リスキリングが企業の労働生産性向上に欠かせない要素として注目を集めている中、株式会社帝国データバンクの調査結果によれば、リスキリングに取り組んでいる企業はわずか8.9%であり、今後取り組む意欲を示す企業は17.2%にとどまることが明らかになりました。この結果から、全体の69.1%がリスキリングについて消極的であることが浮き彫りになっています。人手不足や市場の変化を背景に、企業はスキルの再教育を進める必要があると指摘されていますが、実際には多くの企業がその一歩を踏み出せずにいる状況です。
リスキリングとは、現職または新たな職業で求められるスキルを従業員に習得させる過程を指します。デジタル技術の進展やビジネス環境の変化に伴い、企業は必要なスキルを持つ人材を確保するために、この取り組みが求められています。しかし、調査結果からは「意味を理解できない」や「言葉も知らない」といった理由からリスキリングに対して消極的な企業も多いことが示されています。
特に大企業においてはリスキリングへの取り組みが進んでいる一方で、中小企業は7.7%、小規模企業は6.0%と明確な差が見られます。これは、リソース不足が大きな壁となっているためであり、時間やマンパワーを確保することが難しいという実情があります。多くの経営者が「やりたいことは山ほどあるが、人材不足が足を引っ張っている」と語る中、限られた数の従業員で日常業務をこなすことで精一杯の現状が、さらなるスキルアップを阻む要因となっています。
また、リスキリングを進めている企業からは、ただ取り組むだけではなく、従業員のモチベーションを維持することが大きな課題であるとの声が多く聞かれます。明確な目的や達成目標がないまま取り組んでも期待する成果は難しいという意見がある一方で、将来のスキル向上に対する意義を社員に理解させることが、取り組みの成功に繋がることも指摘されています。
リスキリングへの消極的な姿勢は、企業の競争力にも影響を与えかねない重要な問題です。デジタル化が進む今、求められるスキルも日々変化しているため、企業はそのニーズに応じた従業員の育成を進めなければ生き残れない厳しい状況に直面しています。人手不足を解消し、持続可能な成長を実現するためには、リスキリングは避けられない選択肢とないるでしょう。にもかかわらず、実際に取り組んでいる企業の割合がわずか8.9%であることは、その重要性がいかに認識されていないかを示しています。
企業は今後、リスキリングへの新たなアプローチを模索し、従業員が気軽にスキルを習得できる環境を整える必要があります。特に、政府の支援策や助成金などを上手に活用することで、企業規模や業種に関わらず、リスキリングの実施促進を図ることが求められます。それによって、企業の生産性を向上させるだけでなく、従業員のキャリアの向上や転職のリスクを抑える効果も期待できるでしょう。
リスキリングが求められるこの時代において、企業がどのように取り組んでいくかが、今後の成長性や競争力に大きく影響してくると言えます。
【関連リンク】
株式会社帝国データバンク
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執筆:熊谷仁樹