街中・街角など公共の場所に設置され、誰でも自由に弾ける「ストリートピアノ」。テレビやYouTube等で見かける機会も多く、今やすっかり音楽文化のひとつとして根付いた印象ですが、国内で初めて設置されたのは鹿児島県鹿児島市です。
もっと都心部かと思いきや、まさか九州最南端の鹿児島とは意外に感じる方が多いかもしれませんね。今回はその歴史を紐解くと共に、鹿児島在住の筆者が聖地巡礼してみることにしました。
■ 日本にストリートピアノがやってきたのは2011年
ストリートピアノは元々は海外が発祥。2008年にイギリスのバーミンガムで始まった「Play Me,I’m Yours」というストリートピアノプロジェクトで15台のピアノが設置されたことを皮切りに、世界中に広がっていったそうです。
そんなストリートピアノ文化が日本にやってきたのは2011年のこと。家庭などで使われなくなった古いピアノを調律して色鮮やかに装飾し、屋外で演奏するというピアノの第二の生き方を、「鹿児島の食と文化の情報発信交流拠点」を目指す鹿児島中央駅一番街商店街が、日本で初めて取り組んだことが始まりです。
「一番街商店街へのお客様や観光客の皆様をストリートピアノで心温まる『おもてなし』でお出迎し、いつでも誰でも気軽に商店街の中でピアノが弾けて楽しんでもらいたい」という狙い通り、この取り組みはその後全国的に広がっていきます。
子どもから大人まで、初心者から熟練者まで、誰でも分け隔てなく演奏でき、設置以来ピアノの音が奏でられることが日常的な光景に。2023年にはポップスピアニストの「ハラミちゃん」さんも訪れるなど、大きな注目を集めています。
■ 日本初のストリートピアノ、実際に見て触って来た
鹿児島中央駅一番街商店街は、その名の通り鹿児島の拠点駅である鹿児島中央駅のすぐそばにあります。筆者自身は今から20数年前、高校時代にはここをよく通っていたものですが、最近はめっきり訪れなくなっていました。
久しぶりに訪れる一番街はすっかり様変わりしましたが、老舗の生活用品のお店や美容院、県内各地の特産品販売店が並び、今もあの頃と変わらぬ活気に満ちあふれています。
当時に思いを馳せつつ、懐かしみながら歩いていると、アエールタワー1階のアエール広場にて、噂のストリートピアノを発見。通り側の目立つ場所に設置されているので、見落とすことはまずないでしょう。
カラフルに塗装されたピアノは、雰囲気たっぷり。設置から時間がたっていることもあり、さすがに全体としての古さは否めないものの、鍵盤はきれいな状態。日ごろのメンテナンスが行き届いていることや、地域の方に大切にされていることが感じられます。
ピアノの上部に置かれたPOPには、はっきりと「日本初ストリートピアノ」と書かれています。また「ラッキーピアノ」という名前も判明。演奏時間は一人30分で、17時以降は演奏できないといったルールも設けられています。
一通り写真を撮り終え、その場を離れると、初老の男性がピアノの元へ。鍵盤に手をかけ、ゆっくりと弾き始めました。ピアノは素人レベルの筆者でもわかるくらいに演奏が上手で、思わず足を止める方もちらほら。一番街が美しい音色に包まれていました。
きっと今までも、こうやってストリートピアノの文化がこの地に根付いてきたのでしょう。形あるものにはいつか終わりが来るものですが、日本初のストリートピアノが築き上げた歴史と、日常に音楽のある風景はいつまでもここに在り続けてほしいものです。
鹿児島中央駅西口から徒歩5分ほどでたどり着けますので、来鹿の折はぜひ鹿児島中央駅一番街のストリートピアノを見学、演奏してみてはいかがでしょうか。
<参考>
中央駅一番街IっDO(いっど)!公式Webサイト「ストリートピアノ」
(山口弘剛)
Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By 山口 弘剛 | 配信元URL:https://otakei.otakuma.net/archives/2024031303.html