犬は画面上の映像にどんな反応を示すかを調査
「愛犬のためのDVD」など、犬用の動画コンテンツは一般に市販されており、お留守番の際などに利用している方もいるかと思います。また犬のためにテレビをつけておいたり、テレビに映る映像に犬が反応した経験を持つ方も多いでしょう。
しかし意外なことに、動画コンテンツを視聴する犬の行動についての研究はほとんど行われていなかったそうです。
アメリカのウィスコンシン大学マディソン校獣医学部の研究チームは、犬がどのようなコンテンツに興味を示すのかを定義するための調査を行ない、その結果が発表されました。
犬に最もアピールするのは動物が動く映像
調査は一般の飼い主を対象に、ウェブベースのアンケートによって実施されました。質問項目には「あなたの愛犬は1日に何回くらいテレビや動画サイトなどのコンテンツと接していますか?」「あなたの愛犬が特に好きなコンテンツはどんなものですか?」などが含まれていました。
質問の最後には4種類のビデオが用意されており、飼い主は愛犬といっしょにそれを視聴し、愛犬の興味や反応を5段階の尺度での評価を求められました。4種類のビデオはそれぞれ犬、交通、ヒョウ、鳥が被写体になっており、犬の自然な目線に近い位置で撮影されたものです。
回答はアメリカの他にカナダ、イギリス、オーストラリアなどから寄せられ、最終的に1,246人がアンケート調査を完了しました。回答者のうち86%が「愛犬は少なくとも1日に1回は画面上の動画コンテンツと接している」と答えています。
集計された回答から、研究者が「興味深い」としたのは以下のような点でした。
- 高齢の犬は若い犬よりも画面への反応が弱い
- スポーティング犬種と牧畜犬種は他の犬種よりも全てのコンテンツをよく見ている
- 映像中の被写体の動きは、犬が画面に注意を向ける強い動機となる
- 動物のコンテンツは犬へのアピール度が高く、中でも犬を題材にしたものが人気がある
- 画面上のコンテンツへの犬の反応は「興奮」であることが多い
- 画面の中の人間は犬にとってはあまり魅力的ではないようである
犬は画面上で動いている動物に興味を示し、中でも犬が登場するものが圧倒的に人気があることがわかったとのことです。
犬が好きな映像を知ることの目的
この研究を率いているフレイア・モワット教授は、獣医眼科の専門医でもあります。モワット教授は犬の視力が時間(年齢)とともにどのように低下していくのか、またその要因は何なのかを研究しています。
研究のためには犬の視力を評価することが必要なのですが、現在のところは適切な視力測定ツールがありません。犬を迷路に導くテストがありますが、一般的に使うには時間とコストがかかり過ぎます。犬の目の前で手を振って反応を観察するテストは「見えているのか、いないのか」しか判断できません。
この調査でわかったように、どのような動画に対して犬が反応が示すのかを予測することができれば、加齢による犬の視力の変化をよりよく評価するためのテストを設計するのに役立つと考えられます。
人間にとって視力の低下が生活の質に悪影響を及ぼすことは容易に理解できますが、犬の場合は視力低下の影響が正確に評価できないため、実際のところ彼らの生活にどのくらいの影響があるのかもわかっていません。
犬の視力を評価するためのツールが開発されることで、犬の視力が低下した時に適切なサポートを提供できるようになると考えられます。
犬の視力が加齢とともに低下する経緯や要因を理解することは、人間に応用できる可能性もあります。家庭犬と人間は同じ環境で暮らしているので、犬の不健康な老化の危険因子を見つけることができれば、人間の不健康な老化の危険因子のこともわかるかもしれないからです。
まとめ
犬の視力評価に役立てるため、どんな動画コンテンツが犬にアピールするのかを調査したところ、画面の中で犬が動いている動画が最も人気があるという結果が出たことをご紹介しました。
動画に対する反応では「興奮する」という犬が多かったことから、お留守番の時に動く映像を流しておくことが適切かどうかの判断材料にもなりそうですね。
私たちは毎日いっしょに暮らしている犬のことを、よく知っているようでいて実はあんまりわかっていないのだなということを教えられる研究結果でもありました。
《参考URL》
https://doi.org/10.1016/j.applanim.2023.106151
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