犬の尿を使った新しいガンの診断方法
ガンは犬の死因の常に上位に来る病気です。また、犬種によって特定のガンに罹りやすい例もあります。どの犬種も加齢と共にガンのリスクが高くなっていくことから、犬と暮らす人にとって愛犬のガンの早期発見は重要な課題です。
しかし、血液や細胞を採取して検査し診断をするには、犬への負担や時間がかかるといったハードルがあります。そのために、ついつい診察や検査を先送りにしてしまうといったこともあり得ます。
このハードルを取り除くともいえる、新しいガンの検査方法が発表されました。この研究はアメリカのヴァージニア工科大学獣医学部、工学部、農学生命科学部とウェイクフォレスト大学医学部、ラムトリックス・テクノロジー社の研究チームによるものです。
新しい検査方法は、犬の尿を使った非侵襲的な(生体を傷つけず、身体に負担を与えない)もので、迅速に検査結果を得ることができます。
犬の腫瘍やガンのタンパク質を検査できるゲノム血液検査は現在3種類あるそうですが、尿を使った非侵襲的な検査はこれが初めてとのことです。
尿サンプルにレーザー照射をして化学分析
この研究では、犬に最も多く見られる種類のガンに焦点が当てられました。対象となったのは、リンパ腫、尿路上皮ガン、骨肉腫、肥満細胞腫の4種のガンです。
研究のための尿サンプルは、腫瘍性疾患に罹ったことがない犬89頭、ガンと診断された犬100頭、非腫瘍性尿路疾患または腎疾患と診断された犬16頭から採取されました。
これらの尿サンプルはラマン分光法を使って分析されました。ラマン分光法とは物質(この場合は尿)にレーザーを照射し、物質の表面から散乱される光を分析する化学分析技術です。
散乱された光によって、その物質に関する多くの情報が得られ、化学成分の同定、特性の解析、定量化(質的にしか表せないと考えられているものごとを数値で表すこと)に利用できます。
新しい検査方法は約90%の精度でガンを発見
ラマン分光法では、光を照射した物質の分子の振動情報を読み取ることができます。この情報は物質によって異なる特徴を持っているのですが、研究者はガンと診断された犬の尿には、ガンの存在を示す特徴的な「指紋」があることを発見しました。
ここで言う指紋とは、指紋から個人を特定できるように、物資の分子構造を高い精度で決定できる特徴のことを指します。
ラマン分光法を使った検査で、犬の尿サンプルがガンの指紋を示すかどうかを見分ける精度は90%以上でした。従来の血液検査の精度は約60%といいますから、これを大きく上回っています。
さらにそれだけでなく、尿サンプルを使った新しい検査方法は、犬がガンのマーカーを持っているかどうかが数分で判明するという大きなメリットもあります。
このスクリーニングの結果に基づいて、獣医師はさらに詳細な検査が必要かどうかを判断することができます。研究者は、この方法がガンを発見するだけでなく、治療に対する反応の評価や再発の評価にも使えるようになると考えています。
まとめ
犬の尿サンプルにレーザーを照射するラマン分光法という化学分析技術によって、犬が特定のガンのマーカーを持っているかどうかがわかるようになったという研究結果をご紹介しました。
この方法が一般的になれば、愛犬の健康診断の際にガン検診を気軽に受けられるようになり、ガンの早期発見につながることが期待されます。費用も従来の血液検査よりも低く抑えられるそうです。
今後さらに研究を進めることで、他の動物や人間への応用も視野に入れているとのことです。
《参考URL》
https://doi.org/10.3389/fvets.2024.1328058
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