デジタルシフトウェーブは2025年5月7日、定例のセミナーを開催しました。今回のテーマは「まだ間に合う! 生成AI研修で新しい自分になる」。生成AIのトレンドを追うとともに、生成AIを使った業務活用の在り方について考察しました。
多くの企業で導入が進む生成AI。しかし、次から次へと新しい生成AIが登場する中、最新の動きに乗り遅れている人も少なくありません。進化し続ける生成AIのどこに着目し、どんな用途に活かすのが望ましいか…。そこで今回のセミナーでは、AIの動向にフォーカス。KINDLER 代表取締役CEOの門脇明日香氏をゲストに迎え、これまでのAIの変遷を振り返るとともに、自身のエンジニア経験や事業展開をもとに生成AIとの付き合い方、今求められる人材像について語りました。
AI活用がもたらす圧倒的な業務効率化
セミナー前半では、生成AIの実践的な活用例を紹介するとともに、KINDLERが開発・提供する「AIステップ」について解説。これは、問診やフェイススキャンなどの機能を通じて顧客情報を分析し、最適な提案やクロージング手法を導き出すAIエージェントです。導入事例の1つとして紹介された鍼灸サロンでは、従来6カ月かかっていた新人教育を1カ月に短縮。さらに、スタッフのクロージング成功率を20%から80%にまで引き上げる効果があったといいます。
SNS運用の業務効率化の事例も紹介しました。具体的には、フォロワー1000人獲得を目指すマーケティング施策をAIに任せたところ、企画からターゲット選定、クリエイティブ作成まで従来は数週間かかっていた工程がわずか30分で完了したといいます。しかも、ターゲットごとの収益性やリピート率の分析を踏まえた上で、最適な施策を提示することも可能だといいます。

さらに、AIによる動画生成も進化しています。モデルのような人物画像をMidjourneyで生成し、商品紹介用の映像もシナリオ・音声・編集までAIで自動生成できる時代になりました。KINDLERでは、こうした技術を駆使して広告用動画やAIアバターも制作。個人の受講者が自作のMVやアニメを制作する事例も多数生まれているそうです。
AI人材に求められるのは「ツールを使いこなす力」
では、こうしたAIツールを使いこなすために必要なスキルとは何でしょうか。門脇氏が強調したのは、「プログラミングができること」ではなく、「AIと会話できる力」、すなわちプロンプトエンジニアリングの重要性でした。
KINDLERが提供する研修では、動画によるインプットと実践的なアウトプットをセットで学べるよう設計されています。例えば、ChatGPT、Claude、Perplexityなど複数のAIツールを使い分けるスキルや、それぞれの得意分野を活かした実務的な活用方法を、短期間で習得できる内容となっています。講座の多くは12時間程度で修了可能で、個人のペースに合わせた受講が可能です。
また、法人向けにはリスキリング助成金の活用も可能で、最大75%が補助対象になります。社内人材の育成に取り組む企業では、AIの導入によって新規採用を減らし、既存社員の生産性を2倍・10倍に引き上げる事例もあるといいます。
生成AIの技術進化は著しく、ChatGPTの登場を皮切りに、さまざまな分野で高度な知的作業が自動化されつつあります。文章生成だけでなく、財務分析、契約書チェック、営業文書作成といった高度業務もAIで代替可能になりつつあり、もはや活用するか否かで業務効率に大きな差が生じる時代に突入しています。
生成AI時代にこそ問われる「人間力」
では、AIがここまで進化する中で、人間にしかできないこととは何なのでしょうか。門脇氏は、「想像力」「共感力」「リーダーシップ」がこれからの鍵になると指摘します。AIは過去データからの予測は得意ですが、「こんなサービスがあったらいいな」といった発想や、他者との関係性を築く力はまだ人間の領域にあります。
また、社内でのAI活用を成功させるには、個人が学ぶだけでなく、それを「教えられる人材」になることが求められるといいます。学んだ知識を周囲に共有し、チーム全体のリテラシーを底上げすることができれば、組織としての競争力が飛躍的に向上します。
セミナー後半では、「営業」「教育」「医療」「行政」など、従来は人間による判断が必要とされていた分野にもAI導入が進んでいることが紹介されました。たとえば、接客や教育においても、アバターや動画コンテンツを活用することで、人的リソースに依存しない新たな価値提供が可能になってきています。

一方で、AIが高度化すればするほど、「誰から教わるか」「誰と仕事をするか」といった人間関係の重要性が増すとも語られました。特にクリエイティブ職やマネジメント職では、AIが生み出したアウトプットをどう読み解き、どう価値に変換していくかというスキルが求められています。
門脇氏は、「AIがすべてを代替するわけではない。むしろ、人間が人間らしくいられる時間を取り戻すためにこそ、AIを使いこなすべきだ」と語ります。その言葉には、AIの進化を恐れるのではなく、それを理解し、共に成長する姿勢こそが新時代における成功の鍵であるという確信が込められていました。