームのTangoを組み込むと発表した。GoogleのDaydreamやTangoを使ったモバイルアプリは、小売業での利用が考えられている。
利用例
BMWやGapの例
この分野でARを活用する例としては、BMWがある。BMWのバーチャルショールームでは、アプリを通してその場にない自動車を見ることができた。
Googleはさらに衣料品メーカーのGapとの提携を発表している。同社のARアプリでは、GoogleのTangoテクノロジーを使ってスマートフォンのカメラに映る景色を分析する。そこに3Dレンダリングされた衣服を重ねて表示することで、あたかも実際に店舗を訪れてマネキンを見ているようなショッピング体験が可能になる。
このアプリは既に一部のデバイスに対応しており、対応デバイスは年内にさらに増える予定だ。ユーザは好きな角度から服の細部を調べ、サイズを変更して見え方を確認することができる。
スマートなオンラインショッピング
GoogleのVR製品を管理する監督を務めるAndrey Doronichevは、AR技術がオンラインショッピングをより快適にする未来について語った。Tangoテクノロジーがあれば、家具を購入するときに置く予定の場所を計測して候補の寸法と照らし合わせる作業が不要になるかもしれない。
「消費者は携帯電話の画面で商品の画像を見たいわけではなく、実際に部屋の中に家具を置いてみたいはずです。
ARに対応したブラウザでは、家具を置く予定の場所に収まるサイズの製品だけをピックアップして表示することが可能です」
AR対応のブラウザについては、ChromeVRが今年の夏にDaydreamプラットフォームで利用可能になるという。
ビジュアル・ポジショニングサービス
Googleが考えているのは、オンラインショッピングを快適にすることだけではない。ARを使うことで、実店舗での買い物も便利になる。
ビジュアル・ポジショニングサービスはその利用法の一例だ。VPSと略されるこのシステムは、スマートフォンのマップアプリが利用するGPSに似ている。
GPSでは、デバイスの現在位置を調べるために人工衛星とやり取りを行っている。VPSでは人工衛星を利用するのではなく、アプリが周囲の風景を認識してユーザを案内する。
小売店の店内で目当ての商品があるところへの道順を表示したり、博物館で特定の展示品がある場所を表示したりと、室内での利用に適したシステムだ。AR技術を使えばGPS以上の高い精度でユーザを導くことが可能となる。
GoogleはVRとARの両方で自社のプラットフォームを構築しており、そのそれぞれが小売業でも利用されるようになると考えているようだ。同社でバーチャルリアリティの分野を担当する代表者、Clay BavorはVRとARが対立する技術だという考えを否定している。
「VRはユーザを『どこにでも』連れて行ってくれます。ARはユーザのところへ『何でも』持ってきてくれます」
VRとARは並べて語られることが多いが、性質の異なる技術だ。未来の買い物には、どちらも欠かせない技術になるのかもしれない。
参照元サイト名:Silicon Valley Business Journal
URL:http://www.bizjournals.com/sanjose/news/2017/05/18/google-ar-vr-virtual-shopping-gap-bmw.html
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