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生命を人工的に再現するALIFEとは——著者にきく(深水英一郎氏寄稿)


ALIFE | 人工生命 ―より生命的なAIへ 著:岡瑞起 ききて:深水英一郎

 こんにちは、深水英一郎(ふかみん)です。本日は、「ALIFE | 人工生命 ―より生命的なAIへ」著者の岡瑞起さんに、この本を紹介していただきます。

 みなさん、ALIFE(人工生命)はご存知でしょうか。ひとことで言えば、「人工的につくられた生物のような生命」のこと。AI(人工知能)が人間の知能を人工的に作り出すことを目指しているのに対し、ALIFEは、生物・生命を人工的に作り出すということを目指しているそうです。

 著者の岡さんに、もう少し話をきいてみましょう。

▼今回著者に紹介していただく本
「ALIFE | 人工生命 ―より生命的なAIへ」(著者:岡瑞起、発行:ビー・エヌ・エヌ、発売日:2022年3月16日)

▼著者 岡瑞起さんプロフィール
https://note.com/mizuki_oka/
研究者。筑波大学システム情報系 准教授 / 株式会社ブランクスペース技術顧問。専門分野は、人工生命、ウェブサイエンス、データサイエンス。人工知能学会にて「人工生命研究会」の主査。人工知能学会編集委員。 (独)情報処理推進機構未踏IT人材発掘・育成事業プロジェクトマネージャー。

■ 書いた人にきいてみる

——この本はどのような内容の本なのでしょうか?

【岡さん】
 人工生命(ALIFE)の入門書です。ALIFEという言葉を聞くとフランケンシュタインや遺伝子操作をしてつくられた生物のようなものを思い浮かべるかもしれません。ですが、そうではなく、ALIFEとは、コンピュータやロボット、あるいは化学反応といった無機物から生命のような人工物をつくりだして、生命を理解しようとする研究分野です。

 本書では、人工生命研究の歩みから最新の動向に至るまで具体的な事例とともに紹介しています。

 ——この本を読む上で、専門的な知識は必要でしょうか?

 本書は、人工知能や人工生命の知識がない方にも、人工生命が何であるか、どのような研究やアルゴリズムを辿ってきたか、どう役立てられるかを理解いただけるよう、わかりやすく解説しています。

——対象の読者はどのような方をイメージしているのでしょうか

 人工知能をすでにビジネスに取り入れている方や、人工知能の研究開発を行う研究者、エンジニア、学生の方々、こうした技術を取り入れたいと思っているクリエイターの方、そして人工生命という分野を耳にしたことのある方にとっても、先見性をもってご自身の取り組みを発展させることに役立てていただけるはずです。

 私自身も、コンピュータサイエンス研究者としてALIFEに興味を持っています。使い続けられるウェブサービスやアプリを開発する、新しいアイディアやコンテンツが生み出し続けられる仕組みをつくる、といったコンピュータサイエンスの課題に関して、ALIFEは解決のヒントになると考えています。

——本書で最も注目して欲しい部分はどこでしょうか?

 本書では、ALIFEという分野がどのような研究やアルゴリズムを辿ってきたのか、それがどう役立てられるかが書かれています。そして、オープンエンドな(=終わりなき)進化をつくり出す、というALIFEのグランドチャレンジに向けた、試みについて書かれています。

 私は、もともとは機械学習やデータマイニングの研究をインターネットのデータから、分類したり予測したりアルゴリズムやモデルを作るといったAIの研究をしていましたが、10年前にALIFEの分野と出会い、今では、インターネットやSNSといったオンラインサービスが発展し続ける仕組み、そのオープンエンド性について研究しています。

 本の中では、オープンエンドな進化に向けた重要な3つの概念「身体性」「集団現象」「生態系」を紹介しています。この3つの概念とオープンエンドな進化へのつながりを理解することで、新しいアイディアや企画を生み出したり、使い続けられるサービス開発といったみなさん自身の課題に役立てていただけると考えています。

 また、「コミュニティ」となることがオープンエンドな進化につながるという考え方は、話題のWeb3に通じる概念だと思っています。

——人工知能と人工生命、似てるようですが違うのですね

  はい、AIとALIFEはもちろん共通する点も多いですが、別のものなんです。

  AIが「人工的につくられた人間のような知能」であるとすると、ALIFEとは「人工的につくられた生物のような生命」のことを指します。

 AI研究者が、人間のような知能をコンピュータで実現できると考えているように、ALIFE研究者は、自然の進化が生み出すような終わりのない(=オープンエンドな)進化をコンピュータで実現できると考えています。

——ものづくりの方法が変わってしまうかもしれませんね

 オープンエンドな自然の進化が生み出してきた多様な生物をみると、その創造力は計り知れません。これをアルゴリズムに落とし込めれば、新しい商品をつくる、新しいデザインをつくる、新しい研究のアイデアをつくるといった、斬新なサービスや技術を次々と生み出せるようになるかもしれません。

——ゲームの世界でも、これまで見たことのないようなゲームシステムが考案されそうです

 ビデオゲームやVR、ARの世界は、自然の生態系のような豊かさをもち、果てしない冒険と発見を提供するようになると思います。また、多様性をもった解を導き出せるようになることは、多様性を受け入れる世界をつくることにもつながるはずです。

 今、AI研究をリードする世界の研究組織が、学習し続ける「オープンエンドなシステム」をつくるための重要な技術として、ALIFEに注目し始めています。

 ALIFEは、わたしたちの創造性を拡張し、より生きやすい社会を目指すうえでブレイクスルーとなるアプローチです。また、膨大なデータが前提となる現在のAI技術において、世界におくれをとっているといわれる日本が、巻き返しを図る糸口になる可能性も秘めていると感じています。

——ALIFEの研究で日本は、世界に先んじているのでしょうか?

 日本の大学や研究所には、日本人はもちろん、世界のALIFE研究者が集まっています。そういう意味では、世界の中でも最もALIFE研究が盛んな国のひとつといえると思います。

——ALIFEのこれからがとても楽しみになってきました。ご回答いただき、ありがとうございました!

(了)

※Photo: Seiji Mizuno(撮影:水野聖二)

【ききて 深水英一郎 プロフィール】
笹舟にちょうどよい笹に見とれていて橋から川に落ちたことがあります。
そんな私も今は個人のちからの拡大とそれがもたらす世の中の変化に興味をもち「きいてみる」という企画をやってます https://kiitemiru.com/
ネット黎明期にインターネットの本屋さん「まぐまぐ」を個人で発案、開発運営し「メルマガの父」と呼ばれる。Web of the Yearで日本一となり3年連続入賞。新しいマーケティング方式を確立したとしてWebクリエーション・アウォード受賞。元未来検索ブラジル社代表で、ニュースサイト「ガジェット通信」を創刊、「ネット流行語大賞」や日本初のMCN「ガジェクリ」立ち上げ。株式会社ツクレル取締役。シュークリームが大好き。

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