日本だけではない犬のうんち問題
日本における犬のうんち路上放置問題対策で話題になったのは、大阪府泉佐野市での環境美化推進条例とそれに伴うGメンの活動でしょう。2015年9月に、某ニュースサイトで「放置の現行犯に対して過料1万円を科す」という条例の内容と、市シルバー人材センターの会員により結成されたGメンによるパトロール活動の様子が報じられました。
しかし「現行犯」というハードルは高く、Gメンが活動する時間の前後や活動区域の少し外側で排泄をさせる人がいてイタチごっこだという内容でした。つまり、愛犬のうんちを放置させている飼い主は、「条例に違反している」ことを知った上で確信犯的にうんちを放置しているということです。
実は、この「うんち路上放置」問題は日本だけの問題ではありません。同じ記事には、スペインのマドリード近郊のブルネテという小さな街が行った「放置されたうんちを飼い主に宅配するキャンペーン」も紹介されていました。ボランティアがうんちを放置した飼い主に近づき世間話の体で犬種や名前を聞き出し、役所に登録されている犬のデータベースと突き合わせて「落とし物」と書かれた箱に放置うんちを入れて宅配するというものです。一時は70%も放置うんちが削減されたそうです。
また、パリでは糞吸引器付きバイクの導入や犬専用トイレスペースの設置など、20年以上も試行錯誤した上でたどり着いた結論が、当時35ユーロの罰金徴収の徹底だったそうです。
2021年にオーストラリアの動物用製薬会社が行った調査でも、犬の飼育数が増加するにつれうんち問題も顕著になっているという報告がありました。またこの調査では、うんちをした場所によって回収するかどうかを決める飼い主もいることが報告されています。
また2024年1月には、イタリア北部ボルツァーノ市などで愛犬のDNA登録を義務化し、放置されたうんちから飼い主を追跡するプロジェクトを始めるという記事も報じられています。放置した飼い主には50〜500ユーロの罰金が、愛犬のDNA鑑定を拒否した場合も292〜1048ユーロの罰金が科されるとのことです。
犬のうんちの路上放置がなくならない理由
マナーを守れない飼い主は、ごく一部の人でしょう。しかしごく一部の飼い主のせいで、その人の愛犬だけではなく、飼い犬全体を憎く思う人も生み出していることを知ってほしいと思います。しかしそう言い続けるだけでは、残念ながら現実の問題は改善しません。
前述の例を見ても、愛犬の排泄物を片付けずに放置する飼い主は、「マナー違反である」「不衛生である」「条例や法律に反している」ということを知っていながらも、放置していることがうかがえます。ただし、罰金徴収の徹底や放置したうんちの宅配などの措置により一時的にせよ効果が上がるということは、「見つからなければいい」と考えていることも推測できます。
罰金の有無は別として、散歩中の犬の排泄物の片付けを条例で義務化している自治体はたくさんありますし、軽犯罪法や廃棄物処理法という法律にも「鳥獣(動物)の死体その他の汚物」を放置したりみだりに廃棄したりすることは禁じられています。いずれの法律も、勾留または科料や懲役または罰金が科せられます。
とても残念なことではありますが、これらの法的な根拠を元に、海外の事例なども参考に、「積極的に放置した飼い主を特定する」ところまで踏み込まなければ、うんちの放置問題を解決することは難しいのかもしれません。
路上放置された犬のうんちが引き起こす衛生問題
最後に、犬のうんちを路上に放置することがなぜいけないことなのかについて、「不衛生」という面でぼんやりとしかご理解いただけていないかもしれない飼い主の方向けに、簡単に説明をしておきたいと思います。
犬のうんちには、サルモネラ菌、大腸菌、ジアルジア、寄生虫などを含めて複数の微生物が存在しています。これらの微生物の多くは、犬や猫をはじめとして人間にも下痢や嘔吐、発熱などの健康被害を与え得る病原体です。
また犬のうんちは、既存の抗生物質が効かなくなる耐性菌を生む温床となり得るとも考えられています。子どもも含め、人が放置された犬のうんちに触れてしまった場合、既存の抗生物質では治療できない細菌感染症を発症してしまうリスクが非常に高いのです。
直接うんちに触らなくても、放置されたうんちが雨水に流されて水質汚染を招き、そこから治療困難な感染症が広がっていく可能性もあります。路上に放置されているうんちは、単に「不衛生」とか「臭い」だけではなく、直接感染症の発生源となり得ることを十分にご理解いただきたいと思います。
なお、繰り返しおしっこをかけられた金属は腐食が早まります。散歩のたびに引っ掛けられた犬のおしっこが原因でカーブミラーが折れてしまい、通行人がケガをするなどの事故を引き起こします。おしっこに対する対処も必要だということを、併せて知っていただきたいと思います。
まとめ
排泄は生理現象です。出がけにトイレを済ませたのに、出先でどうしても尿意や便意を催してしまうことは、犬に限らず私たち人間にもよくあることです。散歩の途中でうんちやおしっこをしてしまう犬に、罪はありません。飼い主が、きちんと責任を持ってその場を片付け、汚れたペットシートやうんちを自宅に持ち帰れば良いのです。
ただし、愛犬が外でしかトイレをしないとお悩みの方は、根気よく室内での排泄トレーニングを続けてみてください。愛犬に、散歩の時間までトイレを我慢させることもなくなり、悪天候で外に出られない日の排泄も心配する必要がなくなります。愛犬が高齢になり思うように散歩に出られなくなっても、不自由なく排泄をさせられます。
外出前に必ず室内でトイレを済ませることを習慣づけられれば、散歩中に排泄してしまい、「見つからなければいいか…」といった出来心に惑わされることも減るはずです。
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