️スギ花粉症の犬で「トマトアレルギー」が起きた?

花粉症というと、人の病気というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし実際には、犬でもスギ花粉に反応して皮膚症状を起こすことがあります。
今回紹介する報告では、スギ花粉に対してアレルギー反応を示していた6歳の雑種犬が報告されています。この犬は、春から秋にかけて皮膚の赤みや脱毛、強いかゆみを繰り返しており、とくにスギ花粉の飛散時期に悪化していました。
さらに詳しく検査すると、この犬はスギ花粉だけでなく、トマトにもIgE抗体を持っていたことがわかりました。IgE抗体とは、アレルギー反応に深く関わる抗体です。つまり、この犬の体は「スギ花粉」と「トマト」の両方にアレルギーがあったということになります。
研究では実際にトマトを食べさせる試験も行われました。まず加熱処理されたトマトジュースを与えたところ、大きな変化はみられませんでした。しかし、その後に生のトマトを食べさせると、わずか15分ほどで大量のよだれ、口周りの腫れ、舌の震えなどの症状が現れました。さらに30分後には、お腹や耳に赤みとかゆみも出現しています。
この症状は、人で知られている「口腔アレルギー症候群」に似ていると考えられました。口腔アレルギー症候群とは、果物や野菜を食べたあとに口の周囲や口の中に違和感、腫れ、かゆみなどが起きるアレルギー反応です。人では花粉症との関連がよく知られていますが、犬でも同じような現象が起こる可能性が示されたのです。
️なぜスギ花粉でトマトに反応するの?

「スギ花粉なのに、なぜトマト?」と不思議に感じるかもしれません。
この背景には、「交差反応」と呼ばれる仕組みがあります。アレルギーは、体の免疫システムが特定のタンパク質を異物として認識することで起こります。そして、まったく別のものでも、タンパク質の構造が似ていると、体が同じ敵だと勘違いしてしまうことがあります。
人では、シラカバ花粉症の人がリンゴに反応したり、ブタクサ花粉症の人がメロンに反応したりすることが知られています。今回の報告では、犬でもスギ花粉とトマトの間に交差反応が起きている可能性が示されました。
研究では、スギ花粉に対するIgE抗体がトマトにも反応することが確認されています。つまり、この犬の免疫は、スギ花粉とトマトを似たものとして認識していたということです。
また、興味深い点として、加熱したトマトでは反応が弱かったことも報告されています。加熱によってアレルギーの原因となるタンパク質の構造が壊れ、免疫が反応しにくくなった可能性があります。これは人の口腔アレルギー症候群でもよく知られている特徴です。生の果物では症状が出るのに、加熱したジャムやソースでは症状が出ないケースがあるのです。
もちろん、上記は1症例の報告であり、「スギ花粉症の犬は必ずトマトアレルギーになる」というわけではありません。しかし、花粉症と食物反応が関係している可能性を示した点は、とても興味深い発見でした。
近年では、犬のアレルギー疾患についての研究も進み、単純な「食物アレルギー」「環境アレルギー」という分け方だけでは説明できないケースも増えてきています。特定の季節に悪化する犬や、食事を変えても改善しない犬では、こうした花粉との関連が隠れていることもあるかもしれません。
️愛犬が、食べ物でかゆがるときに考えたいこと

犬が食後にかゆがったり、顔を気にしたりすると、「食物アレルギーかもしれない」と考える飼い主さんは多いと思います。もちろんその可能性もありますが、実際には原因の特定は簡単ではありません。
食物アレルギーというと、「食べた直後に毎回症状が出る」とイメージされがちですが、実際には一時的というよりも慢性的なかゆみや外耳炎として現れることがよくあります。一方で、花粉やハウスダストなど環境アレルゲンが関与しているケースも非常に多く、両方が重なっている犬もいます。
今回の報告のように、「花粉症がある犬で、特定の食べ物に反応する」というケースも存在するため、単純に食べ物だけの問題と決めつけないことが大切です。
もし愛犬に次のような特徴がある場合は、一度獣医師に相談してみるとよいでしょう。
春先や秋など特定の季節にかゆみが悪化する、食後に口周りを気にする、生の野菜や果物を食べたあとに顔をかゆがる、耳やお腹が赤くなりやすい、といった変化は、アレルギーとの関連を考えるヒントになることがあります。
ただし、自己判断で極端な食事制限をするのはおすすめできません。アレルギーを疑って食材をどんどん除去してしまうと、栄養バランスが崩れるだけでなく、本当の原因がわからなくなることもあります。
また、トマトは一般的には犬に与えても問題ない食材とされています。すべての犬で危険というわけではなく、今回の症例は「特定の体質を持った犬」で起きた特殊な反応です。そのため、「トマトは絶対ダメ」と過度に心配する必要はありません。
大切なのは、「食後の変化」と「季節による悪化」をあわせて観察することです。皮膚病はひとつの原因だけで起こるとは限らず、花粉、体質、皮膚バリア、食事など複数の要素が重なっていることも多いからです。
長引くかゆみがある場合は、「ただの体質」と片付けず、原因を整理していくことが改善への近道になるかもしれません。
️まとめ

犬でも、スギ花粉症とトマトへのアレルギー反応が関係している可能性が報告されています。すべての犬に起こるわけではありませんが、「季節性のかゆみ」と「食後の症状」が重なる場合は、花粉と食べ物の意外なつながりが隠れているかもしれません。
*参考文献:M Fujimura et al., J Vet Med Sci. 2002 Nov;64(11):1069-70.
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