リーダーとして周囲から認められるには何が必要か。周囲の共感を呼ぶにはどんな夢や理想を描くべきか。このとき目を向ける1つが「利他の心」です。自分ではなく周囲の幸せを最優先で考える姿勢がリーダーには必要です。リーダーとして具体的にどんな行動を心掛ければよいのかを考えます。【週刊SUZUKI #99】
リーダーとしての素養がある人は、周囲を巻き込む夢を持っています。周囲の仲間だけではなく、顧客や取引先からも「素敵な夢ですね」「これからの社会を背負う夢ですね」と言ってもらえるような夢を描いています。魅力的なリーダーであるかどうかは、その人がどんな夢を描いているかで決まるといっても過言ではありません。
では、周囲を巻き込む夢とは具体的にどんな夢を指すのでしょうか。何より求められるのは、利他の心です。つまり、自分より他人の幸せを思いやる姿勢が、魅力的な夢を描くためには不可欠です。「自分はこうしたい」「こんな自分になりたい」といった夢を持つリーダーに、周囲は魅力を感じません。自分の欲望を夢に落とし込むのではなく、自分に関わるすべての人が幸せになることを最優先に考えるべきです。こうした他人を思いやる気持ちを夢に落とし込めるようになったとき、周囲はあなたを認めるのです。一緒に仕事をしたいと思い、困ったときには支える存在となるのです。
利他の心を育むには、周囲の言動に目を向けることが大切です。仲間が何に困っているのか、顧客や取引先はどんな課題に直面しているのかを把握しようと努めるべきです。仲間に向けて「相談に乗るよ」と声を掛けたり、顧客などに「どんな課題を抱えていますか」と聞いたりして、相手を常に思いやります。もちろん自分の都合は後回しです。こうした姿勢を貫き通すことで、利他の心は育まれます。誰かと相対するときは、徹底的に「相手を最優先」という考えで振舞います。
相手がいなくても、社会に対して何ができるのかを考え、行動することでも利他の心を育めます。「何が社会課題として顕在化しつつあるのか」という問いを持ち続け、自分には何ができるのかを考えるようにします。社会課題を大きなテーマと捉えず、一人でも社会貢献できる取り組みを模索すべきです。環境破壊という世界的な課題に対し、ごみを拾うだけでも構いません。現状の課題に対して些細でも行動を起こすことが、利他の心には必要です。
あなたの周りにいる仲間は今、どんな課題を抱えているかを知っていますか。その課題に対し、あなたはどんな行動を起こしましたか。もし「仲間の課題を知らないし、何の行動さえ起こしてない」いう人がいたら、もっと利他の心を磨くべきです。徹底的に磨きこんでから描いた夢は、周囲を巻き込む魅力的な夢へと置き換わるのです。
筆者プロフィール
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。他に、日本オムニチャネル協会 会長、SBIホールディングス社外役員、東京都市大学特任教授を兼任。