消費者の購買行動を大きく変える契機となった「EC」。登場から現在に至るまで、どんな進化を遂げてきたのか。当時世界の最先端をいっていた、携帯電話におけるインターネットを活用したサービス。日本は世界にも類をみない独自の進化を遂げました。しかし突如、終焉を迎えることになります。なぜ終わりを迎えたのか。そして人々の生活にどのような影響を及ぼしたのか、第6回となる今回は、モバイル(ガラケー)ECの終焉と意義に迫ります。【連載第6回:ECの進化とシステムの変遷】
モバイル(ガラケー)ECの終焉と意義
日本の通信キャリアが先導した当時世界の最先端をいっていた、携帯電話におけるインターネットを活用したサービス。今までインターネットには接点のなかった多くの日本人に対して、その利便性を追求し多くの新興サービス・企業が隆盛を極め、世界にも類をみない独自の進化を遂げます。
しかし、2007年 AppleによるiPhoneの発売が状況を一変させます。2008年7月11日、ソフトバンクがiPhoneを発売し、モバイルインターネットの主役は、急速にスマートフォンへとシフトしていき、PCサイトとの互換性が高まります。それとともに、モバイルに特化したiモードなど携帯公式サイトの数多くは姿を消していくこととなります。
後に、日本オリジナルで進化した携帯はガラパゴス携帯、通称ガラケーと呼ばれ、iPhoneはじめとしたスマートフォンと分けて呼ばれるようになりました。 iモード誕生以前においては、日本においてインターネット利用人口は、マジョリティではありませんでした。iモードの誕生によって、若年層、女性層をはじめあらゆる顧客層に対して、時間場所(通勤通学など含む)を選ばないECが生まれました。 この、ユーザー購買行動の変化はやがて、オムニチャネル時代へとつながることになります。また、新たな顧客層に最適化された、「モバイルファースト」の設計思想も誕生し、今のスマートフォンサイトの設計に影響を与えています。
ガラケー時代の雄はその後明暗がわかれます。モバオクを運営したDeNAはモバイルゲーム事業(Mobage)へ展開し、ガラケーECの遺産を元手に新たな価値創造が行われた一方で変化に乗り遅れたインデックスなどの企業においては事業撤退していくこととなります。
日本のiモードは2000年前半、世界のトップを走っていました。脆弱な端末・通信環境において、最大限の工夫を凝らした斬新なサービスが提供されましたものの、携帯電話がパソコン化し、モバイルでの通信速度が劇的に進化していくイノベーションの前に衰退していくこととなります。
NTTドコモ、日本家電メーカーの影響力が大きかった2000年代前半に、国内市場の戦いに体力を奪われることなく、iモードおよび、ガラケーが世界展開されていたら今の日本IT産業のグローバルでのポジションは大きく変わっていたのではないでしょうか?

林雅也
株式会社ecbeing 代表取締役社長
日本オムニチャネル協会 専務理事
1997年、学生時代に株式会社ソフトクリエイトのパソコンショップで販売を行うとともに、インターネット通販の立ち上げに携わる。1999年にはECサイト構築パッケージ「ecbeing」の前身である「ec-shop」を開発し、事業を推進。2005年に大証ヘラクレス上場、2011年に東証一部上場へ寄与。2012年には株式会社ecbeingの代表取締役社長に就任。2018年、全農ECソリューションズ(株)取締役 JAタウンの運営およびふるさと納税支援事業を行う。2020年からは日本オムニチャネル協会の専務理事を務め、ECサイト構築パッケージecbeingの導入サイトは1600サイトを超える。