starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

徹底した合理性と客観性を追求する「識学」、安藤社長が考える経営者の役割とは?


デジタルシフトウェーブの定例セミナーで、識学の安藤広大社長が登壇しました。識学は、組織運営に数学的なロジックを適用し、4年で上場を果たした急成長企業として注目されています。安藤氏は、組織運営には明確なルールと評価基準が必要と強調し、モチベーションを外部から与えるのではなく、内発的に高める環境作りの重要性を説きました。また、経営者は現場から離れ、組織が自律的に動くための仕組みを構築すべきとし、合理的かつ客観的な仕組みが持続可能な成長を実現すると述べました。

デジタルシフトウェーブは2025年2月6日、定例のセミナーを開催しました。今回のテーマは「社長がすべき仕事とは~創業4年で上場した識学~」。識学の安藤広大社長をゲストに迎え、同社の事業や経営戦略、さらには安藤社長が経営者として意識していること、気を付けていることなどに迫りました。

独自のマネジメント理論「識学」を駆使したコンサルティング事業を展開する識学。同社は創業からわずか4年で上場するなど、急成長する企業として注目を集めています。今回は、そんな同社の事業内容と経営戦略にフォーカス。

セミナーでは、同社の代表取締役社長である安藤広大氏がゲストとして登壇。安藤氏が識学の事業内容を説明するとともに、マネジメント理論「識学」の考え方や組織のあるべき姿についても解説しました。さらに、社長の果たすべき役割にも言及。現場に直接介入せず、組織全体が自律的に成果を上げるための「仕組みづくり」の必要性を訴えました。

組織運営の基盤となるマネジメント理論「識学」

安藤氏は、早稲田大学を卒業後にNTTドコモに入社。その後、携帯電話業界向けの人材派遣会社で取締役営業本部長を務め、部下の育成やマネジメントに従事します。その中で、モチベーションアップだけでは部下の成長を十分に促せないことに気付いたといいます。

さらに、2012年ごろに出会った「識学」のロジックが、大きな転機になったといいます。安藤氏は「数学や物理のような明確な論理と仕組みに基づく組織運営こそが、真に組織を変革し、正しい成果を生み出す鍵である」と実感。この考えを経営に取り入れる決意を固めました。

この転換を経て、2015年に安藤氏は自身の会社を設立。わずか4年で上場し、2025年現在では4600社を超える取引先を持つまでに成長しました。

安藤氏が提唱される識学とは、人間の意識構造や認識の過程を科学的に捉え、物事の正しい認識が行動にどのように影響するのかを体系化した学問です。組織では、各人が異なる背景や経験を持つため、同じ言葉や指示に対して認識のずれが生じ、誤解や錯覚を引き起こすことが多くなります。例えば、「お客様のために」という言葉を1つとっても、人によって意味するところが異なり、その結果、個々の行動に大きなズレが生じるのです。こうした誤解がもたらす衝突や無駄な議論、さらにはロスタイムの発生を防ぐためには、全社員が共通のルール認識のもとで働くことが必要であり、ルールを明確に定めることが組織運営の根幹になると安藤氏は考えます。

写真:識学 代表取締役社長 安藤広大氏

さらに安藤氏は、「部下のモチベーションを高めることが社長や上司の本来の仕事である」という考え方に疑問を呈します。むしろ、正しい仕組みが整えば部下は自ら成長し、結果として本来のモチベーションが自動的に生まれると主張します。

実際に安藤氏が実践する経営手法では、組織が一定のルールに基づいて自動的に動き、各社員が自分の役割と責任を明確に認識することを重視します。組織の仕組みは、全社的なルールの設定、組織図による役割と評価者の明確化、さらに定量的かつ厳格な評価制度や、内部に健全な競争環境を整えることによって実現するといいます。これらの要素は、単に社員を縛るための制約ではなく、全員が「組織の一員」としての意識を持ち、自己の成長と成果を実感できる土台となります。ルールは、基本的な姿勢や行動に関するものと、個々の能力に依存する行動規範との二層構造になっており、前者は誰でも守りやすく、後者は上司が適切に管理しながら部下の能力向上を促す仕組みとなっています。

評価制度については、明確な数値目標や定量的な評価基準が設定され、例えば「10キロを60分で走る」といった具体的な目標をもとに成果が客観的に判断される仕組みを導入しています。この完全結果主義のアプローチは、どのような取り組みをしても主観的な評価に頼らず、できなかった点については厳しくマイナス評価を下すことで、言い訳が通用しない環境を作り出します。恐怖という要素も、社員を苦しめるためではなく、自らの危機感を持たせ、現状維持ではなく常に向上心を持って業務に取り組むための自然な機能として活用しています。社員は、失敗すれば会社から必要とされなくなるという現実を認識し、結果として自己の成長に努めるようになるのです。

写真:セミナーのモデレーターを務めたデジタルシフトウェーブ 代表取締役社長 鈴木康弘氏

さらに、組織内で健全な競争環境を整えることも重要です。社員が自分の努力や成果が個人の利益だけでなく、組織全体の成功と直結していることを理解すれば、誰もが「頑張らざるを得ない」状況に追い込まれ、結果として組織全体のパフォーマンスが向上します。しかし、競争が成立するためには、ルールや評価基準が公正かつ明確である必要があり、上司と部下との適切な距離感を保つことで、恣意的なルール変更やえこひいきが疑われることなく、全員が同じ条件下で成果を競い合える環境が整えられます。こうした環境下では、各社員が自分の責任と役割を明確に理解し、組織全体が目標に向かって一体となって前進できるのです。

安藤氏は、社長やトップリーダーは現場に直接手を出すのではなく、組織が自動で動くための仕組みを構築することに専念すべきと説いています。「現場に口を出さず、仕組みで組織を動かすことが本当のリーダーシップである」(安藤氏)を自身の信念にしています。

仕組みがしっかり整えば、社員は自律的に動き、自己の成果に対して責任を持つようになります。その結果、トップは戦略の策定やマーケットの動向を常にチェックすることに専念でき、企業全体が持続的に成長する基盤が作られます。社員に外部からモチベーションを与えるのではなく、日々の業務の中で自己成長を実感し、成果が数字として現れる環境が整えば、自然と内発的なモチベーションが高まると考えられます。こうしたシステムが整った組織では、企業自体が社会から必要とされ、評価される存在となり、社員はその一員であることに誇りを感じ、結果として離職率が低下します。

セミナーで安藤氏は、従来の上司が部下を単に鼓舞するというマネジメント論とは一線を画し、論理的かつ定量的な仕組みづくりこそが真に組織を強固にするというメッセージを発信し続けました。「正しい仕組みを整えれば、自然と社員は成長し、結果が出る」という考え方は、現代の経営者に求められる新しいリーダーシップの形だといえます。急速に変化する競争環境の中で、企業が生き残り、持続的に成長するためには、社長自身が現場の細部にまで口を出すのではなく、組織全体が自律的に動くための仕組みを構築し、各社員が自己の成長と責任を自覚する環境を作り出すことが重要です。こうした取り組みは、単に業績の向上を目指すだけでなく、社員一人ひとりが成長を実感し、企業全体が社会から高く評価される結果へとつながります。「感情論に頼らず、合理的かつ客観的な仕組みを構築することが、持続可能な成長を実現する鍵だ」(安藤氏)という指摘は、多くの経営者や管理職にとって大きな示唆となるでしょう。

当日のセミナーの様子を動画で公開しています。ぜひご覧ください
    Loading...
    アクセスランキング
    game_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2025
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.