創業50年の総合食品メーカーは、子育て中の社員の悩みに応えるため、2025年の夏休み期間に「子連れ出勤制度」を試験的に導入しました。利用条件を設けず希望者が親子ともに出社できる形で実施され、複数日にわたり子どもとともに出社して通常業務にあたる社員がいる運用となりました。職場ではオフィス内にフリースペースを設け、子どもは原則としてそのフリースペースで自由に過ごすことができる体制を整えました。親は目の届く範囲で子どもを見守りつつ業務に戻れるため、過度な世話の負担が生じにくい運用が意図されました。また、お昼ご飯や休憩時間を子どもと一緒に過ごせることで安心感が高まり、結果的に業務への集中が阻害されることはなかったと報告されています。試験導入は地方企業の現場事情を踏まえた実践的な取り組みとして行われました。

オフィスのフリースペースは「見守りが効く」「遊びと学習が両立できる」場として位置づけられ、席の配置や動線、物品の配置や清掃ルールなど現場での細かな配慮が施されました。子どもが体調を崩した際の対応フローや、業務上の急な連絡フローも試験的に整備され、利用中に実効性が確認された運用が導入されました。子どもの遊びに協力してくれる社員の代表を募り、当日の役割分担を明確にするなど、実務面での合意形成が図られたことも特徴です。こうした現場の工夫により、多くの社員が安心して制度を利用できたという評価が得られました。試験期間中、業務の中断や生産性低下は最小限に抑えられたとの報告です。
試験導入後に集約した社員の声は概ね好評でした。「近くにこどもがいることで、気持ちがほがらかになる」「こどもがいる日といない日を比較しても業務の効率には大きな差はなかった」「仕事がやりづらいと感じる瞬間はなかった」といった意見が寄せられています。制度を利用した社員は「夏休み期間中は、学校にいる時間が短いため、こどもの過ごし方は、いつも以上に気になるし心配でした。今回、制度が導入されると聞いて、思い切って利用してみましたが、予想していた以上に安心感がありました。周りのみなさんへ迷惑がかかるかもとの心配もありましたが、温かく迎えていただき感謝しています。こどもには私の働く様子も見てもらえることができて自宅での会話も増えました。」と述べています。お子さまからは「ママの働く様子が見られてとても嬉しかったです。みんなが優しく遊んでくれて毎日楽しいです。会社にいると宿題もできるので、もう全部終わっちゃいました。休みの日はママとたくさん遊びたいです」との声があり、親子双方にとってプラスの経験になったことがうかがえます。
一方で改善要望も明確になりました。「人数が増えてきたらどう対応していくのか?」や「もっと遊べる環境整備も必要」といった意見が寄せられ、拡大時のキャパシティ管理や安全・衛生、プライバシーや業務機密の保護などの課題が示されました。今後の本格導入を検討するにあたっては、定員管理や予約制の導入、専用プレイルームの整備、一時保育との連携、社内保険や賠償責任の明確化といった制度面・物理面での整備が必要であるとされています。試験導入は現場での課題を洗い出す良い機会となり、段階的な制度設計によって持続可能な運用を目指す方針が示されています。
外部の調査データとしては、小学生の子どもを持つ共働き世帯の既婚者を対象にした調査で、67.3%が「お盆の時期を含む夏休み期間で子どもを預ける場所がなくて困ったことがある」と回答し、86.4%が「子連れ出勤すると、職場に迷惑がかかってしまうかもしれないという不安がある」と回答した一方で、85.2%が「職場に迷惑がかからない状況であれば、子連れ出勤を利用したい」と回答していることが紹介されています。これらの数値は、条件が整えば子連れ出勤が実需に応える選択肢になり得ることを示しています。今回の試験導入の結果を社内で共有し、制度の本格導入を検討する方針が示されており、社員が働きやすい職場づくりに向けた取り組みを継続していくとしています。
詳しくは「株式会社河鶴」の公式ページまで。
レポート/DXマガジン編集部小松