「木の廃材」を活用したアート作品を手掛けている、「廃材再生師」こと加治聖哉さんが新作をツイッターに投稿し、大きな反響を呼んでいます。
「神籬(ひもろぎ)」と名付けられた作品は、巨大な山犬がモチーフ。全長およそ4メートルという大きさに加え、今にも駆けだしそうな躍動感に満ちた佇まいは、まさに圧巻の一言。見る者を引き付けてやまない存在感を放っています。
以前は主に実在する動物をモチーフにした作品を手掛けていた加治さんですが、最近は恐竜や幻獣、神として祀られる動物も作りたいと思うようになったことや、シンプルに大きい山犬に乗ってみたいという自身の願望から、今作の制作に取り掛かりました。
ちなみに「神籬」という言葉には、「神社や神棚以外の場所で祭祀を行う場合、臨時に神を迎えるための依り代となるもの」という意味があります。新潟県北東に位置する栃尾という地域で生活する中で、自身が山の中で生かされていると感じ、その山の神様を作ることで感謝を伝えられないかという思いから、作品のタイトルにしました。
今作に使用されている木材も、もちろん全て廃材となる予定だったもの。素体には建築資材の間柱の端や、建具の端材などを使用し、表面の毛並みには、地域の肉屋さんから頂いたという片栗粉の空箱を約100個使用しています。
制作は毎回、構想段階から出来上がりのサイズを想定して比率を計算していますが、それでも材料が廃材であることから寸法が足りなかったり、イメージと違っていたということも多くあるのだそう。
しかしながら、今作もそうした難題を感じさせないほどの高い完成度。約3週間の期間をかけて仕上げた作品の、猛々しくも柔らかみを感じる毛の質感や、神々しさや威厳を感じるポージングは、加治さんが特にこだわったと語るポイントです。
「完成してまずホッとしました。毎度思うことですが、かっこよく、美しく出来たな、傑作だ、などと思っています」
大作を作り上げた心境をこのように答えた加治さん。納得の行く作品になるかどうか、最後の瞬間まで不安が付きまとうものなのでしょう。しかしながら、環境への感謝の気持ちを込めて制作した入魂の作品は、自身も大いに納得の行く出来栄えとなった模様です。
作品は地域のイベントである「トチオノアカリ」にて、寺社の本堂で展示されました。そこで撮影された写真は、ロケーションの荘厳な雰囲気も相まって、より一層の神々しさを放っています。
ちなみに、山犬の背中に乗る!という自身の夢もしっかり叶えた加治さん。その表情やポーズからは、大きな達成感が感じられます。こうした作者だけの特権を味わえることも、制作の原動力となっているのでしょう。
<記事化協力>
廃材再生師:加治聖哉さん(@scrapanimal)
(山口弘剛)