犬のアトピー性皮膚炎とは
犬のアトピー性皮膚炎とは、ダニや花粉など環境中のアレルゲンに対して、体が過剰な免疫反応を起こして皮膚に炎症や痒みが起こる疾患です。以下の3つの要因が関係していることがわかっています。
- 遺伝
- 免疫の異常
- 皮膚バリア機能低下
「親がアトピーであれば子もアトピーとなる確率が高くなる」ことから遺伝が関与していると言われています。
犬アトピー性皮膚炎では、IgEの産生異常やリンパ球の異常など、免疫系の異常が関与しています。このため、環境中のアレルゲンに対して、健常な犬では見られない免疫の過剰反応が起こり、かゆみや炎症につながります。
ただし、IgE産生異常を起こしていても、皮膚バリア機能が低下していなければアトピー性皮膚炎が起きないという報告もあります。つまり、遺伝により免疫の異常があり、そこに皮膚バリア機能の低下が加わることでアトピー性皮膚炎が起こるということです。
遺伝による要因は変えようがありませんが、免疫系を整えたり、皮膚のバリア機能を補ったりといったケアは可能です。記事の後半では、自宅で行えるケアについても解説します。
現在、選択可能な最新の治療薬
犬のアトピー性皮膚炎は、遺伝的な体質が関与しているため、基本的に完治するということが難しいです。
そこで、いかに皮膚のかゆみや炎症を抑えて、犬が不快な思いをせずに暮らしていけるかということが治療の目標になります。
近年、ステロイドに代わり、副作用を少なく長期的に使用でき、かゆみを強力に抑えてくれる薬が開発されています。
以下、代表的な治療薬を解説します。
分子標的薬 オクラシチニブ
かゆみを起こすシグナルIL-31などを伝えている主な経路をブロックするという薬です。
細胞内の特定の分子にのみ作用する分子標的薬であるため、ステロイド剤の内服に比べて全身の副作用が非常に少ない薬です。即効性があり、かゆみはステロイドに匹敵するレベルまで抑えてくれる薬です。
錠剤の内服薬になるため、基本的に毎日の投薬が必要です。
やや高価ですが、副作用も少なく効果的なので非常に良く用いられています。
欧米の犬アトピー性皮膚炎のガイドラインでも推奨されている薬になります。
抗体医薬 ロキベトマブ
上述のオクラシチニブはIL-31などを伝えている経路をブロックするお薬でしたが、ロキベトマブはIL-31のみをブロックする薬です。
オクラシチニブよりさらに限定的にかゆみに作用するので、より安全に使用できます。
こちらは注射薬で、1度の投与で1カ月間効果が持続します。
安全に一か月間かゆみを抑えてくれる薬です。
ステロイド外用剤
ステロイド外用剤は、内服のステロイド剤に比べて全身への副作用が少なく、さらに患部に直接塗布するため、局所で強力にかゆみや炎症を抑えてくれます。
近年は、アンテドラッグという、塗布した場所では強力に作用する一方、体内に吸収されると速やかに活性を失うように作られているステロイド外用剤も使われています。
つまり、塗った場所ではステロイドとしてかゆみや炎症を抑え、皮膚から体内に入る時にステロイドとしての働きを失って、全身への副作用が出ないように作られている薬です。
犬用のローションやスプレー剤がありますので、注射や内服薬と併用して用いることが出来ます。
免疫抑制剤
身体の異常な免疫の働きを抑える薬です。
ステロイドに比べて副作用が少なく、即効性はありませんが、数週間で効果があらわれます。アトピー性皮膚炎に対する効果はステロイドと同等です。
毎日の内服が基本ですが、症状が落ち着いてからは、投与の回数を減らすことができます。
減感作療法
減感作療法とは、アレルギー物質を少量ずつ投与して、体を慣らしアレルギー症状を和らげる治療法です。アトピー性皮膚炎の主なアレルゲンであるコナヒョウヒダニから分離されたDerf2という蛋白抗原を用いた製剤が犬用に発売されています。
こちらは注射での投薬になり、事前にアレルギー検査が必要となり、週1回の注射を6週間行います。注射に毎週通院する必要があり、副反応としてアレルギーを起こす可能性がありますが、唯一の根本治療になり得るというメリットがあります。
以上が犬アトピー性皮膚炎に対して用いられている主な治療薬になります。その他にも、保湿を行うことや、腸内環境を整えることがアトピー性皮膚炎の改善に効果があることがわかっています。
犬アトピー性皮膚炎に対して自宅でできるケア
犬のアトピー性皮膚炎の治療では、薬でのかゆみのコントロールに加えて、自宅での体内、体外へのケアも非常に重要です。
特に重要となるのが、皮膚の保湿と腸内環境の改善です。
犬アトピー性皮膚炎における保湿の重要性
アトピー性皮膚炎の犬においては、皮膚から失われる水分の量(経皮蒸散水分量)が増加していることがわかっています。つまり、皮膚が乾燥しやすくなっているのです。
また、私たち人間でも、経皮蒸散水分量の多い子どもはアトピー性皮膚炎になるリスクが数倍高くなるという報告があります。
このように、皮膚の乾燥がアトピー性皮膚炎と密接に関係しているので、保湿はとても大切です。
犬用の安全な保湿剤も発売されているので、かかりつけの動物病院で相談しながら、薬での治療に加えると良いでしょう。
保湿は毎日のケアが大切なので、愛犬も飼い主さんも続けやすいように取り組んでみてください。
犬アトピー性皮膚炎と腸内環境の関係
アトピー性皮膚炎の大きな要因のひとつが免疫の異常だとお話しました。実は免疫に関わる細胞の多くは腸の中にあることがわかっています。
また、腸内細菌が作る短鎖脂肪酸という物質にアレルギー反応を抑える効果があるという報告もあります。
このように、一見すると皮膚と関係なさそうな腸内環境が、実はアトピーで問題となる免疫異常に深く関わっており、腸内環境を整えることの重要性が見直されています。
腸内環境を整えるための犬用の製剤も多く開発されています。腸内の善玉菌を増やす作用があり、皮膚だけでなく、全身の健康に良いです。
また、フードの中に、オメガ脂肪酸などの皮膚の健康に良い成分が加えられているドッグフードもあります。
こちらも動物病院で相談しながら、愛犬に合ったものを取り入れていくと良いでしょう。
まとめ
今回は、犬アトピー性皮膚炎で現在使われている最近の治療薬と、自宅でできるケアとして保湿や腸内環境について簡単に解説しました。近年、副作用の少ない薬が選べるようになってきています。また、保湿や腸内環境が重要であることもわかってきていて、そのための製品も充実してきています。
アトピー性皮膚炎の治療は長期に及ぶことが多いので、かかりつけの動物病院で相談しながら、愛犬が気持ちよく生活できるようにサポートしてあげましょう。
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