生肉給餌を中止した飼い主さんへのアンケート調査
『BARF(born and raw foodの頭文字)』などの呼び名で知られる犬への生肉給餌は根強い人気を保っています。愛犬に生肉を与えている飼い主さんの多くは、生肉食は「犬という種に適した自然なものである」という信念を持っていることが多いものです。
一方、犬に生肉を給餌することについての科学的な研究も数多く発表されています。これらの研究は生肉食を与えている場合の栄養バランス、食物と犬の排泄物中の病原菌、それら病原菌による感染や人獣共通感染症のリスクなどが主なもので、ほとんどの場合生肉給餌は推奨されていません。
生肉食についての研究において、栄養バランスの偏りや感染症などのリスクが強調されているにも関わらず、生肉給餌を継続する人は多くいます。
ドイツのルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンの獣医学の研究チームは「なぜ生肉を給餌するのか」という従来の質問方法とは視点を変えて、生肉給餌を中止した人にその理由を問うという調査を実施しました。
どうして生肉食を与えることを止めたのかに的を絞った質問
調査はアンケート形式で行われました。参加者は「過去に愛犬への生肉給餌を中止した飼い主」という条件で、ソーシャルメディアを通じて募集されたといいます。
質問内容は愛犬の年齢や犬種、性別や体重など一般的な情報の他に、以下のような質問が設定されていました。
- 過去に生肉給餌を選択した理由
- どのような知識を持って生肉の食事療法を行なったか
- 特定のコンセプトに従った給餌を行なったか
- 生肉給餌を中止した主な理由
- 生肉給餌を中止した追加の理由
生肉給餌を止めた理由の多くは胃腸の問題
寄せられた回答から、最終的に802件が有効なデータとして分析されました。
愛犬に生肉食を与えていた人が、それを止めた主な理由として挙げた上位3つは、「不耐性 24%」「犬の病気のため 20%」「犬が受け入れなかった 15%」。その他の理由では「準備がたいへん過ぎる」「高価すぎる」などがあったといいます。
追加の理由として挙げられた上位3つも、「不耐性 24%」「準備がたいへん過ぎる 23%」「病気のため 16%」とほぼ同じでした。
不耐性とは、その食物を摂った後に腹痛やガス、お腹がゴロゴロするなどの胃腸の症状が出ることです。疾患とまでは言えませんが不快な症状です。
2位の「犬の病気のため」と答えた人には具体的な疾患名が求められたのですが、疾患の中で目立って多かったのは消化器系疾患(炎症性腸疾患など)でした。
全体として37%の人が愛犬の胃腸の問題によって生肉給餌を中止しており、これは注目に値する点です。生肉食中止の理由の3分の1以上が、犬の胃腸への負担や胃腸の病気だったということだからです。
過去の研究では、生肉を食べている犬は市販のドッグフードを食べている犬と比較して、糞便中の微生物叢にディスバイオシス(微生物の分布の正常な割合が乱れた状態)の指数が高いことが報告されており、今回のアンケート調査の結果とも一致する点があります。
胃腸の問題に言及された犬のうち、生肉給餌を始める前に既に消化器疾患を持っていた犬は17%で、83%の犬は生肉を与え始めた後に消化器の症状や疾患を発症しました。
まとめ
以前は愛犬に生肉食を与えていたが現在は中止した人を対象に「なぜ生肉給餌を止めたのか」を調査した結果をご紹介しました。
生肉食を止めた理由の多くは胃腸に問題が起きたことによるもので、その他の理由も準備のたいへんさや値段の高さに言及していました。これは科学者や獣医師が感染症や栄養バランスの崩れを理由に生肉給餌をしないよう推奨していることと大きくズレていたことも、注目すべき点でした。
ちなみに細菌感染や栄養バランスへの不安から生肉給餌を中止した人は、どちらの全体の1%未満でした。
この調査結果は、今後獣医師が消化器に問題のある患犬を診る場合に「何を食べているのか」を詳細に聞き取ることや、生肉給餌についての指導の必要性を改めて強調したとも言えます。
《参考URL》
https://doi.org/10.3390/pets1010004
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