滋賀県草津市の観光物産協会の公式Xが投稿した「温泉ないまんじゅう」の告知が話題を集めています。
「温泉まんじゅう」ではなく、「温泉“ない”まんじゅう」。聞き慣れない名前の商品が生まれたのは、群馬県の草津温泉と間違えて、滋賀県の草津市にやってきてしまう人が後を絶たないことがきっかけでした。
■ 約400km離れている草津市と草津温泉
草津市。この地名を聞いたとき、どんな場所を思い浮かべますか?きっと、群馬県の草津温泉を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
しかし残念ながら、湯畑広がる草津温泉があるのは、群馬県吾妻郡草津町。草津市、ではありません。
草津市があるのは草津温泉から約400km離れた滋賀県南部。距離的には間違えようもないほど離れていますが、どちらも同じ「草津」ゆえに間違えてしまう人が頻繁に現れるのだとか。
草津市にせよ草津温泉にせよ「じゃない方」にたどり着いてしまえば、旅行の計画が総崩れになりかねません。
そんな状況に危機感を覚えた草津市観光物産協会は、間違える人を減らし、市の知名度を向上させるため、斬新な商品を生み出しました。
それが「温泉まんじゅう」ならぬ「温泉ないまんじゅう」です。
■ 「温泉ないまんじゅう」の告知がXでいいね1.4万件超の大反響「こういうのすき」
滋賀県草津市観光物産協会の公式Xが同商品について告知したポストはリポスト9000件超、いいね1.4万件超の大反響を呼んでいます。
「草津温泉に行きたい!」と滋賀県の草津市に間違えてお越しになるお客様が多く、申し訳ないので、「温泉ないまんじゅう」を作りました。
6月22日(日)より販売予定です。
温泉旅行の定番土産の逆をつく、斬新で自虐的なコンセプトのこのおまんじゅうには「発想の転換!」「こういうのすき」「この遊び心が好き」などと好意的な反応が続々。
また実際に「小さい頃は草津温泉は草津市にあると思ってた」「若い時はここが草津温泉と思ってた」「私も違う草津と勘違いしてた」といった声も集まっています。
ちなみに関東生まれ関東育ちで群馬草津しか知らなかった筆者も、今回の投稿を見て「草津って1つじゃないんだ」と衝撃を受けました。
観光物産協会の担当者の方によると、この「温泉ないまんじゅう」はイベント限定で販売される予定のもの。
詳しい販売日時・場所については公式SNSなどで随時告知されるとのことですが、直近では6月22日に大阪駅で行われる大阪・関西万博来場者向けのイベント「行こうぜ♪滋賀・びわ湖観光PRイベント」にて、限定10箱(2個入り)の販売が予定されています。
価格は2個入りで600円。将来的には1つ300円からの販売も予定しているそうです。
見た目は、白い皮に温泉マークが焼印された、シンプルな上用饅頭。しかしよく見ると、温泉マークの湯気の部分に「温泉ない」を強調するかのような斜線が。細かいながらも、強い主張を感じます。なお、中身はこしあんとのことです。
草津市と草津温泉。SNSでは「勘違いしていた」「間違えたことがある」といった声が多く寄せられていましたが、果たして実際にはどれくらいいるのでしょうか。また、間違えてきてしまった人は、どんな反応をするのでしょう。
そのあたりのことについて、観光物産協会の方に詳しくお話をうかがってみました。
■ 週に数件は問い合わせが来る……観光物産協会が見る「草津間違い」の実態
−− どういう経緯で「温泉ないまんじゅう」という自虐的なコンセプトの商品を売り出すことになったのでしょうか?
現在は温泉ないまんじゅうを含め、「温泉ないけどいいとこ草津」というキャッチフレーズでPRを行っていますが、そのきっかけは、草津市に関するアンケート調査を行った際に草津温泉と間違えて回答された方が多く、きちんとしたデータが収集できなかったことにあります。
それまでは軽く考えていた「草津間違い」が、実は大きな問題であることを認識しました。
−− 単なる自虐ネタでは済まない状況だったのですね
温泉ないまんじゅうの他にも、HPやパンフレット、SNS等で「温泉ないけどいいとこ草津」というキャッチコピーでの発信を行っております。少しでも多くの方が目に留めていただくことで、草津市の知名度向上に貢献できればと願っています。
−− 実際どれくらいの頻度で間違われる方が現れるのでしょうか?
週に数件はお問い合わせのお電話やメールがございます。
実際に間違えて来られる方もいらっしゃいます。中には台湾など海外からのお客様も間違えていらっしゃることがございました。
先週末も間違えていらしたご夫婦をボランティアガイドがご案内させていただきました。
−− 海外の方にはなおさら分かりづらいですね……間違えて訪れてしまった方は、どんな反応をされるのでしょうか?
皆さま驚かれて、謝られることが多いのですが、こちらのPR不足が原因ですので、弊社としても申し訳なく感じております。
−− 草津市に来た方に是非訪れていただきたい観光名所・名物などがございましたらぜひお聞かせください。
ファミリーにはびわ湖に突き出す烏丸半島エリアをお勧めいたします。
淡水魚専門の水族展示のある琵琶湖博物館や、モネも愛したハスが有名な水生植物公園みずの森がございます。道の駅草津も付近にあり、お買い物も楽しめます。また、湖岸ではキャンプやBBQもお楽しみいただけます。
歴史好きにおすすめしたいのが、草津宿本陣です。現存する中では最大級の本陣で、古くは新撰組や篤姫が訪れました。付近には草津宿街道交流館もあり、歴史に触れることができます。
−− 草津温泉と草津市を混同している(かもしれない)方に向けて、メッセージがあればお願いいたします。
草津温泉は観光地としても大変有名で、泉質主義にこだわる素晴らしい温泉地です。
そんな素敵な草津温泉はございませんが、草津市にも琵琶湖をはじめ、小さなお子様からお年を召した方まで楽しめるコンテンツがたくさんございます。
「温泉ないけどいいとこ草津」
ぜひお越しいただけますと幸いです。
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ちなみに「温泉ないまんじゅう」を売り出す草津市ですが、温泉がゼロというわけではないそうです。
担当の方によると市内には「草津湯元水春」「スーパーホテル滋賀草津国道1号沿」の2軒があるとのことでした。
もし近々「草津旅行」を計画している方がいたら、念の為、自分の目的地が「どっちの草津なのか」を確かめてみては。
<記事化協力>
滋賀県草津市観光物産協会(HP:kanko-kusatsu.com /X:@kusatsu_tourism)
(ヨシクラミク)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By YoshikuraMiku | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2025061701.html