皆様、あけましておめでとうございます。旬なアニメを紹介する「新作アニメ操作網」。昨年に続き本年も宜しくお付き合い戴ければ幸いです。
さて今回から2回に分け、2010年第4クールのテレビアニメを振り返りたいと思います。個別の番組へのコメントに入る前に、まず、2010年第4クールのテレビアニメに登場したパロディについてお話ししたいと思います。いつの時代のアニメも大なり小なりパロディを含んでいるものですが、2010年第4クールのアニメはとりわけパロディの量が厖大であったからです。作品とそれぞれのネタ元を個別に紹介いたします。
エンディングの画面の構図が『Gメン‘75』。また第9話「ハルカナオモイ」では『スパイ大作戦』風の劇伴が流れました。
第14話「トキメキ」に花澤香菜演じる図書委員が登場しましたが、その髪型は『文学少女』で花澤が演じた天野遠子にそっくりでした。
5BRIDGE*2に『ワンピース』『釣りキチ三平』のパロディが登場。
9BRIDGE*2では『未知との遭遇』風の劇伴や、『エースをねらえ!』の宗方コーチのパロディが登場。
12BRIDGE*2では『あしたのジョー』の両手ぶらり戦法が登場。
13BRIDGE*2では「右舷!絶望感薄いぞ!」という台詞が登場しましたが、これは『機動戦士ガンダム』のブライトの台詞のパロディですね。
能面ライダーのポーズが仮面ライダー1号。
また第5話Aパート「宇宙人じゃなイカ?」で『E.T.』の一場面を再現。
第9話Cパート「秘密兵器じゃなイカ?」で『犬神家の一族』の一場面を再現。
第12話では昭和29年版『ゴジラ』のラストで志村喬が言っていた台詞のパロディが登場しました。
第5話の次週予告で「女の子の一番大切なものをあげる」と言っていましたが、これは山口百恵の「ひと夏の経験」のパロディですね。
第5話「実に微妙な辰野トシ子」では『ウルトラQ』のタイトル画面風の字幕が登場。
第7話「愛のナイトウ避行」では「あの~犯人分かっちゃったんですポコ」という台詞が登場。『ケイゾク』のパロディです。また次週予告では松田旬作(声・千葉繁)が「時は21世紀!」と語っていましたが、これは『北斗の拳』のパロディですね。
第10話「穴ツッコミじいさん」では「これから9分16秒15フレーム、あなたの目はあなたの体を離れて、あなたの常識を遥かに超えた不思議な世界へ足を踏み入れてゆくのです。」というナレーションが語れられましたが、これは『ウルトラQ』で石坂浩二が語っていたナレーションのパロディです。
第7話「真夏のトライアングルラブ?」で「ポチッとな」という台詞が登場しましたが、これは『ヤッターマン』のパロディですね。
第32話「魔法運動会でドッキ☆ドキ!」で『2001年宇宙の旅』風のイメージ映像が登場。第34話「天秤にかけてドッキ☆ドキ!」ではとらのあなとアニメイト風の紙袋が登場。
第33話「ぷりぷりキューピッド☆ぷりっ!」に「涙は心の汗なの」という台詞が登場。
これは『われら青春!』に登場した台詞及び同作の主題歌「帰らざる日のために」のパロディです(「帰らざる日のために」は『そらのおとしものフォルテ』でも第7話エンディング主題歌として使用されています)。
第52話Aパート「パンプキンミントン!はじまるだっち」で『エースをねらえ!』のお蝶夫人のパロディと、『あしたのジョー』の「燃え尽きたぜ」のパロディが登場。第54話Bパート「たまごっちグランプリ!猛レース」は『チキチキマシン猛レース』のパロディ。
第3話「ドライヴ・マイ・カー/パーティーはそのままに」でのダンスの足取りがコナミコマンド。
第4話「今そこにある聖戦」では『ロッキー』風劇伴と『インディー・ジョーンズ』風(「レイダースマーチ」風)劇伴が流れました。
第9話「大きな壁の中と外」では仮面ライダーの変身効果音や、タイトーの『たけしの挑戦状』を模したテイトーの『かのんの挑戦状』というゲームソフトが登場。
第10話「あたしの中の……」では『ブラック・ジャック』のパロディが登場。
第1話「俺が妹と恋をするわけがない」では「ゲームパッケージ制作協力」として成人向けゲーム会社が大挙してクレジットされ、劇中で高坂桐乃(声・竹達彩奈)が持っていたゲームの中には、『桃華月憚』『あかね色に染まる坂』『最終兵器彼女』風の箱やら題名やらがあった他、実名で『School Days』『Summer Days』が登場しました。
第2話「俺が妹とオフ会に行くわけがない」では『コードギアス 反逆のルルーシュ』風のアニメ映像が登場。
第10話「俺の妹がこんなにコスプレなわけがない」には架空のゲームの設定資料集が何冊も出てきましたが、それは『月姫』『君が望む永遠』等のパロディでした。
登場する固有名詞の多くが探偵関係のパロディとなっています。
登場人物名は明智小五郎やシャーロック・ホームズ、アルセーヌ・ルパンらのパロディ(『名探偵コナン』のようなものだ)で、各話の副題も、第1話「屋根裏の入居者」(『屋根裏の散歩者』のパロディ)をはじめとして全話パロディです。
その他、劇中のパロディは以下の通り。
寮の名前・奇巌城はアルセーヌ・ルパンものの一篇。
第4話「バリツの秘密」では『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』風のメロディ、『ラピュタ』の台詞、『ルパン三世 カリオストロの城』の銭形幸一警部の台詞、更に『アンパンマン』のドキンちゃん、『ポケットモンスター』のピカチュウ、『フランダースの犬』のパトラッシュが登場しました。
第6話「王女の身代わり」では「普通の女の子に戻りたい」という台詞が登場しましたが、これはキャンディーズ解散時の発言ですね。
第7話「太陽のたわわむれ」ではまだらの紐パンなるものが登場。これはシャーロック・ホームズものの一篇「まだらの紐」のパロディです。
そして「おばあ様の名にかけて」という台詞は『金田一少年の事件簿』、「まるまるっとお見通しだ」という台詞は『トリック』、次週予告における「だっだーん!ぼよよんぼよよん」という台詞は栄養ドリンク・ダダンのコマーシャルのパロディですね。その他、実在した子供用コンピュータ・ぴゅう太が登場しました。
第8話「ボヨヨンの女」では『科学忍者隊ガッチャマン』の科学忍法火の鳥や、『マジンガーZ』アフロダイAのおっぱいミサイル風の技が登場。また、『竹取物語』に登場した宝物や皇室の三種の神器が登場しました。
第9話「MHの悲劇」では『志村けんのだいじょうぶだぁ』の人間ルーレットが登場。
第10話「ミルキィホームズには向かない職業」には仮面ライダー1号の変身ポーズが登場。
第12話(最終回)では『妖怪人間べム』の台詞や『サイボーグ009』の一場面の再現、そしてパン・アメリカン航空の元極東地区広報担当支配人・デビッド・ジョーンズ氏の物真似が登場しました。
オープニングタイトルバックも各話の副題も映画等のパロディとなっています。
OPは『雨に唄えば』『007』『未知との遭遇』等多くの映画の一場面を再現している他、第1話「セックス・アンド・ザ・アマーズ」は『セックス・アンド・ザ・シティ』
第2話「スキヤキ・ウエスタン・マツサカ」は『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』
第3話「魔法をかけられて」は『魔法にかけられて』
第4話「水族館で逢いましょう」は『有楽町で逢いましょう』
第5話「私はクラゲになりたい」は『私は貝になりたい』
第6話「ナイト・オブ・ザ・リビング・アマーズ」は『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』
第7話「金融無職列島」は『金融腐蝕列島』
第8話「ミリオンダラー・ベイビーズ」は『ミリオンダラー・ベイビー』
第9話「真夜中のチェリーボーイ」は「真夜中のシャドーボーイ」
第10話「愛とぬるま湯の日々」はそのものズバリ
第11話「ジェリーフィッシュ・オブ・ドリームス」は『フィールド・オブ・ドリームス』
のパロディとなっています。
第5話の劇中の台詞なんか完全に『私は貝になりたい』ですよね。
その他のパロディは以下の通り。第2話「スキヤキ・ウエスタン・マツサカ」では『大江戸捜査網』の「死して屍拾う者なし」という台詞が登場した他、『電撃!!ストラダ5』のDVDが登場。
第3話「魔法をかけられて」では『プロジェクトX』風のイメージ映像が登場。
第6話「ナイト・オブ・ザ・リビング・アマーズ」では『大改造!!劇的ビフォーアフター』風の場面が登場し、クララ(声・諸星すみれ)が「なんということでしょう!」という同番組のナレーションを語っていました。また根岸総理(声・千葉繁)が「おじゃまんが山田くん」などと言っていました。第7話「金融無職列島」では赤塚不二夫風の鬼の面が登場。
第11話(最終回)では昭和31年の映画『ビルマの竪琴』のパロディが登場しました。
前作に引き続き、エンディング主題歌は1970年代~1980年代の懐メロ。
第10話では『必殺』シリーズの1本『助け人走る』(『あそびにいくヨ!』にも出てきましたね)の主題歌「望郷の旅」をエンディング主題歌にしていましたが、頭蓋骨のレントゲン写真を映すという『必殺』シリーズのパロディをやっています。
また前作では副題で何度かウルトラシリーズのパロディをやっていますが、続篇でも踏襲。
第2話「驚愕!天使は馬鹿だった」は『ウルトラマンレオ』第40話「MAC全滅!円盤は生物だった!」(『君が主で執事が俺で』第7話もこれのパロディをやっていますね)、第3話「煩悩ある戦い」は『ウルトラセブン』第38話「勇気ある戦い」、第4話「死闘!零下1.4度の温泉」は『ウルトラセブン』第25話「零下140度の対決」、第5話「天界から来た超兄弟」は『ウルトラマン』第18話「遊星から来た兄弟」、第7話「西瓜喰います」は『怪奇大作戦』第25話「京都買います」のパロディでしょう。
劇中のパロディも多い第4話「死闘!零下1.4度の温泉」では、主人公・桜井智樹(声・保志総一朗)が武田信玄の恰好をしてクラスメイトから「お館様」と言われる場面がありますが、保志は『戦国BASARA』で武田信玄の部下役を演じ信玄を「お館様」と呼んでいました。
また同話後半では巨大雪だるまが智樹を鷲掴みにして壁に押し付けますが、この描写は『大魔神』を再現したものです。
第5話「天界から来た超兄弟」では、太平洋戦争中に米極東陸軍司令官のダグラス・マッカーサー大将(後に元帥)が日本陸軍第14軍(司令官=本間雅晴中将)の攻撃を受けてフィリピンから撤退した時の発言「アイ・シャル・リターン」や、『天空の城ラピュタ』風の光景、更に『電人ザボーガー』風のバイクが登場。
このバイクについて智樹は「俺が子供の頃から憧れていたヒーローの乗り物だっ!」とはしゃいでいます。
尚、千葉テレビの『そらのおとしものフォルテ』第5話とテレビ神奈川の『探偵オペラ ミルキィホームズ』第4話は裏番組であり、2局で同時に『ラピュタ』のパロディが登場するという事態が発生しました。
第10話「節穴世界(ファンタジーフィールド)を覗け!では「こんなこともあろうかと」という台詞が登場しましたが、これは『ウルトラマン』のイデ隊員や『宇宙戦艦ヤマト』の真田志郎が言っていた台詞です。
各話の副題は映画等のパロディとなっています。抜粋すると
第1話「仁義なき排泄」は『仁義なき戦い』
第2話「デスレース2010」は『デス・レース2000』
第4話「セックス・アンド・ザ・ダテンシティ」は『セックス・アンド・ザ・シティ』(『海月姫』第1話とも比較されたい)
第5話「キャットファイト・クラブ」は『ファイト・クラブ』
第9話「ハナムプトラ」は『ハムナプトラ』
第11話「悪魔のような女たち」は『悪魔のような女』
第12話「トランスホーム」は『トランスフォーマー』
第13話「現金に裸体を張れ」は『現金に体を張れ』
第14話「…オブ・ザ・デッド」は『ドーン・オブ・ザ・デッド』
第15話「一匹の怒れるゴースト」は『十二人の怒れる男』
第17話「ゴースト~ダテンシティの幻~」は『ゴースト ニューヨークの幻』
第16話「天使が水着にきがえたら」は『彼女が水着にきがえたら』
第19話「チャック・トゥ・ザ・フューチャー」は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』
第23話「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ガーターベルト」は『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』ですね。
また劇中においては、第7話「ダイエット・シンドローム」では『ロッキー』風劇伴と『スパイ大作戦』風劇伴が流れた他、『あしたのジョー』の力石徹の減量シーンを再現。
第12話「トランスホーム」では玄田哲章と加藤精三という配役やアイキャッチ等で『トランスフォーマー』を再現。
第15話「一匹の怒れるゴースト」の「異議あり!」という台詞は『逆転裁判』風でもあります。第22話「HELP!二人はエンジェル」にはビートルズ、プレスリー、キング・クリムゾン等の洋楽のパロディが大量に登場しました。最終回では『アルプスの少女ハイジ』風の劇伴が流れました。
初回放送は2005年ですが、毎日放送で再放送、東京MXテレビで5年遅れネットの本放送がされています。
本作の登場人物の多くは、政界関係者のパロディとなっています(この点は『School Days』と同様)。
吉田一美は吉田茂
池速人は池田勇人
佐藤啓作は佐藤榮作
田中栄太は田中角榮
緒方真竹は緒方竹虎
近衛史菜は近衞文麿
浅沼稲穂は淺沼稻次郎
西尾広子は西尾末廣
川上正太郎は河上丈太郎
濱口幸雄は濱口雄幸
斉藤隆代は齋藤隆夫
宇垣成子は宇垣一成
尾崎夕紀乃は尾崎行雄
このうちテレビアニメでレギュラー登場人物なのは吉田、池、佐藤、田中、緒方、近衛であり(但し近衛が登場するのは続篇である『灼眼のシャナⅡ』)、緒方竹虎、池田勇人、佐藤榮作、田中角榮は吉田茂率いる自由党のメンバーでした。
一方、吉田茂のライバルであった鳩山一郎率いる日本民主党のメンバーをモデルとした登場人物は『灼眼のシャナ』にはいません(因みに自由党は、吉田茂の後を継いで緒方竹虎が総裁を務めていた時代に、鳩山一郎率いる日本民主党と合併して自由民主党になります)。
『灼眼のシャナⅡ』では池速人が吉田一美に好意を告白する場面で吉田一美が傲慢な態度をとっていましたが、池田勇人は吉田茂の配下でしたので、史実の力関係がアニメの劇中の力関係に作用していたということでしょう。
余談になりますが、『灼眼のシャナ』の登場人物のモデルとなった政治家がオールスターで登場する映画が昭和58年の『小説吉田学校』です。
配役は吉田茂が森繁久彌、緒方竹虎が池部良、池田勇人が高橋悦史、佐藤榮作が竹脇無我、田中角榮が西郷輝彦(喋り方がまるで物真似芸人なのが面白い)、淺沼稻次郎が小池朝雄、河上丈太郎が庄司永建、齋藤隆夫が佐々木孝丸となっています。
元々はOVAですがBS11で放送されました。各話の副題は映画等の題名が多い。
第8話「激突」は1971年の映画、第9話「地獄変」は芥川龍之介の小説及び昭和44年の映画、第11話「かくて神風は吹く」は昭和19年の映画、第12話「天と地と」は海音寺潮五郎の小説及び昭和44年のNHK大河ドラマ、平成2年の映画です。
■ライター紹介
【コートク】
本連載の理念は、日本のコンテンツ産業の発展に微力ながら貢献するということです。基本的には現在放送中の深夜アニメを中心に当該番組の優れた点を顕彰し、作品の価値や意義を世に問うことを目的としていますが、時代的には戦前から現在まで、ジャンル的にはアニメ以外のコンテンツ作品にも目を向けるつもりでやって行きたいと思います。そして読者の皆さんと一緒に、日本のコンテンツ産業を盛り上げる一助となることができれば、これに勝る喜びはございません。Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By おたくま経済新聞編集部 | 記事元URL https://otakuma.net/archives/3929346.html