世界中で楽しまれている日本の漫画やアニメ。そこに登場する街並みや食べ物といった文化は、日本人には当たり前でも外国人からは興味深いものに映るようです。
ネパールの学校に通うお子さんの課外活動で、お子さんがネパール人の友達のために「おむすび」を持って行ったところ、漫画やアニメで見た「おむすび」だと大人気だった、という話がTwitterに投稿されました。
これは、ネパールの首都カトマンズに暮らす日々を綴っているTwitterアカウント「日々のネパール情報」さんがツイートしたもの。現地の学校に通うお子さんが、放課後の課外活動でお弁当を持っていく必要があり、そこで「おむすび20個!」とリクエストしたのでした。
20個のおむすび全部を1人で食べるわけではなく、お子さんはネパール人の友達に食べてもらおう、という発想。ネパールでもネットなどを経由して日本の漫画やアニメを見ることができ、その中でおむすびの登場するシーンがあることから、ネパールの子からすると「未知の食べ物」を食べるチャンス、というわけです。
お子さんからの意図は理解したものの、ネパール文化を知る親の立場からは、少し心配なことがありました。というのも、ネパールには死者を弔うため、おむすびのような穀物を団子状に丸めた「ピンダ」と呼ばれるものをお供えする風習があるから。
ネパールでは、亡くなった人が飢えて困らない(餓鬼道や畜生道に堕ちない)よう、穀物を団子状に丸めた「ピンダ」をお供えする「ピンダ供養」という風習があります。死者は亡くなって7日間は霊が自宅に帰り、食事をすると考えられており、その際の食べ物としてピンダをお供えするのです。
また、ピンダは年忌など祖霊信仰の行事でもお供えされることがあります。そこで、おむすびは形が死者の食べ物であるピンダに似ているため、興味はあっても敬遠されるのではないか、と心配したのでした。
しかし、その心配は杞憂に終わったようで、お子さんの話によるとおむすびは大人気だったそう。具材については、おかかや梅などは好みが分かれたそうで、シンプルな塩むすびが一番人気だったとか。
事前に漫画やアニメで「おむすび」を知っていたからこそ、ネパール人のお友達はピンダを連想することなく、日本の食べ物として興味津々だったようです。このほかにも、ラーメンなどのメニューも興味をそそられていると日々のネパール情報さんはツイートしています。
ネットの発達により、ネパールでも日本の漫画やアニメは大人気。アニメグッズを取り扱う店舗があったり、コスプレイベントが開催されていたりもするんだそう。だからこそ、作中で描かれる日本文化が興味深く映るんでしょうね。
かつて欧米で、アニメ「Kanon」を見たファンの間で「たい焼き」がブームになったことがありましたが、漫画やアニメは日本文化を海外に伝える側面もある模様。日本で当たり前のものも、外国から見ると体験したい文化になっていることを感じさせるツイートでした。
<記事化協力>
日々のネパール情報さん(@infonepal)
<参考>
山口しのぶ「ネパール仏教の死者儀礼」日本仏教学会年報 第75号 日本仏教学会(2009年)
(咲村珠樹)