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テクノロジーを徹底活用した価値創出を目指す、J.フロント リテイリング林直孝氏が描く変革の姿


J.フロント リテイリングでデジタル戦略を統括する林直孝氏は、オムニチャネルの効果的な活用について語りました。林氏は、新卒でパルコに入社し、デジタルマーケティングの分野で多くの経験を積んだ後、現在のJ.フロント リテイリングで活動しています。彼はインターネットの可能性を早期に感じ、企業内のデジタル化を推進。接客におけるAIと人間の役割を明確にし、テクノロジーと人の協力による価値創出を目指しています。特に、生成AIの進化が近い将来のコンシェルジュ役を担う可能性を見据える一方で、人間だけが提供できる温かみや個別の体験の重要性を強調しました。また、日本オムニチャネル協会での活動が業界間の知識交流や新たな取り組みのヒントになることを期待しています。

日本オムニチャネル協会の活動をサポートする役割を担う「フェロー」。各方面の専門家が集まり様々な活動に取り組みます。今回はJ.フロント リテイリング デジタル戦略統括部長の林直孝氏に、オムニチャネル推進の極意について話を聞きました。テクノロジーを駆使して価値を生み出すには、周囲とどのように調和を取るべきか。AIではなく人が担わなければならない役割とは。経験談とともに林氏の思いに迫ります。

インターネットの原体験から社内公募に応募

鈴木:現在J.フロント リテイリングでグループのデジタル戦略統括部長として活躍される林さんですが、これまでの経歴を教えてください。

:新卒でパルコに入社しました。店舗で様々な仕事を経験し、その後、パルコ・シティ(現:パルコデジタルマーケティング)の社内公募に手を挙げ、約3年間立ち上げを経験しました。そこで、Eコマースに加え、メールプロモーションなども行い、Webサイトの制作受注営業からカスタマーサクセス、サイト運営支援など当時のデジタルマーケティング領域で様々な経験をしました。

鈴木:パルコ・シティの社内公募に手を挙げたきっかけは何ですか。

:1990年代の後半にインターネットの面白さを感じていました。まだインターネット通販が走り始めたくらいの時、大好きな海外のアメリカンフットボール選手の自伝の中古本を買ったことがあります。海を渡って手元に届いたとき、「インターネットってすごい」と感じました。自分の中でその体験が残っており、パルコ・シティでインターネットに関わる仕事ができると思い公募に手を挙げました。振り返えると、ネットバブルと呼ばれる時代にデジタルマーケティングを広く経験したことが今の業務につながる大きな転機だったと感じます。

その後パルコの店舗やEC事業部長として2度目のパルコ・シティ出向を経て、2012年にパルコの本部に戻り、オムニチャネル推進プロジェクトを実施しました。渋谷PARCOの建て替え時には、アプリを使った接客やIoTを活用した顧客行動の解析、VRやロボット接客の導入など、デジタルを活用して価値を創出していくことに取り組みました。これらの経験を活かし、現在はパルコや大丸松坂屋百貨店などの持株会社であるJ.フロント リテイリングでグループ各社のデジタル戦略を支える仕事をしています。

鈴木:J.フロント リテイリングへ転身後、感じる変化はありますか?

:これまでのショッピングセンターとは異なり、百貨店という業態での運営方法や顧客との接し方の違いを強く感じています。J.フロントリテイリングは大丸と松坂屋ホールディングスの経営統合によりスタートした共同持株会社です。歴史を紐解いていくと、江戸時代に創業し百貨店業態に変化する明治時代へ移行してからもずっと、1人ひとりのお客様に合わせたパーソナルな接客を徹底していました。そういったDNAが外商サービスなどに色濃く残っています。そのためパルコと比較して、「お客様に寄り添う」ことが源流であることを強く感じます。このようなパーソナライズされた接客の中で、どのようにテクノロジーを活用して価値を創出するかが、喫緊の課題となっています。

写真:J.フロント リテイリング デジタル戦略統括部長 林直孝氏

人とAIの調和

鈴木:私自身、パーソナライズされた接客を受けた際、「これをネットにのせることはできないか」と考えました。現在、生成AIの登場でそれが実現しつつあると感じています。

:これまで様々なテクノロジーを活用して接客を試みたことがありますが、技術の精度に課題があり、人間の接客には及ばないと感じていました。しかし、生成AIの登場によって、変化しつつあります。近い将来、コンシェルジュや寄り添うパートナーのような役割を生成AIが担うのではないかと考えています。

鈴木:人とAIの調和をどうするかがポイントですね。

:その通りです。どのようにAIを活用するかは多くの企業共通の課題となっています。しかし私は、ある経験からヒントをもらいました。毎日のように通うカフェでコーヒー買ってから出社するルーティンがあるのですが、いつからか店員さんが私を覚えてくれるようになりました。すると、私が入店すると注文前にコーヒーを淹れ始め、決済の準備をして、極力待ち時間をなくす接客をしてくれるようになったのです。そんなある日、店員さんがいつものコーヒーを渡してくれるときに、「今日はバレンタインですね」と言って笑顔でチョコを渡してくれました。その体験から、顔を認識してコーヒーを淹れて決済をすることはAIができるかもしれない。しかし、笑顔でチョコを渡すことは人間にしかできない、と気づきました。AIなどテクノロジーが進化しても変わらずに人が担うべき役割があるのではないかと感じます。

鈴木:最初の「思いつくところ」と最後の「お客様と接するところ」は人間が担うべきですが、その中間の作業はテクノロジーを駆使して代替できますね。すべてをAIなどに置き換えると、人は機械的な作業を前にと飽きを感じてしまうと思います。

:その通りだと思います。

業界を超えた議論で学びを集積

鈴木:ショッピングセンターから百貨店まで可能性が広がりますが、今後の展望を教えてください。

:グループとして統合したオムニチャネル推進を実施していきます。J.フロント リテイリングではグループ各社でアプリによる顧客との関係性づくりを進めていますが、現在は各社が別々にお客様との関係構築をするに留まっています。お客様の満足度をさらに引き上げるため、グループと接点のあるすべての情報を統合することでグループ各社共通のお客様を理解し、リアルとネットを融合させて全方位でお客様により良いサービスを提供できるような仕組みと体制を作るべきと考えます。

加えて当グループでは、2026年に愛知県名古屋市の栄エリアに誕生する新たな複合施設に商業施設を開業する予定です。周辺には松坂屋名古屋店や名古屋PARCO等があり、それらを起点として、我々の商業施設だけでなく栄というエリアの回遊を促していきたいと考えています。データを活用しながら街の活性化に貢献していきたいです。

鈴木:林さんはこれからも新たなテクノロジーを活用して価値を創出し続けていくのですね。

:そうありたいですね。日本オムニチャネル協会に参加している方々も様々なテクノロジーに関わってきた方が多くいると思います。特にフェローの皆さんは長年にわたって「オムニチャネル」というキーワードの中で活動してきた方々ばかりです。私にとって、そのような方々と議論し合える時間が何よりの財産になっています。

鈴木:日本オムニチャネル協会には様々なことに挑戦して失敗してきた人達がたくさんいます。こういう人達が集まり知恵が集まると何かが生まれるのではないかと感じています。

:私自身、様々なテクノロジーを導入し、たくさんの失敗も経験しました。しかし、その時に必ず学びがありました。日本オムニチャネル協会は、成功も失敗もさまざまな経験を積んだ人が集まって会話しています。そのような中で過去の経験を言語化していくと、これからの糧となる気づきに集積されていくと思います。

日本オムニチャネル協会は異業種の方々と交流し学び合いができる唯一無二の協会です。さらに色々な方が参画することでその良さを伸ばしていってほしいです。

鈴木:業界を超えた横のつながりが大事ですよね。将来の日本を考えて僕らができることをやらないといけないなと感じています。引き続きこれからもよろしくお願いします。


J.フロント リテイリング株式会社
https://www.j-front-retailing.com/

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