舞妓さんの髪飾りについている、菊や藤といった花の装飾。これらは、小さな布を折って作る日本の伝統技法「つまみ細工」というものです。
花が主なモチーフとなっているつまみ細工ですが、もちろん花以外のものも作ることができ、は虫類や両生類、魚など生き物の可愛い作品を作っている作家さんがいます。つまみ細工の新たな可能性を感じさせる「ぶるう」さんに話をうかがいました。
多彩な生き物をモチーフにし、つまみ細工作品を作っている「ぶるう」さん。つまみ細工との出会いは、ウェディングフォトがきっかけだったといいます。
「学生時代から憧れていた黒振袖で写真を撮ることになり、髪飾りを自作したいと思い作り始めました」という中、花以外のモチーフもつまみ細工で作ってみようと思い立った背景には、新型コロナウイルス禍がありました。つまみ細工の技法を使い、アマビエを作ったのが最初の例だそうです。
そこからは「鬼滅の刃」に登場する鬼殺隊の目シリーズ、歌い手(バンド)「妖の鬼狐」のキャラクターをファンアートで制作。そして「つまみ細工という手法でどこまで作れるか」というチャレンジとして、飼っているアカハライモリを作ってみたとのこと。
気になる出来栄えですが「完成品を見て愛情大爆発が起こり、生き物を作り続けることになりました」とぶるうさん。四肢を伸ばした姿が、なんとも可愛らしい動きを感じさせる作品になりました。
これらの作品に使われている布生地は、ぶるうさんによると「以前は縮緬も使っていましたが、現在はシーチングというコットンをメインに使用しています」とのこと。ご自分で草木染めや、染料を使っての染めも行っているそうで「作品に使う生地は、変色などを考えて染料を使うようにしています」と、用途に合わせて使い分けているんだとか。
モチーフとする生き物がは虫類や両生類ということもあり、つまみ細工仲間から「はちゅまみ(は虫類+つまみ細工)」と命名されたぶるうさんの作品。用いている技法については、基本的な「丸つまみ」と、それを裏返した「裏丸つまみ」、そして「剣つまみ」に「ひだ寄せつまみ」と、特別なものは使っていないそうです。
例として、ベルツノガエルを作る様子を見せていただきましたが、頭と胴体は丸つまみを裏返した「裏丸つまみ」、目と手足は丸つまみを変形させたもので構成。普段なら花びらとなる丸つまみのパーツですが、このように使うこともできるのだと驚きました。
花の形に一番近い、カメの甲は丸つまみを使って花のように。様々な形をいかせます。
ニシアフリカトカゲモドキの胴体部分は、剣つまみを体形に合わせて重ねたもの。体の大きな親は、さらに丸つまみのお花モチーフを散らして華やかな印象、子は剣つまみシンプルにまとめ、シュッとスマートです。
剣つまみを重ねて胴体を作る場合、ワニといった大きなものでは隙間に指輪を挟めるほどに。可愛いリングピローにもなります。
裏丸つまみは、プクッとしたフォルムを作りやすいのも特徴。さらに小さなつまみ細工で花模様を散らしたハコフグは、プクッとしつつもエッジも主張して、とても愛らしい仕上がりになっています。
また、ひだ寄せつまみは、つまみかたを工夫することでエリマキトカゲのエリ部分にも。口などは丸つまみで表現されています。
これまでに誕生した「はちゅまみ」たちは、イモリやカエルといった両生類、ヤモリやカメ、ワニなどは虫類、魚に昆虫と17種類ほど。その中でも「ニシアフリカトカゲモドキやイモリの背中にお花を施すモチーフが好きです」と話してくれました。
作品について「その時作った子に一番似合う手足の角度だったり、一番似合うお花モチーフがあるので探しながら作っています。はちゅまみは、ひとつひとつに表情があるので、唯一無二だと思います」と語るぶるうさん。作品はTwitterで見られるほか、ネットのハンドメイドマーケット「minne」で販売もされています。
<記事化協力>
ぶるうさん(@tumatuma_ocean)
(咲村珠樹)