抗生物質を使わない初めての外耳炎治療薬
犬の外耳炎は、犬の病気の中では非常に多いもののひとつです。その原因として多いのが酵母様真菌(マラセチア菌)の繁殖によるもので、一般的にマラセチア性外耳炎(正確には酵母性外耳道炎)と呼ばれます。
マラセチア菌はもともとは犬の体に普通に存在している常在菌ですが、病中病後など何らかの理由でこの菌が繁殖してしまい炎症などを引き起こすことがあります。真菌が原因ですから、マラセチア性外耳炎の治療は抗生物質の点耳薬が一般的です。
このたびアメリカの政府機関である米国食品医薬品局は、酵母性外耳道炎の動物用医薬品を承認したと発表しました。当局によると、この薬は抗生物質を含まない初めての外耳炎治療薬でもあるとのことです。
新しい外耳炎治療薬の名前はデュオティック
この治療薬はイギリスに本社を置く製薬会社Dechra社がスポンサーで、薬の名前は「デュオティック」と言います。
テルビナフィンとベタメタゾン酢酸エステルという2つの有効成分の配合剤で、形状はジェル状だそうです。テルビナフィンは抗真菌薬で、人間の医療では水虫の治療によく使用され、ベタメタゾン酢酸エステルは抗炎症剤です。
デュオティックは資格のある獣医師からの処方でのみ入手が可能で、投与は獣医療の専門家が行なう必要があります。
獣医療専門家は初回の投与の前に外耳道を清潔にし乾燥させた上で、ひとつの耳につきチューブ1本の薬剤ジェルを投与し、7日後に再投与するとのことです。
ジェルは耳垢に浸透した後に、犬の耳の中で最大45日間マラセチア菌感染と闘うために作用します。そのため、初回の投与後45日間は外耳道の洗浄を行なってはいけないそうで、ジェルは少しずつゆっくりと排出されていきます。
デュオティックは犬や人間の目に入ると炎症を引き起こす可能性があります。犬は薬を投与された直後にブルブル頭を振ることが多いため、動物病院で薬剤を投与する際には目の保護具を着用し、頭の振りを最小限にするための保定が必要だと注意喚起されています。
日本ではまだあまり情報が入って来ていませんが
デュオティックは2024年3月15日にアメリカで承認されたばかりなので、日本にはまだあまり情報が入って来ていません。
従来の犬の外耳炎の治療薬は7日〜14日間程度で毎日点耳する必要がありますが、耳の中で炎症が起きて痒かったり痛かったりする場合、犬が攻撃的になってしまう場合もあり頭を悩ませる飼い主さんもいらっしゃることでしょう。
動物病院で2回投与した後は、自宅では何もする必要がないこの新しい治療薬は犬にとっても飼い主さんにとっても負担が少ないと言えるでしょう。また、抗生物質の使用を抑えることができるのも嬉しい点です。
犬の外耳炎は再発を繰り返す場合もあり、常在菌が異常に繁殖してしまう根本的な理由を治療しなくてはいけないケースもあります。
犬の耳から茶色っぽい耳垢がたくさん出ている、耳の中が強い臭いがする、犬がしきりに頭を振っているなどの症状が見られたら、すぐにかかりつけの動物病院で診察を受けてください。
まとめ
アメリカの食品医薬品局が抗生物質を含まない初めてのマラセチア性外耳炎の犬用治療薬「デュオティック」を承認したという話題をご紹介しました。
日本でも使用できるようになるのはまだ少し先のことになるかと思いますが。治療の選択肢が増える可能性は嬉しいですね。
《参考URL》
https://www.fda.gov/animal-veterinary/cvm-updates/fda-approves-treatment-yeast-ear-infections-dogs
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