
米アマゾンは1万4000人の人員削減を発表しました。アンディ・ジャシーCEOはその理由を「財務でもAIでもなく、カルチャー」と明言し、拡大に伴う階層化と現場の主体性低下を問題視しています。決算期の好調な業績を背景にした組織再編です。
ジャシーCEOが語った「カルチャー」の狙い
米アマゾンが今週発表した1万4000人規模の人員削減について、アンディ・ジャシーCEOは10月30日の決算説明会で「財務ではなくカルチャーが理由だ」と説明しました。ジャシー氏は、従業員数や拠点、事業領域の急速な拡大が組織の階層を増やし、現場で仕事をする人のオーナーシップ(主体性)が薄れる可能性を指摘しました。これがリーダーシップの意思決定を鈍らせ、機動性を損なう要因になっているという趣旨です。
同社の7〜9月期売上高は前年同期比13%増の約1,800億ドルに達しており、財務上の逼迫が直接の原因ではないことが明らかです。SEC(米証券取引委員会)への提出書類によれば、アマゾンの従業員数は2021年のピーク時に160万人を超え、その後昨年末時点で約150万人となっています。こうした規模変化が組織運営に影響を与えているため、同社は「世界最大のスタートアップ」のような機動力を維持する観点から階層を取り除く再編を進める意図を示しています。
一方で、今回の削減によりAIによる仕事の代替への懸念が広がっている点も会社側は認識しています。アマゾンは将来の効率化にAIを見据える姿勢を示しつつも、現時点で今回の削減の主因はカルチャーの立て直しであると明確に述べています。決算発表後、同社の株価は時間外取引で約13%上昇しており、市場が機動性回復への期待を示した側面があると見られます。
今回の発表は、組織規模の増大に伴う運営上の課題への対応として位置づけられます。会社側は財務悪化を削減の主因とせず、現時点でAIが主要因でないと説明しています。市場は発表後に株価上昇で反応しており、機動性回復への期待が一因と考えられます。削減の効果は、階層の解消と現場のオーナーシップ回復がどの程度実現されるかに依存します。今後は再編の具体的手法と従業員への説明フォローが観察ポイントになります。
