人が成長するためには「今」に全力を注ぐことが大切です。目の前の仕事に集中することだけを考えるべきです。その姿勢が、仕事の課題を浮き彫りにするのです。ではなぜ、今に集中することで課題が見えるようになるのか。今と向き合う本質について考えます。【週刊SUZUKI #88】
人の価値は、どれだけ「今」に全力を注げるかで決まります。やらなければならないことを後回しにしたり、適当に済ませたりするような人の価値は低いと言わざるを得ません。周囲からの信用も当然得られません。
価値の高い人は、今の大切さを知っています。さらに、今に一所懸命取り組むと、「何が足りないか」「何が必要か」などといった課題が見えてくるのも知っています。これらの課題を解消することで仕事を前進させているのです。
逆に今に一所懸命取り組めない人には、課題が見えません。何が悪いのか、何が問題なのかを分からず、やみくもに仕事に取り組んでいるだけです。これでは仕事をスムーズに進められず、的外れなことをして後戻りすることさえ起こしかねません。
私もエンジニア時代のころは、目の前にある仕事にただ没頭していました。一所懸命取り組むことだけを考え、自身の全力を注いでいました。すると、「このプログラムでは、こんな問題が起こるかも」「このシステムでは、顧客が喜んでくれないかも」などの課題が自然と思い浮かぶようになったのです。あとはこれらの懸念を解消すべく、周囲や顧客に相談するだけ。課題の影響が広がる前に解決することで、仕事の効率性や生産性を一気に高められるようになりました。
「どうして」や「なぜ」などの疑問ばかり浮かぶ人は、今に全力を注いでいないかもしれません。もっと一所懸命に取り組めば、漠然とした疑問が具体的な課題になって見えてきます。何が問題なのか分からないまま突き進むのは、辛く大変な思いをするだけです。仕事を加速させるカギは、課題を迅速に見つけて解消できるかどうかです。このとき不可欠となる要素が、「今を一所懸命に取り組むこと」なのです。この要素を備えていれば、あなたは仕事で成果を出し、成長することができるのです。
筆者プロフィール
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。他に、日本オムニチャネル協会 会長、SBIホールディングス社外役員、東京都市大学特任教授を兼任。