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ドライフードと生肉食、犬の体への影響を比較した研究結果 アメリカの研究チームが発表


生肉食とドライフードが腸内代謝産物や炎症マーカーに与える影響を調査

ボウルに入ったドライフードと生肉食

犬に与える食事にはいろいろなタイプがあります。その中でも生の肉をベースにした食事は、多数派ではないものの根強い人気を保っています。

その理由には加工の工程が最小限であること、ドライフードに含まれるような添加物や保存料が含まれないことなどがあります。愛犬に生肉食を与えている人の多くは、生肉食が口腔の衛生や胃腸の疾患に良い影響を及ぼすと考えています。

一方で獣医師の多くは、ペットの生肉食に注意を促しています。生肉に含まれる細菌、それらの細菌が抗生物質に耐性を持っている可能性、栄養バランスの崩れなどがその主な理由です。生肉に含まれる抗生物質耐性菌や、犬の栄養問題については過去に複数の研究結果が報告されています。

このような状況を受けて、アメリカのオクラホマ州立大学とフロリダ大学の研究チームは、生肉食とドライフードが、犬の腸内の代謝産物と炎症マーカーにどのような影響を与えるかを評価する調査を行ない、その結果が発表されました。

1年以上生肉食またはドライフードを食べている犬たちが比較調査に参加

ボウルから食べているジャーマンシェパード

研究への参加者は地域の生肉ドッグフード協会、犬のイベント、動物病院、ソーシャルメディアなどを通して募集され、参加条件は1歳以上の健康な犬で、体重9kg以上、1年以上生肉食または市販のドライフードのみを与えられていることでした。

研究に参加したのは55頭で、うちドライフードを食べている犬が27頭、生肉食を食べている犬が28頭です。犬たちは準備期間と試験期間中は、決められた銘柄のドライフードまたは決められた銘柄の生肉食と、単一食材のトリーツ(ドライレバー)のみが与えられたといいます。

飼い主は給餌記録を記入するよう求められ、その報告から犬が摂取した個々のアミノ酸や脂肪酸を含む全ての栄養素が算出されました。また、犬たちは給餌試験開始前と試験開始後28日目に、獣医師による身体検査と血液や便などのサンプル採取を受けました。

便に含まれる各種抗体、微生物叢、代謝産物に明確な違い

フードの入ったボウルとサモエド

この研究では血液と便のサンプルから、便の微生物叢、メタボロミクス、炎症マーカーを解析しました。

メタボロミクスとは、生きるための活動の際に産出されるさまざまな代謝物を総合的に解析することで、生命活動を理解する試みです。炎症マーカーとは体内全体で起こっている炎症の程度を数値化したものです。

サンプルから算出された炎症マーカーは、抗酸化および抗炎症に関連する血清代謝産物を含む全身生の炎症マーカーは、ドライフードと生肉食の両グループで同程度でしたが、糞便中の腸内炎症マーカーは有意に異なる結果を示しました。

研究者は全身性の炎症マーカーと、糞便中の炎症マーカーの両者の違いには類似性があることを期待していたのですが、それは見出されませんでした。

これはバイオマーカーの感度が低いことに起因する可能性があるとして、次のステップではより感度の高いマーカーを含む、より長期間の研究を行なうことを予定しているとのことです。

また生肉食の犬では糞便中のIgA(感染から身を守る抗体)、IgG(過去に遭遇した細菌やウイルスから免疫系を守る抗体)、IAP(腸管保護抗体)のレベルが高いこともわかったそうです。

糞便中の微生物叢の組成は、両グループで大きく異なっていました。また血清中の代謝物についても両グループで異なっており、その大部分は2種類の食事の多量栄養素組成の違い(ドライフードでは、植物性炭水化物が多くタンパク質が少ない。生肉食では植物性炭水化物はほとんど含まれずタンパク質が多い。)を反映していました。

まとめ

生肉食のボウルとジャックラッセルテリア

普段から生肉食を食べている犬とドライフードを食べている犬の、グループの犬の血液と便サンプルを分析したところ、微生物叢の組成や血清中代謝物などについての違いが明らかになったという研究結果をご紹介しました。

また研究は、生肉食が糞便中のIgA(感染から身を守る抗体)、IgG(過去に遭遇した細菌やウイルスから免疫系を守る抗体)、IAP(腸管保護抗体)と関連することを初めて報告したものとなりました。

この研究結果が、犬の消化管内の恒常性や免疫機能に及ぼす影響を明確にし、生肉食およびドライフードが犬の健康に及ぼす長期的な影響を理解するためには、今後さらに研究が必要だとのことです。

この研究では2種の食事の違いを明らかにしたものの、どちらが良い悪いということには言及していません。両者ともに長所と短所があると考えられますが、今後さらに踏み込んだ研究でそれらが明らかになり、飼い主が対策を立てるための助けになることが期待されます。

《参考URL》
| https://doi.org/10.3389/fvets.2024.1328513


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