細かく、繊細な作業をしている時、表現として使われるのが「ちまちま」という言葉。時には「ちまちましたこと」と悪口に使われたりもしますが、本気の「ちまちま」はすごいんです。
高さ数mmの「ちまちま」という文字を積み重ね、泡のように言葉が湧き出てくる様子を表現した切り絵。文字通りちまちました、それでいて繊細な技術が光る作品です。
切り絵作家の福田理代さんは、レース細工のような繊細な描線でモチーフを表現することで知られています。1mm以下の描線を正確に切り抜き、しかも立体感まで表現する技術は驚きの一言。
細かい作業がお得意なんだろうな、というのは作品からもうかがえるのですが、ご自身から「ちまちました事が好きです」という告白がTwitterに投稿されました。そこに添えられていた画像は、文字通りちまちました極小サイズの「ちまちま」という文字。
一緒に写っている、ご愛用のデザインカッターと比較すると、1文字あたり高さは2、3mmといったところでしょうか。この作品が作られたのは「はっきりとした日にちまでは覚えていませんが、2021年の1月だったと思います」と話してくれました。
いつもの繊細かつ圧倒的な存在感がある作品と違い、ちょっと柔らかな印象のある作品。
「いつも下絵を描くのにも切るのにも時間をかけて丁寧に作り込むのを心がけているので、ちょっと息抜きのつもりで作ってみました」とのことで、たまに力を抜いた作品を作って気分転換をしているのだとか。
とはいっても、いきなりフリーハンドで切っているわけではなく「下絵はしっかり描いています」と福田さん。
この作品の場合「文字だけでは物足りなかったので、小さなキャラクターがわちゃわちゃしてる感じにしたら可愛いんじゃないかと思いました」と、泡のようなキャラクターとともに、ちまちまちま……と言葉が湧いてくる感じに仕上がりました。
元々はすべて顔にしてしまおうと思ったそうなのですが「ちょっとごちゃごちゃしてしまって」。そこでシンプルな丸と笑顔とを適宜取り混ぜたものにしたのだそうです。
最終的にガラスの容器に入れられた「ちまちま」は、水底から泡とともに湧き、弾けるごとに「ちまちま」と音をたてていそう。丸の大きさは「まちまち」で、それがリズム感を生み出していますね。
なんとも楽しげな雰囲気の「ちまちま」。ちまちましていても、心をほっこり、豊かにしてくれる働きがあるようです。
<記事化協力>
切り剣 福田理代さん(@kiriken16)
(咲村珠樹)