東京都荒川区は、早い時期から教育におけるICT(情報通信技術)の活用に重きを置き、他の自治体に先駆けて学習者用端末を導入してきました。新たに選定されたChromebookは、児童生徒および教員の両者にとって大きな意味を持つ端末です。本記事では、荒川区がChromebookを選択した背景とその期待される影響について述べていきます。
従来の端末運用では、起動時間や動作の重さ、管理面での課題、そしてコスト面での負担が大きな問題となっていました。このため、荒川区教育委員会は、2023年初めから新たな端末導入の検討を開始し、3世代目の学習者用端末としてChromebookを選定しました。選定に際して特に重視されたのは、起動時間の速さや動作の速さ、セキュリティの堅牢さです。また、教員用端末としては、従来の校務系をノートPCで、学習系をタブレットPCでといった2台持ちの必要がなく、1台で完結できる端末が求められていました。
選定過程においては、他社製OSの端末も含めた実証試験が行われました。その結果、Chromebookが求められる性能を満たし、特にGoogle Workspace for Educationとの親和性の高さが決め手となりました。実際に導入を求める教員からの声もあり、Chromebookは子どもたちの学びを支える最適な選択とされました。
実証の結果、Chromebookの起動時間は従来端末に比べて格段に速くなり、小学校では91%、中学校では99%の児童生徒が使いやすくなったと評価しました。特に「とにかく起動が速くて驚いた」という声は多く寄せられ、動作の軽快さや、バッテリーの持続性の向上も高く評価されています。柳生氏は、この端末を通じて資産管理やユーザー管理が一元化されることに加え、情報流出リスクの低下も期待しています。
Chromebookの導入は、児童生徒一人一台の端末として2025年4月から始まり、教員用端末はそれに先駆けて2024年9月からの運用を予定しています。従来のタブレットPCはWi-Fi接続のみに限定されていましたが、ChromebookはLTE搭載の端末を採用することで、家庭や校外活動の場での利用が容易になります。これにより、家庭にWi-Fi環境がない子どもたちにとっても、スムーズな学習が可能になることが期待されています。
特に、ChromebookとGoogle Workspaceを組み合わせることで、シングルサインオン環境が強化され、使い勝手が向上すると見込まれています。また、Chromebookの導入に伴うコスト削減により、教育現場に役立つ施策やシステム、ツールに資金を充てる余裕も生まれます。
荒川区教育委員会は、Chromebookの導入を通じて個別最適な学習の実現を目指しています。具体的には、児童生徒が自分の進度に合わせて選択できるオンライン学習コンテンツを導入する予定です。これにより、家庭の経済状況にかかわらず、自分自身のペースで学ぶことが可能になります。また、教員の働き方改革においても、校務環境をVDI化し、Chromebook一台で校務環境や学習環境にアクセスできる仕組みを整えることで、セキュリティを確保しつつ効率的な働き方を促進します。
荒川区の取り組みは、教育ICT分野における先進的なモデルとして注目されています。このように、Chromebookの導入は単なる技術の更新に留まらず、学びの質を向上させ、教員の負担を軽減する新たな教育環境を形成する重要なステップとなることでしょう。荒川区は今後も、教育ICTの普及と深化を進めていくことで、次世代を担う子どもたちの未来を築いていくことが期待されます。
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執筆:DXマガジン編集部