
NTTソノリティとNTTドコモビジネスは、JR東海が2026年度から順次導入を予定する東海道新幹線N700Sの上級クラス座席に、NTTが開発した「PSZ(パーソナライズドサウンドゾーン)」を実装すると発表しました。公共交通機関での採用は国内初となります。上級クラス座席は個室タイプが2026年10月にサービス開始し、半個室タイプは2027年度中に導入予定です。ヘッドレスト部にPSZ搭載スピーカーを組み込み、乗車中でも周囲に音漏れしにくいプライベートな音空間を提供します。利用者は自身のデバイスとワイヤレス接続することで、音楽や動画、オンライン会議などの音声を耳元に閉じ込めるように再生できます。ビジネスパーソンの打合せからプライバシーを重視する利用まで、多様なシーンでの活用を想定しています。
PSZ技術の仕組みと特長 音を閉じ込めながら音漏れを抑制
PSZは、NTTが特許を保有する音響技術で、特定の範囲に音を閉じ込めつつ周囲への音漏れを抑えることを目指します。原理としては、対象の音波に対し逆位相の波を重ね合わせることで打ち消し合う特性を応用し、「音を出す」と「音を打ち消す」を同時に実現します。これによりオープンな環境でも必要な範囲にのみ音を届けるプライベートな音空間が成立します。これまで同技術はNTTソノリティの音響ブランドであるnwmやcocoeのオープンイヤー型デバイスに搭載され、コンシューマー向けに展開されてきました。今回の取り組みは、こうした実装実績を公共交通機関に拡張する初のケースであり、移動中の体験価値を高める応用例として位置づけられます。なお、PSZはNTTコンピュータ&データサイエンス研究所が開発した技術です。
上級クラス座席での実装内容と利用シーン
導入されるのは、東海道新幹線N700Sの上級クラス座席における個室タイプと半個室タイプです。ヘッドレストにPSZ実装スピーカーを搭載し、スマートフォンなど個人のデバイスとワイヤレスで接続して使用します。耳元だけに音場を形成する狙いから、車内での音声コンテンツ鑑賞やリモート会議を周囲へ配慮しながら行えます。個室タイプは2026年10月にサービス開始予定で、半個室タイプは2027年度中の導入を見込みます。想定される利用層には、移動中もオンライン会議を行うビジネスパーソンや、プライバシーに配慮したい利用者、静かな環境でくつろぎたい利用者などが含まれます。車内の快適性維持と体験向上の両立を図る実装であり、席単位での音のパーソナライズを可能にします。
技術提供と実装体制 制御基板と音響設計を最適化
この取り組みでは、NTTドコモビジネスがPSZ技術のライセンス提供を担い、NTTソノリティが制御システム開発と音響設計コンサルティングを含む総合ソリューションを提供します。座席ヘッドレストという限られたスペースに合わせ、PSZの性能を引き出す専用処理基板を独自に開発します。さらに、個室内のスピーカー配置やユニット評価、座席表皮材の音響特性への影響まで検証し、鉄道車両特有の環境に適合させる設計最適化を行います。JR東海との連携のもとで車両環境における検証を重ね、技術的な実装可能性が確認されたことから、本導入が決定しました。公共交通機関内での運用を念頭に、周囲への音漏れ抑制と高音質の両立が図られています。
公共交通機関での初採用がもたらす波及効果と展開
国内の公共交通機関におけるPSZの採用は初の事例であり、移動空間における音の扱いを再定義する一歩とされています。イヤホンやヘッドホンを用いずに個別の音響空間を実現したことで、席ごとにパーソナルな体験を提供しながら、車内全体の静粛性維持に寄与する可能性が示されました。今回の新幹線での実装実績を起点として、鉄道に限らず多様な交通インフラや公共空間での展開が検討されています。移動時のエンタメ視聴やオンラインコミュニケーション、案内情報のパーソナライズなど、シーンごとの音の課題解決に向けたソリューションとして応用余地が広いことが強調されています。今後は各環境に応じた設計と運用の検証を進め、導入先の拡大が期待されます。
取り組みの位置づけと関係各社の役割
本取り組みは、NTTが保有するPSZの特許技術を核に、NTTソノリティが事業化を牽引し、NTTドコモビジネスがライセンス面を支える体制で推進されます。JR東海は東海道新幹線N700Sの上級クラス座席における実装の場を提供し、鉄道車両という特殊環境での検証と導入を進めてきました。コンシューマー製品で培った技術を公共交通機関へ拡張することで、公共空間の体験価値を高める狙いがあります。上級クラス座席の個室タイプと半個室タイプに合わせた音響設計が導入ロードマップ上に示されており、段階的なサービス開始が計画されています。今後の詳細や進捗は、関係各社からの案内に基づき情報が更新される見込みです。
詳しくは「NTTソノリティ株式会社」の公式ページまで。レポート/DXマガジン編集部
