最近は、それほど使わなくなってしまったであろうSNS「Facebook」。ただ、今でももっぱら経営者の間では使われているツールでもあり、日々誰に向けているのかわからない日記をシコシコ公開しているマメな方もいます。
そんな方が格好のターゲットとなってしまうであろう、「いかにも怪しい投資ビジネス」。今回はFacebookにたびたびでてくるそんな「怪しい投資ビジネスへの勧誘につながるであろう広告」にあえて釣られるとどうなるか?気になったので釣られてみました。
■ 投資ビジネスとは
投資ビジネスとは、事業へ投資することで利益をあげるビジネス。メジャーなもので言えば「株式投資」や「FX」など、誰でも一度は聞いたことがあるでしょう。
そもそも「投資ビジネス」自体は何ら違法性もなく、健全なものも多いのですが、問題視されているのが勧誘の仕方。
「今○○を買うと、数か月後には爆あがりして、収益が10倍になる、100万預けていたら1億円になる……」などというあやしい誘い文句で、お金を集めるものも存在しています。
いっとき芸能人の間でも仮想通貨や「○○コイン」などでも話題となりましたが、その後様々な形を変え、今もなおこのような怪しいビジネスははびこっているわけです。
そんな中、見つけてしまったのが今回の広告。一見何の変哲もない「蔦屋書店」?の広告ですが……。
実はこれ、蔦屋書店を運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下、CCC)に問い合わせると「私共のほうではそのような広告の出稿は行っておりません」との回答。
さてさて、さっそく怪しくなってきたぞ~。
■ 実在書店の名を騙り、人気書籍を餌につかって集客?
筆者が見つけた今回の偽広告には、子役時代から活躍をつづける某女優さんが使用されたものとなっていました。CCCが無関係といっているので、某女優さんの画像使用も勝手に使われているのでしょう。悪質極まりない。
広告の内容は「本の無料配信、LINE友達追加で受け取れます」というもの。実際に販売されている20万部突破の金融に関するベストセラー書籍をプレゼントしてくれるそうです。
「超限定で争奪戦!早い者勝ちの超お得セールです」という文言も掲載されていますが、CCCが出稿していない以上、この書籍の著者や出版社も無関係。お金、金融という注目ジャンルの人気書籍ということで「釣り餌」に使われているのでしょう。恐らく集客したい層も「金融」や「お金」に関心のある人たち。
この広告についてFacebook側を調べてみると、出稿した「偽蔦屋書店」のFacebookページはフォロワー数208人。少な!
そして過去の投稿を見てみると、Facebookページに投稿されている内容は、日本語ではなかったり、場所がイタリアになっていたりと、怪しい要素が満載。
どうやら元は美容院のFacebookページだったものを転用して、蔦屋書店になりすましているようです。
ちなみにこのFacebookページに書かれているURLをクリックすると、中国語でかかれた投資系の紹介ページに飛ばされました。もう蔦屋書店全く関係ない……。
■ 「偽蔦屋書店」の広告を踏んでみた……書籍のPRページに遷移
Facebookの調査はここまでにして、次に釣られてみるべく、広告をクリック!
すると現れたのは、「お気に入りの本をお選びください!」という文言とともに、実在する「お金に関する書籍」と「トレード」に関する書籍の2冊が紹介されているページ。広告に出てきた書籍タイトルと一致します。パッと見本当に本のPRページみたい……。
しかしながら、『先生のLINEを追加して、「優良株」をプレゼントと無料でライブ配信にご参加出来ます』というボタンが……めちゃくちゃ怪しい。
そして書籍プレゼントはどうなった?「優良株」をプレゼントのボタンはあるものの、書籍プレゼントボタンはありません……。なんじゃこりゃ。
ちなみにこのページ、編集部数人で確認したところ内1人のPCでは即座にアバスト(ウイルス対策ソフト)が立ち上がり「URL:Blacklist」という表示や「URL:Mal」という表示が出て閲覧できないそうです。これは「ブラックリストに登録されている場合に表示される検出名」。
しかも気になるのがアバスト側で表示されたURL。今回偽蔦屋のFacebook広告から飛ばされた飛び先は仮に「AというURL」だったとします。しかしアバストが検出したのは「BというURL」。そこでAのページのソースコードを見てみると……アバストが表示した「B」のURLが埋め込まれていました。ほほーん。何か仕込まれているみたいですね。
とりあえず、当初の目的「本を受け取る」べく行動をおこします。そのためには「LINE友達」を追加しなければならないので「LINE友達」を追加することに。ポチッ。
赤いボタンを押すと、「LINEアプリ」が起動し、友だち追加へ進みます。
LINEで該当アカウントを開いてみると……「誰!?」。知らんオッサンが出てきました。しかも「先生のLINEを追加して」とあったのに、先のページで紹介されていた2冊の本の著者でもありません。
何も知らなければ「誰このオッサン!?」となるところですが、この時点で筆者は既に、ハメられることは承知の上ですすめております。もちろんハメられるために準備万端、設備も整えて実行しております。一般の方がまねすると、ウィルスに感染させられたりアレコレ大変なので絶対に真似しないでください。
その後、友だち追加され見知らぬ方とやり取りすることになります。しかし、残念ながらこのオッサンは何を投稿しても「既読スルー」。全く反応してくれないので話になりません。一体何がしたいのか。
全く無視されたので調査はここで終了……といきたいところですが、2日あけて再度アカウントを見てみると……。今度は女性の写真と名前に変わっていました。マジであんた誰!?
■ 全く同じ内容の別の広告を踏んでみた
偽蔦屋書店の調査はあきらめて、別の広告を踏んでみることにします。お察しの通り、この手の広告は今無数にあり、次にサクッとみつかったのが蔦屋書店と同クラスの「某大手書店」を名乗るアカウント。もちろんこれも偽物です。
なお、広告の内容は先の「偽蔦屋書店」のものとほぼ同じ。プレゼント企画の内容も同じですが、紹介されている本は「お金に関する本」2冊。本自体も著者も前回の偽蔦屋書店のものとは異なります。どうやらお金や投資に関する人気書籍を、手当たり次第「釣り」の材料に使っているようです。
さて、ここからの流れですが「偽蔦屋書店」と同じなので割愛し、LINE友達を追加しコンタクトをとります。
すると今度は反応がありました。どうやら、セミナーを見てほしいとのこと。本のプレゼントはどこいったの!
とりあえず、若干興味はあったので、投資のセミナーを受けることにしました。今回に限らず、今はオンラインでセミナーを受けることができて、勝手に入退出可能。気軽に見られるのはとても便利。
■ 投資セミナーをみてみた
そして、時間がきてセミナーに参加。
セミナー内容はなんてことはない、よくある投資ビジネスに関するセミナー。内容はいたってマトモであり、なんら特筆すべき点はないので割愛。講師は非常に熱意がある、ある意味「真面目」なセミナーです。
しかしながらここまでの勧誘方法は、他社の法人名を騙り、LINEへ誘導し、本来目的のもの(書籍)をプレゼントさえしないので「詐欺だと断言」できます。セミナーに熱量があったとしても、詐欺は詐欺。空気にのまれて、その点忘れないようにする必要があります。
そしてセミナー後には、MacBookPROやAmazonギフト券4万円分などがあたる抽選会があるというので参加しようと思ったのですが、個人情報を求められたので、ここで離脱。今回の検証を終えることにしました。
一体何だったんだこの作業は。
■ 結論:本は貰えなかった・怪しいセミナーに参加させられた
今回の投資やお金に関する人気書籍を「釣り餌」にした広告は、蔦屋書店や他の人気書店になりすまし、さらには人気女優の写真まで勝手に使うという非常に悪質な広告でした。特に、本の出版社や著者にとっては大迷惑な話でしょう。「先生に会える」とおもってクリックする人だっているはずですから。
そして今回最終的にたどりついたセミナーは、某投資グループが行っているものでした。その後、グループの名称でさらなる調査を行ったところ、中国語で書かれた投資に関するページにこれまたたどりつきました(偽蔦屋書店のFacebookから誘導された中国語ページとはまた別のものです)。
では、結局のところこの広告の狙いは一体何なのか?
そのうちの一つはやはり「投資ビジネス」への勧誘だと考えます。もしくは「マニュアル商法」。もし投資だったとすれば数百万からのお金をだまし取られていたかもしれません。マニュアル商法だったとしても、数十万単位のお金が発生していたでしょう。
他にあり得るとすれば「情報収集」です。「LINE友だち追加を」させ、アカウントを収集し、最終的にアンケートを採り、個人情報を獲得。名前や年齢、電話番号といった個人情報を求められる。それら情報は会社経営やマーケティングで非常に重要なデータとなります。これが裏社会に流れたら?
もちろん、我々の知らないところで「それ以外の狙い」もあることは覚悟しておかなければなりません。いずれにせよ、「広告が可愛いから……」という「あからさま」な釣られ方をするのは絶対にやめたほうが良さそうですね。
【注意】
記事化を目的に潜入取材を行いましたが、絶対に真似はしないでください。編集部では、専用機材を用意し、セキュリティ面、やりとりをする担当者のメンタル面にも十分な注意を払い取り組んでいます。安易に真似をすると大変危険です。
(たまちゃん)