国産爪楊枝製造業者である「菊水産業株式会社」が8月21日、大手ショッピングサイトAmazonにて販売されている「しらかば楊枝 約300本入り」は「購入しても指定日には届かないので気を付けてほしい」と公式Xアカウントで注意を呼びかけました。
「しらかば楊枝 約300本入り」は9月下旬以降に再販予定の商品。菊水産業にも現在在庫がなく、再販へ向け準備を進めている最中でした。それがAmazonに商品登録をしようとしたところ、先に登録があることで事態が発覚。つまり他社により無在庫転売が行われかけていたのです。
■ 在庫がない状態にもかかわらず他業者が出品可能な仕組みに疑問
投稿によると、対象の販売ページは菊水産業の商品ページではあるものの、商品の「出荷元」「販売元」が菊水産業以外となっている、といった形。中には9月1日に発売予定としている業者も見られますが、在庫がないのにどうやって販売をしようとしているのか甚だ疑問です。
さらに、本来「しらかば楊枝 約300本入り」は550円(税込み)で販売されている商品。にも拘らず、これら業者の販売価格は1800円前後と、3倍以上の価格が付けられています。
これはつまり、菊水産業の在庫が復活次第、注文をうけた数を正規価格で購入し、高額で転売するという手口。しかしながら、菊水産業の末延社長の話によると不可解な点もあるそうです。
「それにしても、この転売者が出してた時点で在庫の復活が未定でした。発送予定が9月2~3日になってたので、絶対に届くわけないので転売というよりも詐欺に近い気がします。なので、この方法をしようとしてたのかどうか謎です。あきらかに不可能なので」
また、転売に加えてAmazonに先に登録されたことで別の問題も起きていました。Amazonの商品ページでは、相乗り出品(同じ商品を持っている人が同一ページから出品すること)ができる仕組みになっています。同じ商品をあつかう複数の販売業者がずらっと並ぶリストをみたことはないでしょうか?購入者はその中から、自分にあう条件の販売業者を選ぶことができるという仕組みです。
一方で、他と比較して極端に安い価格では登録できなくなっています。今回、菊水産業が登録を行おうとしたところ、在庫ゼロを狙って先に出品・購入された実績まであったために、1800円前後が「適正価格」と判断されてしまい、「低価格」を理由に「正規の価格」での登録が行えなかったといいます。
「Amazonで相乗り出品して、高額にしたうえで予約販売の体制を取って予約を取る。それで誰か購入していたら、その価格が適正だとシステムが判断して、正規の価格で出そうとしても、低価格すぎてポリシー違反で出品できないんです」「相乗り出品の転売は初めてだったんで、こんな事があるのかって驚きました」
■ 現在転売事業者は撤退済み ショッピングサイト利用時は価格・販売元の確認を
事態を重く見た菊水産業はこれにすぐに対処し、8月22日午後の時点で、高額転売を行っていた業者は撤退。
Amazonカスタマーセンターに相談を行った後、菊水産業からも直接転売事業者に働きかけ、さらにSNSの投稿を見た有志らがAmazonに通報したことも功を奏したようです。しかしながら、もしもこれに気付かなかったら……。いつまで経っても商品が届かない、と菊水産業側にクレームの連絡が相次いでいたかもしれません。
転売事業者は撤退したものの、正規販売元として定価販売の登録は現在も審査中と、今もなお尾を引いているそうです。正規価格の根拠として自社ECサイトにて急遽予約ページを用意し、Amazon側の対応待ちとなっているとのこと。
菊水産業ECサイトによると「しらかば楊枝 約300本入り」は550円(税込み)で、発送時期は2023年9月下旬から2023年10月上旬。安心安全に購入したい場合は、こちらで購入するのが確実でしょう。
一連の問題はもちろん、菊水産業だけに適用されることではなく、他の商品に対しても同じこと。転売が蔓延ることは、ある意味では人気がある商品だからということなのでしょうが、見逃されていいはずはありません。
利用者の多い大手ショッピングサイトとして、出品側にとっての販路として便利である一方、購入する側も「適正価格であるか」「出荷元・販売元が正規販売店であるか」といった確認が必要と言えるでしょう。
<記事化協力>
菊水産業株式会社公式Xアカウント(@kikusui_sangyo)
(山口弘剛)