近年注目を集めるAIイラスト技術。指定されたワードを読み取り、その指定どおりに絵で表現してくれることから人気を集めていますが、一方で問題も抱えています。
とりわけ「売買」については、「騒動」となる要素もはらんでいるようです。実際にそれを体験したVtuberの発信に、注目が集まっています。
「イラストレーターさんを探しているって、だいぶ前にツイートしたのを見かけたのか『こんなイラスト描けます!一枚2万円でお受けします!』って飛び込み営業に来られた方がいて、背景と人物とエフェクトをレイヤー分けして下さいとお願いしたらブロックされました。そりゃそうだ。だってAIだもんな」
Twitterで注意喚起を行ったのは、家業である米農家の仕事をしながら、企業の事業や商品PR活動を行っているVtuberの山本さん。
自身のSNSのDMに送られてきた営業メールについて、一部始終をまとめたのが今回の投稿。以前、「イラストレーターを探している」という旨の発信を行ったのが事の発端でした。
売り込み営業は2枚のサンプルイラストを添えてのものだったといいます。
「一見すると綺麗なイラストでしたが、背景の構造やキャラの輪郭に違和感がありました」
デザイン関連の仕事に従事した方なら同様に察しがつくと思いますが、山本さんの違和感の「正体」は、送られてきたイラストに対して。AI制作が原因で生まれたものでした。
AIイラストは簡単に表現できる一方で、冒頭触れたとおり問題も抱えています。AIはさまざまな絵や画像をみて学習し、その上でイラストに表現するからです。学習した元となる素材の権利の扱いや、AIイラスト自体の著作権についてはまだ議論の途中。商用利用可のAIイラストサービスもありますが、本来であればAIイラストであることを伏せた状態で売り込むべきではないのです。
そこでAIイラストか否かを遠回しに確認するため、山本さんが投げかけた要望が「レイヤー分け」。
レイヤー分けとは、デジタルイラストを描く段階で、たとえば「背景」「人物」などを分けて描いておくことです。一見するとパーツがバラバラに思えますが、重ねることで1枚絵になるという見せ方。イラストレーターによっては最初から1枚絵で描く方もいますが、商用の場合あとからの調整も考え「レイヤー分け」して作業する人は少なくありません。
一方、クライアント側がデジタルイラスト類を「商用」として依頼する場合は、納品形態を指定できます。1枚絵の状態か、レイヤー分けされたものか。
よって、山本さんが「背景」「人物」「エフェクト」のレイヤー分け納品を希望し、オーダーしても不自然ではないのです。ところが、返答は既読のちの「ブロック」でした。
これが何を意味するのかというと、メールの送り主が提案したサンプルイラストは「一枚絵」である可能性が濃厚だということ。AIイラストは1枚絵として出力されるため、レイヤー分けすることができません。つまりメールの送り主は要望に応えることができないのです。
「AIによるイラスト制作が可能となり、ひょっとしたら公表されていないだけで、既に『事例』として起きている話かもしれません。注意喚起になればという発信でした」
もちろん今後、レイヤー機能を含めて、「商用展開」も意識されたAIにアップデートされる可能性は十二分にあるでしょうが、先日物議を醸した「AIイラストレーターサービス」など、様々な観点から乗り越えるべきハードルは多数存在します。
昨今、様々な新技術が開発され、それがSNSというツールで発信されることで、従来以上に「スゴイ!」が拡散されるようになっています。大きな利点でもありますが、一方でその「スゴイ」について、安易に妄信しないこともまた、今後必要になってくる「知識」ではないでしょうか。
<記事化協力>
山本、Vtuberしてる米屋さん(@KanameMitsumine)
(向山純平)