日本におけるリスキリングは、職業に必要な新たなスキルや知識を再教育するプロセスとして、特にデジタルの変革が進む中で企業に求められています。株式会社kubellが実施したリスキングに関する調査によれば、リスキリングの効果を実感する人が多い一方で、認知度がまだ十分でないことが明らかになりました。具体的には、リスキリングを知らないと答えた人は64.4%にのぼります。この状況は、技術革新のスピードが急速に進展している現代において、大きな課題となっています。
調査結果では、リスキリングを「知っている」と答えた人の中で「取り組みたいが実行できていない」と感じている人が多く、その理由の一つに「学習時間の確保が難しい」が挙げられています。この現状は、日本の労働市場においてスキルアップやキャリアアップを望む多くの人々が、制度や環境の欠如によって足かせを感じていることを意味します。
リスキリングを実施した結果、91.6%の人がキャリアへの好影響を実感していることも調査からわかりました。この結果は、リスキリングが単なるスキルの追加ではなく、キャリアの選択肢を広げる重要な要素であることを示唆しています。特に、リスキリングによって業務の幅が広がったと答えた人は38.9%に上り、昇給や昇格につながった人も多いことが明らかになりました。これにより、リスキリングが自己成長につながり、その結果、企業も恩恵を受ける可能性が高いことが確認できました。
日本の労働生産性がOECD加盟国中31位という低水準であることからも、リスキリングの推進は急務です。特に、DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展は、企業の競争力を高めるために必要不可欠です。今後、企業は従業員のスキル育成を目的とした制度や環境を整え、リスキリングの重要性を啓発する活動が求められます。さらに、政府も経済産業省を中心にリスキリング支援に力を入れており、国を挙げた取り組みが進められています。
リスキリングが今後ますます重要性を増す中、企業は従業員に必要なスキルを育成するための環境整備と制度設計が求められます。特に、デジタル人材の育成や専門知識の習得を目的とした教育プログラムの拡充は、競争力を維持するための鍵となるでしょう。日本の企業がリスキリングを通じて新たなビジネスチャンスをつかむためには、適切な教育の提供と意識改革が欠かせません。
執筆:熊谷仁樹