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タイで事業を始めて20年以上!異国で何度転んでも挑み続けた姿とは?


日本オムニチャネル協会の活動をサポートする役割を担う「フェロー」。各方面の専門家が集まり、会員に向けてさまざまな知見やアドバイスを提供しています。今回は、タイに滞在する海外フェローの一人であるKENKOPLUS CO., LTD. Managing Director(代表取締役) 栗原宏美氏に話を伺いました。タイで事業を展開することになったきっかけとは何だったのか。栗原氏の歩みと、異国の地での挑戦を掘り下げます。

タイで事業展開するも、軌道に乗らない日々

鈴木:栗原さんはタイ・バンコクで、KENKOPLUS CO., LTD.の代表取締役としてご活躍されています。百貨店やオンラインを通じて、日本のこだわり商品、特に寝具をタイ人向けに販売されていますが、現在に至るまでのご経歴を教えてください。

栗原:私がタイに来たのは21年前になります。短大を卒業した後、何をやってもしっくりこない20代を過ごしていました。そんなある日、タイの伊勢丹で「ひのき枕」の実演販売のアルバイトをする機会がありました。旅行も兼ねてという軽い気持ちだったのですが、実際にやってみたらすごく楽しかったんです。日本より、タイでの仕事に可能性を感じました。

鈴木:そのアルバイトが現在の事業の原点になったのですね。当時からタイでは、睡眠や健康への関心は高かったのでしょうか?

栗原:いえ、まったくありませんでした。健康意識は今ほど高くなく、「ひのき枕」を1個1万円ほどで売っていたのですが、全然売れませんでした。伊勢丹の担当者にも「もっと安くしないと売れない」と言われ、当時の社長が価格を7,500円くらいまで下げました。しかし、それでも厳しかったですね。伊勢丹の目の前にあるショッピングセンターでは、枕が100バーツ(当時の日本円で約300円)で売られており、価格差は歴然でした。

そのため、アルバイトが終わる際に社長から「タイ事業から撤退する」と言われました。それならば、いっそのこと私が引き継いでやってみようと決意し、タイで会社を設立しました。

鈴木:商品の価格が市場に合っていない中で、どのように事業を伸ばしていかれたのですか?

栗原:最初に価格を見直しました。当初は安くしていたのですが、これは続かないと感じ、思い切って1万円に戻し、さらに1万5,000円に上げました。すると当然ながら、ますます売れなくなりました。6カ月間はほとんど売れない状態で、1カ月の売上が3~5万円というレベルでした。

そこで、自分が売り場に立つのをやめる決断をしました。代わりにタイ人のスタッフを雇い、私はその人件費以上を稼ぐために、製造業の通訳アルバイトを始めました。すると、そのアルバイトを通じて、タイにある枕を製造している会社を知ることができたんです。その会社の女性社長が「伊勢丹に出店しているのであれば、うちの商品も売ってみたら?」と提案してくれました。正直、お金がなくて仕入れができないと伝えたところ、「欲しい分だけ持っていき、売れた分だけ支払いでいい」と言ってくれました。本当に気前の良いタイ人女性で、今でも感謝しています。

鈴木:それは、すごいご縁ですね。

栗原:そうやって商品ラインナップが増え、売り場も少しずつ広がって、お客様も徐々に増えていきました。ただ、それでも最初は1カ月で10万円に届くかどうかという売上でした。会社とアルバイトの両立は、しばらく続きました。

KENKOPLUS CO., LTD. Managing Director 栗原宏美氏

ビジネスのピンチを救ったデジタル

鈴木:転機となる出来事はあったのでしょうか?

栗原:日本の寝具などを販売する「ジャパニーズヘルシーフェア」というイベントを伊勢丹が開催したのが大きな転機となりました。起業家の集まりで出会った日本人コンサルタントの方を伊勢丹の担当者に紹介したところ、その2人で盛り上がり、「ジャパニーズヘルシーフェアをやりましょう」と話が進みました。私は完全に受け身で、「その方が主導してくれるんだろう」と思っていたのですが、実際には私が全体の運営を担うことになったのです。

かろうじて出展してくれる会社を見つけて、初めてフェアを開催しました。すると、そのフェアで売上が爆発的に伸びたんです。売り場にお客様が殺到し、伊勢丹の日本人スタッフも驚いて写真を撮っていました。タイの方々にとっても、日本人が集まっているのは珍しかったようで、たくさんの方が来てくれました。当時はちょうどタイの経済が右肩上がりで、人々が日本製品の品質や「健康」の重要性に関心を持ち始めた時期でもあり、時代の流れにもマッチしていたのだと思います。

鈴木:まさにタイミングがぴったりだったのですね。

栗原:そうですね。このフェアをきっかけに、常設売り場にも少しずつお客様が増えてきました。フェアを定期的に開催するようになってからは、タイのお客様から商品の問い合わせも増え、新商品の常設店を作ったり、タイで出店を希望する日本企業と百貨店の間で仲介役を務めたりするようになりました。

鈴木:順調に成長されたのですね。

栗原:しかし、2020年にまた大きな危機が訪れました。新型コロナウイルス感染症の影響が広がる中、伊勢丹が2020年8月に閉店するという話が出てきたのです。コロナショックと伊勢丹の閉店のショックが同時に来たかたちです。閉店までまだ数カ月あったので、その期間にオンラインの整備を急ピッチで進めました。もともとウェブサイトはありましたが、電話での問い合わせに対応する程度のものだったので、LINEで買い物ができる環境を一気に整備しました。

鈴木:それをやっていなかったら、かなり厳しかったのでは?

栗原:もう危機的というより、絶体絶命でした。

鈴木:オンラインを開拓したことで、商圏も広がったのでは?

栗原:そうですね。バンコクだけでなく、チェンマイやプーケットなど、遠方からのお客様も増えました。実店舗に来ていただいたり、リピートの際にオンラインで購入していただいたりと、まさにオムニチャネルを実現しています。現在では、リアルとオンラインの売上比率は6:4ですが、商品によって比率は異なります。たとえば超軽量バッグやヘアケア商品は、ライブコマースで非常に 売れます。タイ人スタッフがFacebookライブで販売すると、9割がオンラインでの売上になります。

サイアムパラゴンのデパートゾーン内4階にある「KENKO SHOP」

海外との交流も深める日本オムニチャネル協会

鈴木:日本オムニチャネル協会では、今年度から新設した「海外フェロー」として栗原さんにご参加いただいています。なぜ入会しようと思われたのですか?

栗原:「BtoC」や「OMO」などのキーワードが多く出てきた頃、書籍で勉強はしていたのですが、いまひとつ理解できずにいました。でも、この分野をやらなければ会社が危ないという危機感は強くあって、そんな時に「オムニチャネル」という言葉がスッと腹落ちしたんです。「足りない部分を学びたい」と思い、直感的に「これだ」と感じて入会しました。

鈴木:栗原さんは直感で動くタイプですね。それが的中するからすごいです。実際に入会して、勉強になったことや参考になったことはありますか。

栗原:「ロイヤルティマーケティング分科会」の活動は実際の事業に活かしています。当社はまさにロイヤルカスタマーによって成り立っている会社で、現在8000名のロイヤルカスタマーがいます。今後はそれを1万人、2万人へと拡大するため、マーケティングを強化していきたいと考えています。ロイヤルマーケティング分科会では、優良顧客やファンを定義し、ロイヤルカスタマーを増やすための施策立案や施策を可視化する方法などを体系的に学ぶことができます。まさに当社の課題を解消するのに役立っています。さらに、日本オムニチャネル協会の会員の方々がタイを視察した際に交流することができたことも、私にとっては大変貴重な経験でした。

鈴木:リアルな場で人と会い、刺激を受けることで、学びにつながるのだと思います。日本オムニチャネル協会は、まさにそういう場ですね。やる気があって勉強したい人が集まっているので、皆さん本当にパワフルです。私も 実際にタイに行って、バブルのような勢いがある国だと感じました。とにかく、あの明るさが好きです。

栗原:そうですね。タイ人は明るくて陽気ですね。会う人みんなニコニコしていますし、優しいです。そして、「人は人」という感覚があって、「こうでなければいけない」という固定観念が少ない気がします。「マイペンライ(大丈夫)」という言葉もありますが、その精神が根付いていると思います。

鈴木:ぜひタイから明るく陽気なオーラで、これからも一緒に盛り上げていきましょう!

栗原:引き続きよろしくお願いいたします!

日本オムニチャネル協会
https://omniassociation.com/

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