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インドのIT業界を支える最高機関「NASSCOM」の役割と支援実績とは【JOA海外視察レポート③】


日本オムニチャネル協会は、2024年10月にインドのバンガロールでIT業界視察ツアーを実施しました。「NASSCOM」を中心に、インドのプラットフォーム事情や強みを紹介。この視察では、デジタル施策「Aadhaar」や電子決済システム「UPI」の普及状況が明らかにされました。NASSCOMは国内ユニコーン企業や海外企業が集結するIT拠点として機能し、スタートアップ支援でも多くの成功を収めています。視察後、日本人駐在者との交流で、インドのビジネス機会や日本企業の進出の可能性に触れるとともに、中国企業の抑制が、日本企業のインド進出の余地となる可能性が示唆されました。この視察成果は、日本のDXやオムニチャネル化促進に向けた貴重な知見を得る機会となりました。

日本オムニチャネル協会は2024年10月、インドの視察ツアーを実施。バンガロールではインドのIT業界を支える「NASSCOM」を視察し、活動実績やインドのIT事情を深掘りしました。今回は「NASSCOM」の視察から見えるインド国内のプラットフォーム事情、さらにはインド駐在の日本人だからこそ感じるインドの強み、買い物事情などを紹介します。

インドのIT業界をけん引する「NASSCOM」の実態

バンガロールでTATAグループのタイタンなどを訪れた後、全国ソフトウェア・サービス企業協会「NASSCOM(National Association of Software and Services Companie、ナスコム)」を視察。日本オムニチャネル協会と同じ「協会」の取り組みを通じ、多くの学びを得ることができました。

ナスコムはインド国内に4つの拠点を構え、今回はバンガロールの所長から同協会の取り組みや、世界各国の要人がナスコムを訪問していること、ナスコムがインドのIT企業と世界の企業との橋渡し役になっていることなどを聞きました。さらにインド政府が推進するデジタル施策との取り組みも説明してもらいました。

特にインドのIT化の現状を詳しく解説してもらいました。インドは現在、DXを国策として進めています。例えば、前回(第2回)のレポートでも触れたインドの国民識別番号制度「Aadhaar(アーダール)」には12.9億人が登録。「eKYC」と呼ぶオンラインの本人確認サービスを使うことで、アーダール登録者は銀行口座を容易に開設できるなどの恩恵を受けられるようになっています。

同じく前回(第2回)のレポートで紹介した国営の電子決済システム「UPI」を経由すれば、手数料無料に加えて知らない人同士でもスマートフォンだけで送金できる仕組みも整備されています。こうした環境整備を背景に、インド国内では電子決済が広く浸透しているといいます。

さらに、日本の消費税に相当する「GST(Goods and Services Tax、商品サービス税)」には事業者ごとの識別符号が割り当てられ、事業者はGSTの申請業務を容易に済ませられるようになっているそうです。「ULIP(Unified Logistics Interface Platform、統一物流インターフェースプラットフォーム))という物流プラットフォームも整備。各省庁が利用する輸送関連システムを連携する仕組みとして、システムの円滑な相互利用を可能にしています。

小売業界に目を向けると、ここでもインド政府が主導する「ONDC(Open Network for digital Commerce)」と呼ぶプラットフォームが整備。1つのアプリケーションから、複数のECサイトの商品やサービスにアクセスできる環境が構築されています。

なお、ナスコムの拠点の4km圏内には、10億米ドルを超える国内ユニコーン110社の約半数が集結。関連する海外企業109社も集積していることから、ナスコム周辺はITの一大拠点として機能しているといいます。例えば、バンガロールのナスコムの近くには、「Farmthory」という規格外の農産物の廃棄ロス削減に取り組むスタートアップなど、ユニークな事業を打ち出す企業が珍しくないといいます。若さと情熱を持った多くの経営者が、ナスコムの周辺には集まっているのを実感しました。

ちなみにナスコムは中央政府、州政府、産業による非営利な連合体。そのため、スタートアップなどに直接投資することはありません。しかし、企業とスタートアップによる共創事業を550も成功に導いた実績があります。さらに、AIや量子コンピュータなどの高度な技術開発を進めるディープテックスタートアップを2500以上支援、113の特許申請をサポート、スタートアップのプロトタイプを380も生み出しているといいます。

日本オムニチャネル協会に関わる者として、ナスコムによる支援は多いに刺激を受けました。日本のDXにどう貢献していくのか、小売業界をはじめとする多くの業界のデジタル化やオムニチャネル化をどう促進させるのかの気づきを得る貴重な体験となりました。

図1:バンガロールにあるナスコムのオフィスの様子

インド駐在の日本人が感じるインドとは

ナスコムの視察後は、コーディネーターの丹治さんの紹介で、バンガロール在住の駐在日本人の方々と会食する機会をいただきました。インドでの買い物事情やネットサービスの状況など、利用者の立場から率直な感想を聞くことができました。

中でも印象的だったのは、「Zomato」などのクイックコマースサービスが浸透し、日用品などのほとんどはネット経由ですぐに届けてもらえるようになっているといいます。

一方、ビジネス面では日本企業がインドに進出する余地は十分あるのではといいます。背景には、インド政府による中国系企業の進出抑制があるそうです。他のアジア圏では多くの中国系企業が進出し、市場を席巻しているものの、インドに限ればそのような動きは必ずしも見られないといいます。

ちなみに、私たち視察ツアー一行がバンガロールの企業などを訪問したことは、日本とインドをつなぐ現地オンラインメディア「Asian Community News」で取り上げられました。メディアを運営するサンジーブさんによってニュースにしてもらいました。詳細は以下のリンクよりご覧ください。

「Japanese delegation of 23 young &experienced entrepreneurs, VCs on a week-long visit to India」
(若手および経験豊富な起業家、ベンチャーキャピタル23名からなる日本代表団が1週間のインド訪問を実施)
https://www.asiancommunitynews.com/japanese-delegation-of-23-young-experienced-entrepreneurs-vcs-on-a-week-long-visit-to-india/

図2:現地メディアに取り上げられる際に撮影した集合写真

第3回となるインドの視察レポートはここまで。第4回では、インド工科大学(IIT)デリー校を訪問したとき様子を紹介。インドの教育環境や学生たちの取り組みを深掘りします。さらに、学生たちとディスカッションも実施。インドの学生は先端技術をどう捉え、問題解決にどう活かそうと考えているのかにも迫ります。

【レポーター】

逸見光次郎
日本オムニチャネル協会 理事 

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日本オムニチャネル協会

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