コロナ禍以降から再ブームを迎えているカプセルトイ。大きめの商業施設や街に行けば、必ずと言っていいほど専門店があり、ふらっと立ち寄って回すことができます。
景品の内容は実にさまざま。おもちゃやキャラクターグッズだけではなく、なんと「指名手配犯の写真」まで登場しています。
■ 本物の指名手配犯のような、極悪人相の10人!SNSで話題の「指名手配ガチャ」
SNSで話題になっていた「指名手配ガチャ」は、その名の通り重要指名手配犯“風”の顔写真が景品。1回300円、全10種です。
手掛けているのは株式会社たきびファクトリーが運営するカプセルトイメーカー「奇人クラブ」です。
公式サイトを拝見すると「指名手配ガチャ」以外にも、「赤の他人の証明写真」や「赤の他人のニャンコの証明写真」など、斬新なコンセプトの商品が並んでいます。
最近はAI生成もありますからねー、と思いきや「証明写真」シリーズはAI未使用。全部実在する人・動物を使っているそう。しかも公募!知らない誰かが自分の証明写真データを所持している世界、面白すぎます。
そんなユニークな商品ラインナップの中から、今回取り上げるのが「指名手配ガチャ」。実在の手配犯ではなく、すべて架空のものとなっています。
■ 鍋島料市、石黒知玄、岸本雄太 3人の名前をそれぞれ検索してみると?
「この顔にピンときたら……めざせコンプリート!」の煽り文句に誘われて、令和のバウンティハンターになるべく、実際に回して来ました。
ユニークな商品が並ぶカプセルトイ自販機の中でも、特に異彩を放っていた「指名手配ガチャ」。
前面には本物の指名手配犯のような極悪人相の10人がズラり。添えられている容疑名も道路交通法違反から放火までさまざまです。さすがにこの人たちは生成AIだよね……?
コンプリートを目指したいのはやまやまですが、ほかにも指名手配犯が欲しい人はいるでしょうから、今回は3回にとどめました。
カプセルトイ自販機を回した後、その場での確認はせず、帰宅しました。
カプセルの中にはそれぞれ証明写真サイズの写真が1枚ずつ入っており、よくあるリーフレットなどはなし。容疑者の詳細なプロフィールなどが入っているのかと思っていたので、少し拍子抜けです。彼らの背景は自分で想像して楽しんで、ということかもしれません。
早速1つ目を開けますと、出てきたのは鍋島料市。
3〜50代くらいの男性で、容疑は銃刀法違反です。特徴的なのは色の濃い肌と、広い額。口元上部はヒゲに覆われています。目元が少し優しげですが、騙されてはいけません。こいつは(架空の)凶悪犯罪者なのですから。
鍋島料市という男は本当に存在しないのか?と思って名前で検索をかけてみたものの、もちろん実在はせず。
ただ同姓同名のキャラクターを発見しました。
「出来らぁっ!」「え!!同じ値段でステーキを!?」という見開きページがネットで愛されている料理漫画「スーパーくいしん坊」(原作/原案:牛次郎、漫画:ビッグ錠)をご存知でしょうか?
その作品の主人公・鍋島香介の父が鍋島料市という名前なのでした。これは……偶然?
2つ目を開けます。出てきたのは、水道損壊罪の石黒知玄です。
こちらも額が広く、やや面長の顔立ちの男性。年齢は3〜40代くらい。髪は黒で、限りなく坊主に近い短髪です。眩しそうに細められた両目は影で黒く塗り潰されており、非常に邪悪な気配を帯びています。
こちらも同姓同名の人物がいないか確認してみましたが、該当せず。石黒の場合は、フィクションのキャラクターにも見当たりませんでした。
ちなみに水道損壊罪というのは「公衆の飲料に供する浄水の水道を損壊する犯罪」のこと。刑法147条で規定されており、刑事罰は1年以上10年以下の懲役だそう。
最後のカプセルを開けると、出てきたのは岸本雄太。4〜50代くらいの男性で、1人だけモノクロ写真です。先の2人よりも古い時代の人なのかも知れません。
やはり額が広く、濡れ感のある黒髪を後ろに撫でつけたオールバックスタイルです。真っ直ぐ前を見つめる静かな眼差しと、口周りを覆うヒゲからはどこか芸術家っぽい雰囲気も感じます。
容疑は強盗。こちらも念の為、名前で検索をかけてみましたが、同一人物は存在せず。
今回ゲットした3人の指名手配犯はすべて架空の人物だと分かりましたが……。
最後の1人、岸本雄太を検索したときに、気になる個人ブログがヒットしたのです。
■ 実はとある映画の劇中アイテムだった「指名手配ガチャ」!まさかの伏線回収も
個人ブログの名前は伏せますが、そこに綴られていた内容をもとに、さらに詳しく調べてみたところ、こちらの「指名手配ガチャ」は、2023年に公開された映画「散歩屋ケンちゃん」に登場する、劇中アイテムの1つだということがわかりました。
映画「散歩屋ケンちゃん」は、石田純一さんといしだ壱成さんが親子初共演を果たした作品。
公式サイトのSTORYの項目を読むと、「何でも屋」として働く主人公・ケンちゃん(いしだ壱成)の仕事の1つに「ガチャ屋」があるので、そこで登場するのだと思われます。
そしてこの映画には紙芝居師役として、漫画家のビッグ錠さんが出演しています。この名前に、見覚えありませんか?
そうです。1人目の指名手配犯・鍋島料市を取り上げた際に触れた、「スーパーくいしん坊」を手掛けた漫画家なのです。
つまり、指名手配犯・鍋島料市と「スーパーくいしん坊」の登場人物・鍋島料市の名前が同じだったのは、偶然ではなく、制作サイドが仕込んだ小ネタなのでした。
さらに「指名手配ガチャ」に登場する全10人のうち、3人は「散歩屋ケンちゃん」のDVD制作のためのクラウドファンディングで権利を購入した方々。
つまりこの犯人たちの画像も、生成AIなどではなく、実在する人物のものが使用されているのでした。
今回ゲットした3人のうち、劇中に登場する「指名手配ガチャ」のラインナップにあったのは「鍋島料市」と「岸本雄太」の2人のみ。
残る1人、「石黒知玄」は含まれておらず、クラファンで権利を購入した一般の方の可能性が高いです。名前は当然別だと思いますが、罪状はスタッフ側が独断で当てはめたのかな……?
石黒知玄さん(仮名)を見て、「こいつ水道壊しそうな顔だな」と思った人がいるかもしれないってことですよね?
ちなみに「可能性が高い」と言葉を濁したのは、犯人のラインナップが、元のものと商品化されたものとで、微妙に犯人のラインナップが変わっており、入れ替わっている犯人が3人ではなく5人であるためです。
話題のカプセルトイを軽い気持ちで回して、調べてみたら、思わぬ伏線回収と発見!
久しぶりに記事を書きながらワクワクしました。
<参考・引用>
「奇人クラブ公式」HP
映画「散歩屋ケンちゃん」公式HP
映画「散歩屋ケンちゃん」公式X(@sanken_movie)
(ヨシクラミク)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By YoshikuraMiku | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2025021203.html