「ちゃんと芯剣に見えてますか」
「ツイッターTL復活祭」のハッシュタグと共にこう呼びかけたのは、鉛筆の芯を用いた彫刻作品を手掛けるシロイさん。投稿に添えられた写真には、鉛筆の先から高く伸びる日本刀が写っています。刃文までしっかりと再現された作品が、まさかあの細い鉛筆の芯に彫られているとは……にわかには信じがたいほどのリアルさを誇る出来栄えです。
シロイさんは新潟県を拠点に活動する彫刻家。鉛筆の彫刻は7年前に開始し、これまでにもスプーンやフォークといったカトラリーや、文字記号、さらには東京スカイツリーまで、固定概念に捉われないさまざまな作品を生み出してきました。
今回ツイッターに投稿された「芯剣」は、シロイさんの作品における「武器シリーズ」のひとつで、実は一番初めに作った武器がこの日本刀、という思い入れの深い作品。縦に長く、横に短い形状の武器はモチーフとしての相性が良いことはもちろん、「私が単純にカッコいいと思うから作りたかった」というシロイさんの好みであるという点も大きいようです。
デザインナイフ、カッター、やすり、針といった道具を用いて、芯を剥き出してから荒削り、成形、仕上げと進める工程の中で、特に重要だと語るのは作品の「バランス」。どうしても鉛筆の直径以上の物は作れない、という制約があるので、例えば今回の日本刀であれば鍔の部分が最大幅だとしたら、柄や刃の長さはどの程度の長さが良いか、といったような試行錯誤を繰り返しているのだそう。
また、作品の美しいツヤについては黒鉛ならではの光沢を活かしつつ、丁寧に磨きをかけて出しています。この磨くという作業は、新潟県で「有名な燕三条の金属加工からアイデアを得て取り入れた」と語るように、その輝きからは懇切丁寧に作業したであろう様子が見て取れます。
そんな苦労の甲斐もあり、完成した作品はいずれも素晴らしい出来栄え。わずか数cmという世界の中で表現されている作品とは思えないほど、精巧かつ本物そっくりに仕上がった芸術品は、驚きというほかありません。
インタビューの最後に、今後の展望をうかがうと、「作りたいものですと、色鉛筆やツヤなどそれぞれ鉛筆の特長をもっと活かした作品を作っていきたいですね」と答えたシロイさん。その頭の中にはどんな構想が広がっているのか想像もつきませんが、見た者をアッと驚かせるアイデアであふれているに違いありません。
<記事化協力>
シロイ/鉛筆彫刻人さん(@shiroi003)
(山口弘剛)