登山の世界で古くから問題になっているのが、登山者による「踏み跡」。これは登山道ではない場所を登山者が歩くことで、そこに生えていた植物が踏み荒らされて枯れてしまうことです。
丹沢を中心とした自然再生に取り組んでいる神奈川県自然環境保全センターの公式Twitterは5月18日、「踏み跡」問題について警鐘を鳴らしました。
■ 数年前塞いだにもかかわらず再び踏み跡が
神奈川県自然環境保全センターの公式Twitterは、「登山道を外れて歩くと踏み跡ができて植生が衰退します」とツイート。
投稿によると、登山者による踏み跡が原因で出来てしまった脇道を神奈川県自然環境保全センターのスタッフが数年前に落ち枝で塞いだそう。その結果、昨年ごろから新たに草が生えてきたといいます。
しかし、また新たな踏み跡ができてしまったとのこと。投稿された写真には、正規の登山道と塞いだ箇所の横に、踏み跡による脇道がしっかりと出来上がってしまっています。
「裸地化とそれによる土壌流失を防ぐために登山道を歩くようにしてください」と、改めて注意を呼び掛けています。
■ 踏み跡の問題は昭和の終わりごろから
神奈川県自然環境保全センターの担当者に話をうかがうと、踏み跡については少なくとも昭和の終わりごろから問題になっていたそう。登山道が複線化したり、それにともない裸地化が広がってしまったりしていたのだとか。
では登山者は、なぜ登山道を歩かないのでしょうか?理由は「土の道がぬかるんで滑りやすい」「階段の段差を避けたい」などが考えられ、結果として登山者は登山道脇の草が生えている場所を歩いてしまうそうです。
■ 落ち枝で塞ぐ以外にも対策を実施
神奈川県自然環境保全センターでは、落ち枝で脇道を塞ぐ以外にも対策を実施。これ以上の複線化や裸地化を防ぐために、踏み跡ができかけている場所をロープなどで塞いだり、植生回復をさせているエリアにはその旨を伝える看板を設置したりしているそうです。
さらに階段などを設置する場合は段差をなるべく小さくして歩きやすくする配慮も。簡単な施設の整備については、県民ボランティアの人たちにも協力してもらっているそうです。
■ 対策をするも苦労の連続
こうして多くの人の協力を得て、対策をほどこしていますが、それでも期待通りに歩いてもらえないことがあるのだとか。
丹沢の登山者はベテランから入門者まで様々。登山道整備の難しさや自然への影響などについて、十分に知られていないことも多いそうです。そのため「常に広報・普及啓発を続けていく必要がある」と担当者。
今後は登山道が荒れる要因となっている「ぬかるみ」がある場所に木道などの整備を進めつつ、春先や秋口など丹沢に多くの登山者が訪れる時期には、ホームページやTwitterでの広報やパークレンジャー(職員の巡視員)による現地での声掛けなどを、これからも積極的に行っていきたいと語っていました。
<記事化協力>
神奈川県自然環境保全センター公式Twitter(@hozenc_kanagawa)
(佐藤圭亮)